ギリシャの選挙で「政府の借金は返さない」という極左政党が勝ち、EU(ヨーロッパ連合)は大騒ぎになっています。よい子のみなさんには、なぜギリシャみたいな小さな国の借金がこれほど大問題になるのか、よくわからないと思いますが、なぜギリシャは借金を返さないんでしょうか?
話はとても複雑ですが、よい子むけに簡単にいうと、ギリシャ政府の借金は約317億ユーロ(4.2兆円)もあるので、銀行がむりやり借金を取り立てると、ギリシャはユーロ(EUの通貨)から離脱して、自分の借金を減らすことができるのです。
ギリシャはもともとドラクマという通貨を使っていたので、これに戻すことができます。ドラクマの信用は全然ありませんから、切り替えた途端に暴落して、ギリシャ政府の借金も減ります。
たとえばギリシャがユーロを離脱して、1ユーロ=340ドラクマ(ユーロに加わる前の為替レート)で国債を借り換えたとしましょう。ギリシャから見たヨーロッパの銀行からの借金(ユーロ建ての国債)の残高は
317億ユーロ×340=約10兆ドラクマ
ですが、ここで為替レートが1ユーロ=340ドラクマから1000ドラクマに暴落すると、同じ額面で
10兆ドラクマ÷1000=100億ユーロ
になります。つまりギリシャは、ユーロから離脱するだけで300億ユーロ以上の借金を100億ユーロに減らせるのです。ギリシャの政府がユーロから離脱したいのは当然ですね。
もちろん、いいことだけではありません。銀行は貸したお金が1/3になるので、たくさんつぶれるでしょう。借金を踏み倒したら、ギリシャ政府にお金を貸す銀行はなくなるので、財政は完全に破綻し、人口の4割を占める公務員もクビになるでしょう。激しいインフレで1ユーロが1万ドラクマとか100万ドラクマとか、物価がどんどん上がるとギリシャ経済が完全に破壊され、政府の借金もチャラになります。
ギリシャだけなら大したことないのですが、次にスペインとかポルトガルとかイタリアの国債が投機筋にねらわれて金利が上がると、こっちでも同じように借金が返せなくなる可能性があります。こういう大国がユーロを離脱すると、EUが崩壊してしまいます。それを恐れているので、EUはギリシャにあまり強くいえないのです。
でも遅かれ早かれ、損切りは避けられません。ギリシャはユーロと切り離して債務整理するしかないのです。今のように借金の返済をずるずると先延ばししていると、ギリシャ国債の金利は高いので、銀行の損はどんどんふくらみます。日本でも不良債権の処理をしたとき、1992年には12兆円だった損が2005年には100兆円にふくらみ、それを救済するために46兆円の税金が投入されました。
借金でがんじがらめの状態では、ギリシャも立ち直れません。通貨が今の1割ぐらいになってまともな政府ができれば、低賃金の「新興国」として再出発できるかもしれない。アテネのホテルが1泊500円ぐらいになれば、世界から観光客が来るでしょう。
ない金は返せない。つぶれた会社や国は、つぶすしかない。早めに損切りしたほうが傷は浅くてすむ――それが万国共通の借金の法則なのです。
ギリシャはもともとドラクマという通貨を使っていたので、これに戻すことができます。ドラクマの信用は全然ありませんから、切り替えた途端に暴落して、ギリシャ政府の借金も減ります。
たとえばギリシャがユーロを離脱して、1ユーロ=340ドラクマ(ユーロに加わる前の為替レート)で国債を借り換えたとしましょう。ギリシャから見たヨーロッパの銀行からの借金(ユーロ建ての国債)の残高は
317億ユーロ×340=約10兆ドラクマ
ですが、ここで為替レートが1ユーロ=340ドラクマから1000ドラクマに暴落すると、同じ額面で
10兆ドラクマ÷1000=100億ユーロ
になります。つまりギリシャは、ユーロから離脱するだけで300億ユーロ以上の借金を100億ユーロに減らせるのです。ギリシャの政府がユーロから離脱したいのは当然ですね。
もちろん、いいことだけではありません。銀行は貸したお金が1/3になるので、たくさんつぶれるでしょう。借金を踏み倒したら、ギリシャ政府にお金を貸す銀行はなくなるので、財政は完全に破綻し、人口の4割を占める公務員もクビになるでしょう。激しいインフレで1ユーロが1万ドラクマとか100万ドラクマとか、物価がどんどん上がるとギリシャ経済が完全に破壊され、政府の借金もチャラになります。
ギリシャだけなら大したことないのですが、次にスペインとかポルトガルとかイタリアの国債が投機筋にねらわれて金利が上がると、こっちでも同じように借金が返せなくなる可能性があります。こういう大国がユーロを離脱すると、EUが崩壊してしまいます。それを恐れているので、EUはギリシャにあまり強くいえないのです。
でも遅かれ早かれ、損切りは避けられません。ギリシャはユーロと切り離して債務整理するしかないのです。今のように借金の返済をずるずると先延ばししていると、ギリシャ国債の金利は高いので、銀行の損はどんどんふくらみます。日本でも不良債権の処理をしたとき、1992年には12兆円だった損が2005年には100兆円にふくらみ、それを救済するために46兆円の税金が投入されました。
借金でがんじがらめの状態では、ギリシャも立ち直れません。通貨が今の1割ぐらいになってまともな政府ができれば、低賃金の「新興国」として再出発できるかもしれない。アテネのホテルが1泊500円ぐらいになれば、世界から観光客が来るでしょう。
ない金は返せない。つぶれた会社や国は、つぶすしかない。早めに損切りしたほうが傷は浅くてすむ――それが万国共通の借金の法則なのです。