「イスラム国」人質:死刑囚釈放の用意 操縦士と交換

毎日新聞 2015年01月28日 23時35分(最終更新 01月29日 00時55分)

人質交渉を巡る相関図
人質交渉を巡る相関図

 イスラム過激派組織「イスラム国」(IS、Islamic State)にフリージャーナリストの後藤健二さん(47)が拘束された事件で、ヨルダン国営テレビによると、ヨルダンのモマニ・メディア担当相は28日、ISがヨルダン軍パイロットを無事解放するなら、ヨルダンが収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚を釈放する用意があると表明した。後藤さんの新たな映像で設定された「24時間」の期限は28日深夜に経過。人質解放を巡るヨルダンとISの駆け引きが激しくなっている模様だ。日本政府は後藤さんの救出に向けてヨルダンに重ねて協力を要請し、情報収集を続けている。

 27日の映像の声明では、後藤さんの解放条件はリシャウィ死刑囚との1対1の交換だとされている。これに対し、国営テレビによると、モマニ氏は後藤さんには触れず、「ヨルダン軍パイロットの身体に触れずに解放するという条件で、サジダ(死刑囚)を引き渡す用意がある」と述べ、パイロットの生命の安全が最優先だと強調した。

 ISが設定した期限が迫る中、ヨルダンのジュデ外相は28日午後3時半(日本時間28日午後10時半)ごろ、短文投稿サイト・ツイッターの自身のアカウントに「死刑囚は釈放しておらず、ヨルダン国内にいる。釈放条件は先に明らかにした通りだ」と投稿し、パイロットを解放しなければ、死刑囚は釈放しないとの立場を重ねて強調。また、「24時間」が過ぎた後の28日夕(日本時間28日深夜)には「我々は(ISに)パイロットの無事を確認させてほしいと要求したが、これまでに確認できていない」と投稿し、人質解放交渉が難航していることを示唆した。

 ヨルダン政府とISの思惑が交錯する中、後藤さんの安否は不透明になっている。日本政府は、27日の映像と音声は後藤さん本人の可能性が高いと判断。安倍晋三首相は28日午前の関係閣僚会議で早期解放に一丸で取り組むよう指示し、「ヨルダンに協力を要請する方針に変わりはない」と強調した。

 さらに首相は同日の参院本会議で「卑劣なテロは言語道断の暴挙で、強く非難する。わが国は決してテロに屈しない」と述べ、先の中東歴訪で表明した支援策を含め、国際社会に積極的に貢献する考えを改めて示した。そのうえで後藤さんの解放に「あらゆるチャンネルを活用して全力を尽くしている」と説明した。

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