そんな日だったので、久しぶりにアルジャジーラ・イングリッシュをオンラインで見ていた。私がチェックしていた17時から午前3時までの間に、輪番制のキャスターが3人、前は女性がキャスターだったのに、今は(たまたまかもしれないが)全員男性だった(3人目はおなじみ、サンタマリアさん)。定時ニュースの後半にやる「今日の特集」的なものが興味深かった。デトロイトの帽子店だとか、東ドイツのシュタージ博物館だとか。。。そんなことはどうでもいい。
27日の夜遅くに出たメッセージを最初に聞いたときに、私は面食らった。ぱっと聞いたところ、理屈が通っていなかったので。つまり、後藤さんが読み上げている(読み上げさせられている)その文面では、後藤さんは「私と、リシャウィの交換だ」と言い、「これはシンプルなことだ」と強調していた。それを聞いたら「後藤さんとリシャウィの捕虜・囚人交換が成立すれば解決する」と判断するのが普通だ。
しかしその同じメッセージで後藤さんは、ほんの何秒かのうちに、「第三の男」に言及していた(言及させられていた)。ムーアズ・カサスベさん。2014年のクリスマス、英語圏が休暇モードになっていたときに入ってきた「ISISが有志連合軍の戦闘機を撃墜した」(実際には「ISISが撃墜した」のではなく、「たまたまISISの支配域の上空で機体が故障して炎上・墜落し、パイロットは脱出した」のだが)というニュースの当事者だ。そのニュースについては、下記「まとめ」の1ページ目に書いてある。
http://matome.naver.jp/odai/2142237068424407801
つまり、27日の音声メッセージで、後藤さんは、「私とリシャウィを交換しろ」と言い、「時間的猶予は24時間だ」と言い、「要求に応じないと私より先にカサスベが死ぬことになる」と述べていた。
そして「予告された時刻」を前に日本政府の動きがばたばたしてメディアが「誤報」(勇み足)を連発し、そのドタバタが終わったころには、話はいつの間にか、後藤さんというよりカサスベさんが中心になっていた。アルジャジーラ・イングリッシュの報道もそうだ。
英語圏では当初、後藤さんの読み上げたメッセージを、「後藤さんとカサスベさん」を「リシャウィ死刑囚」と交換するという意味に取った報道がちょこちょこ出ていた(見出しやツイートを見ただけだが)。私もそれに釣られた気はある。
しかし、メッセージでは明確に「後藤さん」と「リシャウィ」の交換だと言っている。実際、日本の報道機関のいくつか(共同通信など)はこの箇所 (me and her) を「1対1」と意訳していた。そうだとすると、「ヨルダン人パイロット」は……?
nofrills / nofrills
RT @dicklp: MT @RandaHabib: #ISIS spoke of swap: Sajida for Japan hostage #Jordan answer: Sajida for Jordan pilot life & release, throwing … at 01/28 20:49
nofrills / nofrills
アルジャジーラ・イングリッシュ、レバノンの件が終わってコバニ解放のニュース。17時に見たときから定時ニュースのたびに流れているクリップ。19時台まではそのあと、後藤さんの身柄解放の呼びかけについての言及があったのだが、21時台ではそのパートがなかった。(但し20時台のは見てない) at 01/28 21:13
nofrills / nofrills
と思ったら今来た。スタジオでシリア情勢について専門家と話をしたあとで、後藤さんが人質にとられていることを説明し、サジーダ・アル・リシャーウィについて報道してる。それもイラク(彼女はイラク人)から電話…ニュースのパターン変わってる。 http://t.co/ik7XACIHGC at 01/28 21:15
nofrills / nofrills
話の内容は、NYTの記事にあったようなこと http://t.co/5jeMSyILWB 後藤さんが読み上げさせられていたと思われる声明で最も曖昧だったところを、「ヨルダン人パイロットを解放するかどうか」と読むか、「ヨルダン人パイロットを殺さずに拘束し続けるかどうか」と読むかだ。 at 01/28 21:20
そのことを念押しするISISの発言があると、SITEのリタ・カッツさんが報告している。
#ISIS linked accounts remind that the deal is Sajida in exchange for the Japanese hostage, and not killing (but not freeing) Jordanian pilot
— Rita Katz (@Rita_Katz) January 28, 2015そして、彼の生存確認をヨルダン政府はすることができていない。交渉は部族の有力者などを通じて何人もがリレーして行なっていると思われるが(それが普通)……
Jordan FM @NasserJudeh: “We have asked for proof of life, the well-being and health of the hero Moaz for a while and we have received none"
— Ram Ramgopal (@RamCNN) January 28, 2015やはり、カサスベさんの生存確認がヨルダン政府側に出てない。
https://t.co/mjGMXgGJVM
— nofrills (@nofrills) January 28, 2015Jordan said on Wednesday it had received no assurance that one of its pilots captured by Islamic State insurgents was safe and that it would go ahead with a proposed prisoner swap only if he was freed.
