大量の放射性物質が放出された福島第一原発の事故から3月で4年。4号機からの核燃料取り出しは予定通り昨年末に終わった。放射線源になるがれきの撤去が進み、顔全体を覆う全面マスクの必要な範囲が狭まるなど、事故処理の歯車がようやくかみ合ってきた部分がある。

 一方、東京電力は昨秋、1号機の燃料取り出しが従来の見込みより2~5年遅れると明らかにし、今月はタンクにたまった放射能汚染水の処理が予定通りには終わらないとも公表した。

 ずれ込みの背景には、未曽有の事態で既存の技術やノウハウが通用せず、想定通りに進めない実情がある。

 いまだに巨大なリスクを抱える現場である。東電は安全と着実さを最優先に事故処理を進めるべきで、迅速さを求めるあまり、拙速になってはならない。

 福島第一では13年4月に約3千人だった平日の作業員が、現在は2倍以上の約7千人に増えている。

 それでも、燃料が溶け落ちた1号機では、燃料がどこにどんな形状であるのか、どこから取り出したらいいのかも、まだわかっていない。強い放射線の下で燃料の状態を確かめる技術から開発しなければならない。

 国と東電の13年6月段階の廃炉工程表では19年度だった使用済み燃料の取り出し開始を21年度に、20年度だった溶け落ちた燃料の取り出し開始を25年度に遅らす。それが東電の方針で、事情は2、3号機も同じだ。

 高濃度汚染水の処理も、東電の広瀬直己社長が13年9月に安倍首相に今年3月末までに終えると約束した。だが、それも放射性物質を取り除く設備の不調などで、想定の約6割しか処理できていない。

 いずれも、予定通りにはいかない固有の事情がある。

 先週、協力会社の作業員が高さ11メートルのタンクから転落して死亡する労災事故が起きた。原因は調査中だが、作業員が増えるにしたがって、事故も増えてきている。今年度は昨年11月までに40件と、13年度(23件)から大幅に増えている。

 スケジュールに縛られ、安全管理が二の次になっていなかったか。労災を招くミスは新たな放射能汚染も招きかねない。

 原子力規制委員会は先週、福島第一の中期的なリスク低減目標の見取り図をまとめた。労災を重く見て労働環境の改善を含めている。

 事故処理が安全に、着実に進むために、規制委に限らず、政府は現場の実情を踏まえて支援する必要がある。