サカナクション「さよならはエモーション」
dir: 田中裕介|prod co: AOI Pro.|pr: 保坂暁、内海輝幸|ca: 内田将二|art: ENZO|sty: 北澤"momo"寿志|cho: 振付稼業air:man|hair: 根本亜沙美|l: 米井章文|pm: 佐藤明日美
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本作のテーマは“時間”。これまで以上に企画段階から山口氏と密にコミュニケーションを取り、山口氏が今考えていることや、サカナクションというバンドのスタンスを把握して企画制作に臨んだという。
「曲を聴いた時に脳裏に浮かんだのが、モノクロでクラシックな、初期のハリウッド映画のような質感のビジュアルでした。そして、歌詞で、過去、現在、未来が語られていたので、「時間をテーマにしよう」と考えました。過去を振り返って、考えに耽ることもあるけれど、それらは自然と過ぎ去って行くし、進むしかない。それならば前を向いて歩いていこう、と自分なりの解釈で映像化しました。過去を傍観したり、ちょっとばかり介入もするけれど、最後は過去を受け入れて、前進するストーリーを作ったんです」(田中氏)
カラーで始まる現在から、モノクロの過去の世界に入っていくと、過去の自分がGIFアニメのようにループしている。
「最初は、ある瞬間の過去を描こうと思ったのですが、静止している映像では面白くないし、例えば10秒分の過去を普通に見せても伝わり辛いし、インパクトも無いので、ある瞬間をループさせるアイデアに行き着きました。曲中のドラムがかなり細かく刻まれているのも、ループ映像とのハマリもよく、気持ち良くなるなと思っていました」(田中氏)
「演技は苦手」という山口氏だが、過去と現在の自分を存在感たっぷりに演じ分けている。演出上で田中監督のこだわりは“傍観”。
「傍観って狂気じみていて、好きなんです(笑)。一郎さんにも、傍観なのでリアクションをあまり取らずに、ちょっとした小さな仕草(鏡を直したり、首を回したり)だけでやってもらいました」(田中氏)
■壁2枚と家具のみというシンプルなセット 撮影は2日間にかけて行われた。モノクロで描かれる“過去の部屋”のセットは実はとてもシンプル。壁2枚と家具のみというごくごくミニマルな状況で、如何にライティングで画に変化を付けられるかが挑戦だったという。
「撮影前はなかなか難しそうだと思っていましたが、カメラマンの内田(将二)さんや、照明の米井(章文)さん率いる照明チームが色々工夫して、カッコ良く、かつ良い塩梅で変化を付けてくれました。例えば、線状の影を作るためにスーパーの買い物かごを使ったりしているんです」(田中氏)
撮影はREDのカメラに古いアナモフィックのレンズを使用し、オフラインは田中監督自身が手掛けている。ちなみに、過去の世界で登場するリンゴ。「アルクアラウンド」にも登場したモチーフだが、そこに関連性は無いそうだ。撮影前にもその指摘はあったそうだが、田中氏は、どちらもサカナクションのMVだし、時間を表すモチーフとして“落ちるリンゴ”は必要だったと語っている。
また、読者の中には、山口氏が紙に歌詞を書くシーンで、「缶コーヒー」という歌詞が「缶コーラ」となっているのに気付いた方もいるだろう。ここは、田中監督が“ボツになった歌詞にインクを垂らして黒く塗り潰すシーンを撮りたい”と提案し、実際にボツになった歌詞を山口氏に提供してもらっている。楽曲でメンバーのコーラスが加わる箇所では、バンドメンバーが机を囲んで登場し、山口氏を見守っているような演出となっている。
「今まで色々な映像を作りましたが、改めて、自分が本当にやりたいものは何か、考える年にしたいです」という田中裕介監督の2015年の作品も楽しみだ。
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