The fate of air force pilot Muath al-Kasaesbeh was thought to be tied to that of Japanese hostage Kenji Goto, a veteran war reporter who is also being held by the insurgent group.
http://in.reuters.com/article/2015/01/28/mideast-crisis-japan-hostage-idINKBN0L11VZ20150128
ロイターのこの記事の記述、後藤さんが "also" の扱いになっているということに私は何とも言えないものを感じている。
なお、ここに至るまでに、ISISの側からヨルダン政府に対する揺さぶりがある(プレッシャーをかけようとしている)のではないかということは何度もいわれていた。「リシャウィ死刑囚は既にISISの支配域に入っている」とかいった《うわさ》がばら撒かれていたし(ただし、自然発生するとはちょっと思えないが、誰かのいたずらかもしれない)。
というわけで、「ボールは現在はISISのコートにある」状態(ヨルダン政府が「カサスベさんが生きていると言う証拠を見せろ」と要求している)。交渉はまだ続くだろう。ただし、あまり長くは続かないかもしれない。
ちなみに、ヨルダン政府に対してISISが望んでいることは、NYTのこの記事を読めばわかると思う。
ヨルダンに関して、彼らが何を求めているのかは、NYTの記事を読めばわかります。 http://t.co/5jeMSyILWB
— nofrills (@nofrills) January 28, 2015MT BBCPaulAdams: Hostage crisis puts Jordan on the spot http://t.co/oAYTtNfsKF <このNYT記事に書いてあるようなこと、ちょっとばらけてますが http://t.co/a7yIsl6UWM に書いてます
— nofrills (@nofrills) January 28, 2015なお、ヨルダンについては……
nofrills / nofrills
ヨルダンについて、今回の事態に直接的に関係がある事例ではありませんが、バックグラウンドは少しメモってあります。>ある「イスラム過激派」の無罪判決と釈放…英国政府が大騒ぎした件の顛末(アブ・カタダ) http://t.co/XRej0FDNwH at 01/28 20:53
手っ取り早く言えば、ザルカウィ派というのは元々アルカイダとは別の発祥で、組織が始まった当時はアルカイダの一部として行動していたが、思想はビン・ラディンやザワヒリとはかなり違っていたらしい。何より「国境線(サイクス・ピコ・ライン)の解消」をしようとしていて、「イラク戦争」の間は「イラクとヨルダンの国境」を解消しようとしていた。そのころのことを知っている生き残りがラシャウィ死刑囚、ということになろう。
ラシャウィ死刑囚のことは、詳しく調べている人がいる。
Several profiles of Sajida al-Rishawi missing critical background factors - recommend @MiaMBloom who has studied her closely
— John Horgan (@Drjohnhorgan) January 28, 2015Jordan is ready to trade inmate for pilot held by ISIL http://t.co/acqVH8GxBL via @USATODAY
— Mia Bloom (@MiaMBloom) January 28, 20151/2 Missing from story re: Sajida Rishaw 3 of her brothers killed (not just1), ISIL called her 4 her release May 3, 2014, by Ghareeb Urdani
— Mia Bloom (@MiaMBloom) January 28, 20152/2Also, Rishawi tried 2 detonate Nov.9, 2005, same day Muriel Degaque exploded her car bomb 4 Zarqawi (=coordinated attacks) cc @CarolCNN
— Mia Bloom (@MiaMBloom) January 28, 2015この「ミュリエル・デガク」という人が……知らなかった、こんな人がいたなんて。
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Muriel Degauque - Wikipedia http://t.co/jAuXwbLhVU サジーダ・アル・リシャウィが自爆攻撃(失敗)をしたのと同じ日に、イラクのバグダードで米軍の車列を標的に自動車爆弾で自爆して死んだ人。ベルギー人女性、改宗者。ザルカウィの組織に所属 at 01/29 00:15
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承前。このベルギー人女性、パン屋で働いていて知り合ったムスリム男性と結婚、改宗、過激化、シリア国境からイラク入り。夫も彼女とは別の攻撃で自爆しようとしたが失敗、米軍に撃ち殺された。こんなことが、2005年に…BBCもNYTも報じてた… http://t.co/jAuXwbLhVU at 01/29 00:18
なお、最近のISISの伸張に関しては、アーロンの文章がタダで読める。ネットってすごいなあ。「イスイス団メンバーのアカウント」なんかをあさってるヒマに、こういうのを読んだほうがよほど役に立ちます。(っていうと「西洋がー」みたいに強硬に反対してくる人は、警戒していいですよ。)
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RT @will_mccants: How the Islamic State's "province" model differs from al-Qaeda's "branch" model, by @azelin http://t.co/0oS2gqXq99 at 01/29 03:32