スンニ派の中でも厳格なワッハーブ派を国教とするサウジアラビアの、シーア派に対する理屈抜きの嫌悪感や、湾岸地域および東部地中海レバント地方で覇権を争うイランへのライバル意識が、原油価格の方程式に織り込まれているに違いない。サウジ政府は7500億ドル以上の外貨準備を保有し、原油収入の減少を乗り切ることは可能だ。一方、収支を合わせるために現行水準の2倍の価格が必要なイランは大損害を被っている。イランは経済制裁ですでに打撃を受けているうえ、シリアとイラクにいる支持勢力のために毎月15億ドルを支出しているとの試算もある。
もちろんイランは、たとえ米国や、サウジを含む欧州・アラブの親米国と同盟関係にはなくても、過激派「イスラム国」との戦いでは足並みをそろえている。また、オバマ米大統領は核協議を通じてイランとの関係改善を引き続き目指している。その一方で、米国は、イランや地域の緊張緩和という目標に関するサウジの感情を無視することはできない。アラブの信頼できる情報筋によると、この夏、「イスラム国」に対抗する有志連合をスンニ派指導者に呼びかけたケリー米国務長官に対し、サウジの高官が「『イスラム国』は、あなた方米国が(イランと連携する)イラクの政権与党を支援することに、スンニ派が反発した結果なのだ」と告げたという。
市場が原油価格に影響するのはもちろんだ。しかし、理屈抜きの本能的な対立も影響しているのは間違いない。
By David Gardner
(2014年12月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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