渡辺丘、渡辺淳基=アンマン、鈴木暁子
2015年1月29日11時42分
過激派組織「イスラム国」に拘束されたフリージャーナリストの後藤健二さん(47)を名乗る男性による新たな画像と音声のメッセージが29日、ネット上に投稿された。イラク時間の29日日没(日本時間同日午後11時半ごろ)までに、後藤さんとサジダ・リシャウィ死刑囚を交換する用意ができなければ、「イスラム国」に拘束されたヨルダン軍パイロットが即座に殺害されるだろうと述べている。
後藤さんとみられる男性の映像や画像、音声が公開されたのは4回目。今回は映像や写真がなく、静止画像にアラビア語で書かれた文章と同じ内容を男性が英語で話す音声が流れる。
男性は冒頭で「私は後藤健二だ」と名乗り、「この音声メッセージを送るように言われた」と続ける。
「イスラム国」がヨルダン政府に釈放を求めているサジダ・リシャウィ死刑囚について、「(イラク北部)モスルの29日木曜日の日没までに、トルコ国境で私と交換する用意ができなければ、ヨルダン人パイロット、ムアーズ・カサースベ(中尉)は即座に殺害されるだろう」と結ぶ。画像のアラビア語の文章では「殺害されるだろう」を含む最後の一文のみ赤い文字で強調されている。
モスルは「イスラム国」が勢力範囲とする拠点都市。メッセージは「トルコ国境」について、具体的な場所は明示していない。
ヨルダン政府は交渉を継続している模様だ。後藤さんの安否に関する情報は明らかにしていない。
ヨルダンのジュデ外相は米CNNに対し、拘束されたヨルダン軍パイロットのカサースベ中尉の救出をめざす一方で、後藤さんの解放も合わせて「イスラム国」と交渉していると語った。ヨルダンが求めるパイロットの生存の証拠が得られていないとしており、交渉が難航している可能性もある。交渉を仲介したというイラク国内の部族長は「交渉は12時間延長された」と朝日新聞に語った。
ヨルダン国営放送は28日、カサースベ中尉が解放されればリシャウィ死刑囚を釈放する用意がある、としたモマニ・メディア担当相の発言を報じたが、後藤さんには言及しなかった。
ヨルダンのアブドラ国王は28日夜、カサースベ中尉の家族と面会した。早期解放を求めた父親によると、国王は「安心してほしい。(交渉に)全力を尽くす」と語ったという。
日本政府は現地でヨルダン政府にも協力を要請し、情報収集などを続ける。後藤さんの安否確認について、中山泰秀外務副大臣は「実際にオンゴーイング(継続中)で進んでいる問題」などとして詳細を明らかにしていない。(渡辺丘、渡辺淳基=アンマン、鈴木暁子)
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞国際報道部
PR比べてお得!