「GAIA」…それは息づく大きな生命体。
混沌の時代にも希望を見いだし再生を果たして未来へ向かう。
そこにきっと夜明けがやってくる。
神奈川県昭和10年にこの地で創業した企業があります。
日本を代表する巨大企業の一つです。
その80年の歴史を知ることができるショールームがあります。
終戦直後の昭和20年通信インフラを整えたいという国の要請で作った黒電話。
こちらはコンピューターの初期の形です。
昭和55年には日本語の「かな」で入力できるワープロを発表。
当時世界最速の計算速度を誇りました。
情報通信機器メーカーとしてさまざまな商品を開発してきたのです。
常に新しい技術を追求してきた富士通。
川崎工場の地下に特別な部屋があります。
そこにはせっかく開発したものの埋もれていました。
これはすごいんですよ。
金属を加工することで塗料を使わなくてもさまざまな色を浮かび上がらせることができる技術。
3年前に特許を取りましたが使われていません。
なかにはこんなものもありました。
車のダッシュボードに設置するカーナビ。
動作で行き先を案内してくれます。
クマの鼻にはアルコールセンサーも埋め込まれていました。
このカーナビは10年前に特許を取得しました。
「車載入出力装置」。
実は特許を取ると毎年国に対して権利を維持するための料金を払わなくてはなりません。
富士通ではそれが年間数十億円にものぼり負担となっていました。
埋もれた技術を掘り起こしそれを必要とする企業に使ってもらう。
その新たな取り組みを追った。
巨大企業の眠れる特許と町工場の技が結びつくとき画期的な商品が生まれる。
他社の技術を借りて次々とヒット商品を生み出す会社があった。
アイデア溢れる商品はどうやって生まれるのか。
その舞台裏。
実は日本に特許が誕生してから今年は130周年だそうです。
特許制度が始まったのは明治18年。
文明開化の訪れとともに日本でも多くの人が優れた発明をするようになりました。
しかし同時にアイデアを真似されたという苦情も増えていました。
そこで特許制度がつくられたそうです。
ちなみに第1号の特許を取得したのはこちら彫刻家の堀田瑞松という方だそうです。
彼は船に塗る止めの塗料を開発しました。
当時の鉄製の船は海水によって船底が浸食されることが多くありました。
そこで彼は強力な止め塗料を開発したのです。
こちらがその特許の書類だそうです。
「堀田止塗料及ビ其塗法」と書いてあります。
原料として漆や鉄の粉。
更に生姜や酢などが使われていたそうです。
そして現在年間およそ26万件もの特許が取得されているそうです。
こちらは2013年に特許を取得した企業のベスト10です。
1位はパナソニックで7,063件。
以下キヤノントヨタと続きます。
日本のものづくりを支えてきた電機や自動車メーカーなどが並んでいます。
現在認められている特許はおよそ146万件もあるそうです。
しかしそのうち利用されていない特許がおよそ半分の71万件にものぼるということです。
『ガイアの夜明け』今回は埋もれた技術を活用しようという企業の新たな取り組みを追いました。
今回私たちは特別にその部屋への入室が許されました。
それぞれの専門知識を持った審査官1,700人が申請内容を吟味します。
現在有効な特許は146万件ありますがその半数近くが利用されていないといいます。
社内に埋もれた特許技術。
それを掘り起こそうといち早く動き始めたのが富士通でした。
その責任者が各部門を訪ねて使えそうな技術はないか聞いていきます。
この2人は通信機器の設計を担当している技術者。
今これだと1画面。
こいつが2画面。
これだと1回スライドしたので2画面になります。
これで4画面。
4年前に開発されたものの液晶や配線の問題で製品化はされていません。
吾妻さんももともとは技術者。
自らも技術者だったからこそ苦労して開発した技術を活かしたいという思いは強いのです。
吾妻さんはすると全国の自治体などから問い合わせが殺到。
地元の中小企業に特許技術を使わせてほしいというのです。
そこに吾妻さんがやってきました。
出迎えてくれたのは県内の企業のアドバイザーを務める富士通の技術に興味をもった中小企業を紹介してもらうことになっていました。
