ベトナム脱走米兵の映像初上映 かくまった京都、半世紀経て
ベトナム戦争の脱走兵を映した映像が、撮影から50年近くたったこのほど、京都市伏見区で初めて公開された。上映会には当時の支援者や脱走兵と同世代の学生も参加。多くは語られてこなかった市民の反戦運動の意味を、時を越えて受け止めた。
白黒画面に映る大柄の若者。通称・キャルと呼ばれた男性がインタビューに応じるだけでなく、ネコに語りかける陽気な姿も。安心しきった様子で寝息を立てるカットもあった。
「彼に苦労をかけたくなかったけど、あれから50年近くたつ。もう時効だろうと。市民が脱走兵を支えた歴史を残しておきたくてね」。撮影した映像ジャーナリスト小山帥人さん(72)が伏見区の龍谷大深草町家キャンパスに訪れた約50人に公開した理由を伝えた。
テレビ局に勤務していた1968年、「ベトナムに平和を!市民連合(ベ平連)」の支援者の依頼で、伏見区の実家に脱走兵をかくまった。いつか公開できる日が来ると思い、撮影。区内の古い映像を上映する「深草町家シネマ」で初披露した。
会場には、反戦脱走米兵援助日本技術委員会(JATEC)のメンバーだった関谷滋さん(66)=左京区=も参加し、目印にカーネーションを持ったキャルを京都から東京まで送ったことを紹介。小山さんと会ったのはこの日が初めてだった。「互いに何も聞かない取り決め。誰がやっているかわからず動いてきたから」と関谷さん。活動の実態が浮かぶ。
当時19歳のキャルがベトナム戦争と脱走への思いを吐露する姿に、同年代の学生たちは見入っていた。「逃げ出す勇気がすごい」「脱走したくてもできずに死んだ人もいるはず」「笑顔の裏にどんな思いを背負っているのだろう」と受け止め方はさまざまだった。
【 2015年01月28日 21時00分 】