[PR]

 仏週刊新聞シャルリー・エブドへの襲撃事件直後、テロに抗議する大規模なデモ行進が行われたフランスに、世界40カ国以上の首脳が駆けつけた。「私はシャルリー」と書かれたプラカードを掲げながら「表現の自由を守れ」と叫ぶデモの様子は、最前列で腕を組みながら歩く各国首脳たちの映像と相まって、世界中に連帯の強さを印象づけた。

 対テロの姿勢は正しい。でもスローガンには違和感がある。表現の自由とは、これを抑圧する政治権力やシステムに対して行使すべき概念だ。その表現によって傷つく人がいるならば、無制限に行使されるべきではない。向きがまったく違う。

 さらに実のところ各国首脳たちは、デモの最前列を歩いてなどいなかった。デモ翌日の英インディペンデント紙(電子版)に、首脳たちの行進を少し上から撮った写真が掲載された。見た人は仰天したはずだ。首脳たちは通りを封鎖した一角で腕を組んでいた。後ろにいるのは市民ではなく、数十人の私服のSPや政府関係者だ。つまり首脳たちは市民デモを率いてはいない。

 ただしメディアが嘘(うそ)をついたわけではない。首脳たちが市民デモの最前列で歩いたとは伝えていない。記事を読んだり映像…