山さんが案内してくれたのは高野山のふもとにある小さな町工場です。
ごめんください。
こんにちは。
社長の林雄太さん28歳。
4代目です。
糸を作っている工場です。
コットンナイロンポリエステルなどさまざまな特にこの会社が得意としているのは和紙を撚って作る糸です。
和紙の糸は綿よりも軽く吸水性に優れた生地を作ることができます。
実は吾妻さんこの糸に目をつけていました。
大丈夫ですね。
和紙の糸を考え出したのは先代の社長。
去年の夏病気で亡くなりました。
林さんは母親と弟と3人でこの工場を受け継いでいます。
吾妻さん富士通が特許を持つあるものを持ってきていました。
それがこの白い粉。
これは富士通が9年前に特許を取得したチタンアパタイトと呼ばれる粉です。
この粉には紫外線に当たると大腸菌やウイルスなどを分解するという抗菌作用があります。
実験では8時間で菌がほとんどなくなりました。
富士通は携帯電話やパソコンのキーボードなど人が触る部分に使おうと開発しました。
しかし価格に見合うだけのニーズがないと判断。
製品化されていません。
この粉を和紙に混ぜれば今までにない抗菌作用のある生地を作れるのではと考えたのです。
林さん富士通の特許を使った糸作りに取りかかりました。
これですか。
この細く切った和紙を撚って糸にするのです。
その和紙を機械の上にセット。
すると機械の中で紙が撚られ下から糸になって出てきます。
林さん突然機械を止めてしまいました。
すると林さん事務所の棚の奥からあるものを取り出してきました。
代々受け継がれてきたノートです。
素材に合わせて撚る回数や強さなどを試したデータが書かれていました。
この数式は和紙で作るときに機械の回転スピードを割り出すためのもの。
和紙が切れないように回転をあげる方法も書かれていました。
父親が残してくれたノートを頼りにもう一度糸を作ります。
4代受け継がれた町工場の底力が試されようとしていました。
和歌山県にある糸の工場。
4代目富士通のチタンアパタイトを使って抗菌作用のある和紙の糸を作ろうとしていました。
亡くなった父親が残してくれたノートを参考に和紙を糸にしていきます。
翌日糸を作り上げた林さんが訪ねたのは和歌山市内のニット工場。
すみませんたいへん遅くなりました。
早速生地作りに取りかかります。
手がけてくれるのはこの道60年のベテラン。
機械を動かしてみるとここでも問題が。
チタンアパタイトという抗菌作用のある粉を使った和紙の糸。
できあがった生地は穴だらけでした。
編み方を変えながら試行錯誤を続けます。
頼りはベテランの勘。
林さんあとは職人の技を信じるだけです。
富士通の吾妻さんが再び和歌山を訪れていました。
待っていたのは林さん。
生地ができあがったので見に来てもらったのです。
これそうなんですか?これそうなんです。
触った感じ普通の…。
できた生地からポロシャツを作っていました。
これ実は…。
臭わないですよね。
抗菌作用があるため臭いもつきづらいといいます。
ここまでできてると思わなかったので嬉しいですねなんかね。
だってこないだ…。
糸にもなってなかった。
なんかいいっすね。
あったかい。
富士通の特許を使って開発した新製品の誕生です。
抗菌作用があるうえに和紙を使っているため綿よりも軽く吸水性に優れるのが特徴です。
スポーツウェアには打ってつけ。
特許の使用料として1枚売れるごとに価格の数パーセントが富士通に入ります。
更には医療の現場や宇宙飛行士が着る服など期待は広がります。
巨大企業の埋もれた特許技術を掘り起こし町工場の技で活かす。
挑戦は続きます。
一方他社の技術を使ってヒット商品を生み出している会社がありました。
キングジム。
キングジムといえばこのファイル。
そしてこのテプラ。
誰でも簡単にラベルを作ることができます。
この2つの事務用品が長年キングジムの屋台骨を支えてきました。
書類をパソコンに保存する時代になったことに危機感を持っていました。
そこで数年前から新商品の開発に力を入れだしたといいます。
よくご家庭で…。
こうやってやる…これコロコロって言いますよね。
そして生まれたのがスマホやタブレットの汚れをとる商品です。
こちらはよくあるミキサー。
その回転の技術を活かして作ったのが…。
