テレビのヨミカタ
2015年01月28日(水) 高堀 冬彦

面白いドラマは脚本で決まる! 脚本家はもっと大切にされるべき

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「相棒」HPより

「一に脚本、二に役者、演出は三番目」というのが、ドラマや映画、演劇の定説だ。どんなに名優を揃えようが、脚本が面白くなかったら、名作には成り得ない。演出面でも同じで、どんなに優れたディレクターや監督が作品を手掛けようが、脚本の拙さは致命傷になる。

故・黒澤明さんや山田洋次氏ら巨匠と呼ばれる人たちはそれが分かっているので、自分で脚本まで書くこともある。巨匠と称されるような人は大抵、脚本も書けてしまう。両氏と世代は違うが、『あまちゃん』(NHK)に登場した松尾スズキ氏らも演出と脚本のどちらも手掛ける。

脚本が大切なのは誰でも分かっていること。ところが、ドラマ界においては黎明期からしばらく脚本家が日陰者扱いされた時期があり、やっと作者の名前が前面に出たのは1976年。記念すべき第一作は「山田太一作品」と銘打たれた『男たちの旅路』(NHK)だった。同時代には倉本聰氏や故・向田邦子氏、故・市川森一氏らも大活躍したことから、見る側も誰が作者なのかを意識してドラマを選ぶようになった。

優れた脚本家たちが台頭した時代は、例外なくドラマの黄金期と重なる。そんな時期はテレビ局側も脚本家たちを厚遇していた。才能を守るべく最大限の努力をした。たとえば、『想い出づくり。』(TBS)や『ふぞろいの林檎たち』(同)などの名作群を手掛けた故・大山勝美プロデューサーと山田太一氏の二人三脚は有名な話だ。

最近のドラマのうまい脚本

さて、最近はどうだろう。新聞の番組紹介欄を眺めてみると、脚本家の名前が記されたドラマはほとんどない。それどころか、ある中堅脚本家は「某民放は、プロデューサーが脚本の中身を細かに指図するし、酷いときには断りなしに直す」と嘆く。脚本家が消耗品扱いされているらしい。これでは、面白いドラマは出来ないはずだ。事実、この民放のドラマは近年、勢いを失っている。

逆に、13作目になっても人気の『相棒』(テレビ朝日)は脚本を重んじている。約10人も脚本家を擁し、優れた作品だけを採用するというのだから、ロングヒットを続けていることが素直に頷ける。

1月スタートの連続ドラマを一通り眺めると、視聴率好調の作品はやはり例外なく脚本が良い。『○○妻』(日本テレビ)は巨匠の域に入りつつある遊川和彦氏の脚本。ご存じの通り、『家政婦のミタ』(同、2011年)の作者だ。今回も期待を裏切っていない。清新な筋書きと言えるだろう。

流星ワゴン』(TBS)は重松清氏の小説が原作だが、脚本は新鋭の八津弘幸氏が書いている。池井戸潤氏が原作者である『半沢直樹』(2012年)を、見事なまでにドラマ化したのが八津氏だ。この作品では主役が西島秀俊と香川照之の二人であるため、原作上の登場人物を、二人の持ち味に合わせてデフォルメしている。セリフの作り方もうまい。

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