ピロリ菌の胃の感染は女性の多発性硬化症を防ぐ、「衛生仮説」関係か、国際誌
男性では関係は見られず

ヘリコバクター・ピロリ菌。本文と直接の関係はありません。(写真:Yutaka Tsutsumi, M.D.)

ヘリコバクター・ピロリ菌。本文と直接の関係はありません。(写真:Yutaka Tsutsumi, M.D.)

 胃にピロリ菌が感染していると、普通は、胃がんにつながるから嫌がられるものだ。

 ところが、女性の場合には、神経の病気である多発性硬化症のリスクがむしろ低くなるという結果が出てきた。

 清潔すぎるとむしろアレルギーになりやすいという「衛生仮説」と関係があるのはと研究グループは想定している。

ピロリ菌と病気の関係

 オーストラリア、西オーストラリア大学のメルエナ・ファビス・ペドリーニ氏らの研究グループが、神経分野の国際誌、ジャーナル・オブ・ニューロロジー・ニューロサージェリー・アンド・サイキアトリー誌で2015年1月19日に報告した。

 ピロリ菌とさまざまな病気との関連性については、報告がなされている。

 ピロリ菌は胃炎の原因になり、胃がんも引き起こすと知られている。ほかの病気を起こすとも知られているが、むしろリスクを下げる場合もあるというわけだ。

 研究グループはピロリ菌と多発性硬化症との関連性を検証した。多発性硬化症とは、自己免疫疾患の一つ。異物から体を守るはずの免疫が自分を攻撃する病気の一つだ。多発性硬化症では、神経が痛んで、まひやしびれを起こす病気だ。

 対象としたのは多発性硬化症の550人。性別と年齢の条件を合わせた299人と比べた。ピロリ菌に対するIgG抗体が血清中に含まれているかを調べるために、酵素免疫測定法を用いた。

男性では逆の結果も

 その結果、ピロリ菌の感染率は多発性硬化症患者が16%、コントロールが21%で、多発性硬化症の方が低かった。さらに、女性ではそれぞれ14%と22%、男性では19%と20%で、女性の方が差は大きかった。統計学的に分析しても女性だけで関係があると判断できた。

 多発性硬化症の人では、生まれた年、発症年齢、病気にかかっている期間の条件で調整すると、女性ではピロリ菌に感染している人の方が感染していない人よりも機能障害の症状が少なかった。男性ではこの逆でピロリ菌に感染している方が症状が重かった。

 なお、ピロリ菌感染と再発率には、明らかな関連性は見られなかった。

清潔とアレルギーとの関係か

 こうした結果は、ピロリ菌に病気を抑制する働きがあることを示している。幼いときに感染すると感染症に対して免疫システムが備わる面はある。後にアレルギーの発症や自分の体を攻撃する自己免疫の状態になるのを防ぐ効果があるかもしれない。清潔にし過ぎるとアレルギーを引き起こすという「衛生仮説」を裏付けている可能性について研究グループは指摘する。

 ピロリ菌感染と多発性硬化症のリスクとの関連性がほぼ女性のみで見られることについては、さらに研究を進める必要がある。

 

文献情報

Fabis Pedrini MJ et al. Helicobacter pylori infection as a protective factor against multiple sclerosis risk in females. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015 Jan 19. [Epub ahead of print]

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25602009

 

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