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捜査対象者の車に、警察がこっそり全地球測位システム(GPS)の発信器を…
捜査対象者の車に、警察がこっそり全地球測位システム(GPS)の発信器を取りつけて居場所を探る。
こんな捜査手法が許されるかどうかが問われた裁判で、大阪地裁は「重大な違法性はなかった」として捜査は適法だったとの判断を示した。
だが、憲法が保障するプライバシー権との兼ね合いもあり、なしくずし的に認められていい捜査ではない。これを機に、GPS情報の取得は捜査でどこまで可能なのか、国会などで議論を尽くすべきだ。
今回問題になったのは、窃盗などの罪に問われた男性への捜査だった。大阪府警と長崎、熊本両県警が、男性ら4人が使う車やオートバイ計19台の車両の表面に磁石でGPSの発信器を取りつけ、所在を割り出していたという。
使われたGPSは、捜査員が電話で接続したときに警察側の端末に位置情報が示されるしくみだった。大阪地裁は、24時間監視・記録するものではなかったことや、数百メートル程度の誤差があるなど精度がさほど高くなかったことから、「プライバシー侵害の程度は大きいとはいえない」と判断した。
同様の捜査は、愛媛、兵庫、福岡、愛知の各県警でも明るみに出ている。警察庁は「他の捜査手法では追跡を行うことが困難であるなど、特に必要性がある場合には許される」との内部規定を06年に定めていた。
しかし、今の運用では警察が「必要」と判断すれば、だれもが居場所を知られてしまう可能性がある。自分の所有物にいつ、どこでGPSが取りつけられたかも、警察が明らかにしない限りわからない。取りつけの是非を含め、判断が警察にゆだねられている状態だ。
技術革新とともに捜査手法が変わるのは当然だ。広域テロのような犯罪の場合、通常の尾行だけでは対応できない場合もあるだろう。
だが、無断でGPSをつけ、位置情報をいつでも入手できるような手法は、強制性の強い捜査だ。本来は裁判所の令状をとり、適正かどうかの客観性を担保するべきではないか。
令状請求の手続きを踏めば、事件の重大性や緊急性、ほかの手段がないかなどを裁判所が総合的に判断できる。警察も「明らかに犯罪の容疑がある」という証明が求められ、行き過ぎた捜査も防げるはずだ。
犯罪とは縁もないのに、知らぬ間に警察に居場所を知られる人があちこちで出るような事態は防がなくてはならない。
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