小さな洗濯機。
そのキングジムの商品開発会議。
社長が飛びついた新たなアイデアとは?こちらはよくある会社のオフィスを再現したセットです。
実はこの中にキングジムが開発したさまざまなアイデア商品があります。
例えばこちらの掲示板。
ポスターをこうしてかざすとなんと貼りついてしまいます。
磁石や画びょうなどは一切不要ということです。
実は表面に弱い静電気を発生させることで紙などを吸いつける掲示板なのだそうです。
確かにこれなら赤や青の磁石はいりませんね。
そしてこちらは一見普通のマウスですがこのマウス資料などをなぞるとスキャンされてこのようにパソコンにデータが取り込まれていきます。
実はこれマウスの裏側にカメラが内蔵されていてマウスとスキャナーが一体となっている製品なのだそうです。
更にこちらの書類棚にはよくオフィスで見かけるファイルが並んでいます。
そこに収まっているこちらのボックス。
開けてみると…。
圧縮された2つのものが入っています。
これを広げて膨らませたのがこちら。
服の形をした寝袋とエアマットです。
災害が起きて会社に泊まらなければならない人のために開発されたそうです。
着たままでも動けるようになっているんですね。
実はこれらの製品はすでに他の企業が持っている技術を活かして作られました。
キングジムはこうしたアイデア商品をどのように開発しているのかその現場を取材しました。
事務用品のメーカーその開発本部を覗いてみると…。
社員たちが皆好き好きに作業を行っています。
こちらにはやすりをかけている男性が。
スマホを触りながらなにやら探しものをしています。
(キーホルダーの音)音の発信源はこの緑色のキーホルダー。
これをカバンや鍵につけておけばなくしたとき簡単に探しだすことができるというものです。
自由な雰囲気のなかそれぞれが次のヒット商品を生みだそうとアイデアを練っていました。
この日は月に一度の開発会議。
ちょっと覗かせてもらいます。
開発本部のメンバーが練り上げたアイデアを提案。
それを営業や広報など各部署の責任者が商品化するかどうか判断します。
まずはあの遠藤さん。
スマホと連動して音が鳴るキーホルダーをプレゼンします。
社長に渡すと…。
(キーホルダーの音)あなたが鳴らしたのね。
遠藤さんがスマホで鳴らしたのです。
よく物をなくす人には便利な商品。
反応は上々です。
次は小物ポケットの部分を基点に中に入れる物によって大きさを3段階に変えることができるポーチです。
ところが反応はよくありません。
賛同してくれたのは2人だけ。
すると…。
キングジムではこの会議でキングジムの物流倉庫。
宮本社長見せたいものがあると案内してくれました。
これはファイルのほうで売れなかった…。
重要な書類の中身を見られないようにするためです。
これも売れるだろうと思ったんですけど…。
これは25年も前に作った商品。
やってみます。
レンズを被写体に向けて撮影。
いきましたね。
撮った写真をその場でプリントすることができる画期的な商品のはずでした。
このへんかな?狙いどおり写るかわからない。
しかも写真の解像度が低いことが売れなかった理由でした。
この倉庫には売れなかった商品がうずたかく積まれていました。
ヒット商品の裏には多くの失敗があったのです。
その頃キングジムのヒットメーカーが新たな技術に注目していました。
画期的な商品の予感が。
事務用品のメーカーキングジム。
平山さんは以前ソニーの液晶テレビを設計する技術者でした。
実はこの商品私が開発した商品なんですけど。
入社早々手がけたのがこちら名刺なんですけどピッと押すだけでつけられます。
いきなりヒット商品を作り上げたのです。
会社の地下駐車場に平山さんがいました。
新しい商品の開発にむけてある技術を試そうというのです。
消します。
それは蓄光と呼ばれる技術です。
この日平山さんが向かったのは特許庁。
蓄光の技術で特許を持つ会社を探しに来たのです。
こちらは2階にあるどんな特許があるのか調べられる部屋。
頼めば職員が手伝ってもくれます。
平山さんが目をとめたのは京都にあるエルティーアイという会社でした。
発明の名称蓄光シートと書いてあります。
この会社が持つ特許はなどに使われています。
