クラフトビールという言葉について

クラフトビールって何でしょう?

 

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日本では大手ビール会社が〝クラフトビール” の醸造を開始 なんてニュースを目にするようになりました。

アメリカにはBrewers Association の決めた定義があり、何度か書いてますので簡単に書きますと:

*Small -年間生産量が600万バーレル(1バーレルは159リットル)以下であること。
*Independent – クラフトビール醸造者ではないアルコール飲料産業のメンバーがブリュワリーを所有、管理(もしくは経済的利権に相当するもの)している場合は、その割合は25%以下であること。
*Traditional – 麦芽100%のフラッグシップビール(そのブリュワリーの銘柄の中で最大量を示すビール)を持っていること、または少なくとも50%が麦芽100%のビー ルであるか、ビールのフレイバーを引き立てるための副材料(フレイバーを薄めるためではなく)を使っているビールであること。

しかし、これはあくまでもBrewers Associationの決めた定義であって、アメリカには 〝オレはボストンラガーはクラフトビールとは認めん” という頑固親父とか〝クラフトビールは、私にとっては地元の州で作っているもの。それが私にとってのクラフト” や 〝樽で熟成してないビールなんて、オレはクラフトとは認めないね” など、それぞれ自由に〝オレ・ワタシ的定義” を持っている人が沢山います。これは日本でも同じではないでしょうか。

加えて 〝クラフトとかクラフティなんて関係ねぇ。ウマいかどうかだ” 〝クラフトにこだわるなんてスノッブみたいでイヤ” 〝楽しく飲めればいい” という人たちも多数おり、Brewers Association の定義を振りかざして、定義以外のビールは飲まない、というのはいかにもダサい。 まだ〝オレ的定義” のほうがいい感じです。

では、定義は自由でいい? 定義はいらないのでしょうか?

そんなことはありません。Brewers Association の定義はある意味によって非常に大切なのです。その意味とは

正確な統計をとること

これに尽きます。

例えば 〝ビール離れ顕著。ビールの売り上げが過去最低に” といった記事が出た場合。この場合のビールとはどの統計でしょうか?大手3社のみの売り上げをまとめたもの?子会社も入れて?地方にある小さな醸造所は?ブルーパブは? 発泡酒は?

Brewers Association はクラフトビールの定義を作り、差別化することで

クラフトビールの売り上げ・消費量・シェアの伸び
クラフトビール業界の雇用拡大 (アメリカの不況・失業率の引き下げに貢献)
クラフトビールの経済的インパクト (経済にどれだけ貢献しているか)

などの数字を明確にすることが出来たのです。そしてこれを定期的に発表することによって、ニュースにも取り上げられ、更にクラフトビール業界を後押しすることに成功しています。

例えば、新しいブルワリーを作る場合に ”クラフトビールはブームなんですよ。ビール離れと言われているけど、実はクラフトビールは伸びてるんです” と言うのと 〝大手のビールは売り上げが下がってますが、それはクラフトビールを飲む人がこれだけ(数字)増えていて、昨年比は(数字)。” というプレゼンテーションをした方が良いに決まっています。そしてこの数字は、Brewers Association のサイトに行けば誰でも簡単に見れるようになっているのです

では、今後日本はどうするのでしょう?

日本の〝ビール” の売り上げが上がったとしたら、それは〝クラフトビール”も含まれているのでしょうか?

もし〝クラフトビール” を名乗ったビールが〝クラフトビール” だとして、大手の造るクラフトビールが売り上げ不振だったとしたら(失礼!) 日本の〝クラフトビール” 業界は不振と言うニュースになるでしょう。それでいいのでしょうか?

大手はきっと輸出もするでしょう。そしてこれが日本の〝クラフトビール” として売られます。それで違和感はありませんか?

大手が造る〝クラフトビール” と、日本の小さな醸造所が造る 〝クラフトビール”。 消費者が選ぶのはどっちでしょう?正確な数字で知りたくありませんか?

〝クラフトビール” という言葉は、ビールに〝クラフト” というカッコ良さそう名前を付けて売り上げを伸ばすためでも、大手のビールなんてクラフティだと、差別するためでもありません。

正確な数字を集計し、分析し、今後に役立てる。

そういった意味があるからこその、定義づけなのです。

(最後に) クラフトビール先進国のように思われているアメリカですが、平和なわけではありません。先日はあるクラフトブルワリーが、他のクラフトブルワリーの新作ビールのロゴが似ているといって訴えを起こすというアホな事件がありました。しかも大して似てないんですよ!
で、どうなったと思います? 消費者が不買運動を始めたんです。同じクラフトブルワリー同士だろうが!仲良くせーよ!というメッセージ。こういった意味でも、定義付けは役に立っているのかもしれません。訴えはほんの数日で取り下げられましたが、まったく。。この件で儲かったのはそれぞれのブルワリーから相談を受けた顧問弁護士だけでしょうね(笑)

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