緑色に光っているのが蓄光の技術。
平山さんその会社を訪ねました。
社員10人ほどの小さな会社です。
すみません。
この会社蓄光シートを使った防災用品ではシェアナンバーワンを誇ります。
商品を見せてもらいます。
海外の鉄道車両のほうに納めさせていただいたり…。
暗くすると…。
この会社の蓄光シートは他の会社より明るく長く光るといいます。
その技術が特許。
それはやってないですから…。
平山さんが提案した蓄光技術を使ったこれまでにない商品。
先方も協力してくれることになりました。
東京に戻った平山さん。
早速作り始めます。
いったいどんなものができあがるのか?事務用品のメーカー開発本部を覗いてみると…。
平山さんが光を蓄える蓄光シートをボードに貼っていました。
実はこの蓄光の技術を使って新しい掲示板を作ろうとしていたのです。
これはその掲示板に文字を書くためのペン。
押しつけると先端から紫外線が出ます。
この紫外線によって蓄光シートが光るといいます。
これが完成した試作品。
箱から掲示板を引っぱり出し紫外線を発するペンで文字を書きます。
暗くすると光り始めました。
平山さんはまず開発本部のメンバーに見てもらうことにしました。
具体的な商品にするためのアイデアをもらおうというのです。
実際に書いてもらいます。
こういうことだ。
はい。
電気を消して文字が光ることを体験してもらいます。
更にその掲示板は縦にも横にもできてコンパクトに収納できるようになっていました。
すると思いも寄らなかった指摘が…。
アイデアはよいもののどんな人がどんな場面で使うのかがわからない。
それを明確にするようにと課題を与えられたのです。
他社の技術をヒントにアイデア溢れる商品を今後も開発していくそうです。
ものづくりで発展してきた日本には技術の蓄積が豊富にあります。
それはいわば日本が持っている資源といえるのかもしれません。
埋もれた技術を掘り起こす。
そして他の企業と協力することで新たな製品を生み出す。
こうした動きがこれから増えていくのかもしれません。
2015/01/20(火) 22:00〜22:54
テレビ大阪1
ガイアの夜明け【企業の“埋もれた技術”を活かせ!】[字]
大企業の地下に眠る…10万件の“特許”!町工場が大活用し、ヒット商品が続々誕生!?▽10のうち9は失敗!?でも誰か一人でも賛同すれば商品化!驚きの開発会議の裏側
詳細情報
番組内容
世界に冠たる日本のモノ作り。それを支える独自の技術を開発するため、これまで各企業はしのぎを削ってきた。しかし、そうした技術の多くは実際に製品化されることなく、埋もれているのが現実だ。現在、日本で認められている特許は約146万件あるが、そのうち半数近くの約71万件が、利用されていない特許とされる。
番組内容続き
そうした埋もれている“宝の山”に光を当て、新たな商品を開発しようと、巨大企業が中小企業とタッグを組み始めた。また、他社の技術やありふれた技術を活用して、次々とアイデア商品を生み出す文具メーカーも取材。埋もれた技術を発掘する現場を追った。
出演者
【案内人】江口洋介
【ナレーター】杉本哲太
音楽
【音楽】
新井誠志
【テーマ曲】
◆オープニング曲
「鼓動〜ガイアの夜明け」(作曲/岸利至)
◆エンディング曲
「夜空の花」(作曲/新井誠志)
「ガイア」とは
ギリシャ神話に登場する「大地の女神」を意味し、後にノーベル賞作家のウイリアム・ゴールディングが「地球」を指して“ガイア”と呼んだことから「ガイア=地球」という解釈が定着している。「ガイアの夜明け」という番組タイトルには、地球規模で経済事象を捉えることで21世紀の新たな日本像を模索すること、そして低迷する経済状況からの再生=「夜明け」を目指す現在の日本を描くという意味合いが込められている。
関連情報
◆ホームページ
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◆公式Twitter
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ジャンル :
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