洋風の味わいも楽しんで下さいね。
(テーマ音楽)
(女性)これで普通に回して。
(川上)普通に回して…。
布にちなんだ名前は布地デザイナーの母親が付けました。
布にゆかりの深い川上さんがにっぽん各地に訪ねるのは…。
今も輝きを失わずに人々の心を捉え続けるにっぽんの布。
昔ながらの方法で手間を惜しまず生み出される布には肌ざわり色柄など独特な味わいがありおしゃれなアイテムとして最近注目されています。
川上麻衣子さんが布のふるさとで魅力の秘密を探ります。
案内するのは…京都で江戸時代から続く染色家の5代目でにっぽんに伝わる布や染め物の研究に取り組んでいます。
第8回は母娘孫と三代にわたって着続けられる「紬」です。
紬は絹の織物。
ふんわりと軽く独特の風合いを持っているのが特徴です。
落ち着いた深い味わいがあり着物通の人が好むと言われています。
最近では上等なおしゃれ着としても人気です。
紬は今もにっぽんの各地で作られています。
特産品の紅花で染めた紬などが知られています。
島で取れる植物染料や泥染めで糸を染め織り上げています。
そして茨城県と栃木県にまたがる地域の…高度な技術で江戸時代から高い評価を受けてきました。
その技は世界に認められています。
吉岡さんと川上さんまずは「結城紬」の産地茨城県結城市へ。
結城紬の製造と問屋を営む小倉さんのお宅を訪ねます。
かわいらしいですね。
(吉岡)繭で…。
(吉岡川上)こんにちは。
きれいですね〜。
掛けてみましょうか?え〜いいんですか?多分ねお似合いになると思うんですよね。
うわ〜…。
いかがでしょうか?柔らかいし軽いし。
いや〜…。
この感覚を知ってしまったら…。
軽いでしょ?軽いです。
ほんとに軽い。
すごい優しい感じなんですけど紬のいわゆる特徴ってどういうところにあるんですか?ご主人ちょっと見せてやって頂けますか?この糸を見て頂くと分かるんですが…ですから表面が多少…。
このちょっとした凸凹加減が出てくるっていう。
風合いが出てるのはこの「紡ぐ」という仕事の糸が…。
この段階ここから始まってるんですね。
紬独特の風合いは原料である紬糸から生まれます。
どのようにして作られるのでしょうか。
その秘密を探るため訪れたのは福島県伊達市保原町。
古くから養蚕が盛んです。
繭がたくさんありますね。
すごいたくさん!ここは今繭をどうされてるんですか?選別してるとこです。
選別ですか?集まった繭は傷や汚れがあるものを取り除き良いものだけを選びます。
でも確率的にはそんなに…?そうですね。
いくらもないんですけどたまにこういうの入ってるんですね。
(笑い声)どうしてもよりよい真綿を作るには原料の繭が一番なんですよ。
繭が良くないと製品も良くない。
生まれ育ちも確かなものをお使いになられてるんですね。
そうです。
はい。
選別した繭はまず重曹を入れた湯で煮ます。
これは繭を固めている物質を取り除き柔らかくするための作業です。
下ごしらえした繭は次の作業場へと届けられます。
ここをお邪魔したのは煮た繭から真綿を…どういうふうにやっていくか最終の仕上げを見せてもらいましょう。
繭1つを伸ばしてるんじゃなくて…。
すぐそうやって開けるものなんですか?
(佐藤)水の中でほぐして柔らかくなるから…。
ああ〜。
帽子みたいにこう…。
均等に伸ばしてる感じですか?そうなんです。
均等に伸ばさなくてなんねえ…。
難しそう。
厚いとこと薄いとこあるから手の加減で。
その加減が難しい…。
強く入れたり弱く入れたり。
長さをそろえるように。
大体勘でやってます。
これでこのあと乾燥させてくんですか?そうです。
大引きした綿をね。
水にさらしてから陰干しにします。
これが今大きくしたものを乾かして…。
ええ〜!軽いですね!すごい柔らかいし軽いし。
これが糸になっていくんですね。
だからここがなんか空気というか風というか何かがたまってるというかね。
とどまってるような…。
出来上がった袋真綿が人の手でいよいよ糸になります。
(田中)これが「袋真綿」っていってねこう三角状態に自分の胸の方に向かって…。
でこんなふうに広げて巻きつけます。
始めちゃいますか?あっもう始まるんですね。
ちゃんとこう1本ずつ絡ませる状態でなびりつけていきます。
今ずっと唾液をつけながら…?はい唾液を。
それはずっとそうやっていくんですか?はい。
え〜水じゃ駄目なんですか?水だとね乾くとまた真綿のこの状態に戻っちゃうのね。
ただひたすら唾液でまとめて…。
へえ〜…。
これ撚りをあんまりかけずにこういう糸にされてるんですけどね。
平たい細い糸と思ってもらったら…。
きしめんみたいな?そうそうそう。
ちょっと平べったい感じ。
それで撚りかかってないから空気が入ってくるというかな風通しがいいというのか。
それが機にかけてもそのまま生かされてるからいい風合いの布になっていくわけなんです。
やってみます?私がですか!?え〜これ難しいですよね?難しそうやね。
難しいですよね!唾液こんないっぱいつけてその唾液で一本の糸にまとめてあげる。
(笑い声)どうでしょう私の所…。
アハハ!ありがとうございます。
結城紬といえば代表的なのが絣柄。
絣柄を織るには糸の段階から準備をします。
絣になる白い部分を染め残した糸を作っておくのです。
染め残す部分を別の糸できつく括ります。
そうしたら糸を染めます。
糸を回しながら丁寧に染めていきます。
括り目の間の染める部分に染料をムラなく入れるため糸をたたきつけます。
そして糊付け。
水で溶いた小麦粉に糸を1時間ほど浸してから干します。
紬糸の強度を増す重要な作業です。
こうした長い工程を経てようやく機織りにたどりつきます。
(吉岡川上)こんにちは。
こんにちは。
へえ〜これが…。
もう見たからに普通と違いますね。
これは「伝統的な」というか非常に古い原始的な機といっていいんじゃないでしょうかね。
今の一般的な機は「高機」といってね座る所が高くて縦と横が固定してあるんですね。
これはもうこの方の腰の感覚で開口されてる事が一つの特徴。
道具の重さも全部自分で支えていますので…。
腹筋も結構ですね…腹筋使いますよね。
これで柄を合わせて…この状態で合わせてるんですか?はい。
この縦と横の十字を合わせて。
「縦と横の十字を合わせて」…。
今亀甲の中をつくってますね。
それ相当目が良くないと…。
そうです。
目が良くなきゃいけないし神経も…。
それはすごい作業ですね。
これはもうすごい作業ですね。
人間の体で糸の張り具合を調節する地機織り。
糸に無理な力がかからないため手で紡いだ独特の風合いが生かされます。
柄にもよりますが一反織るのに2〜3か月。
中には一年以上かかるのもあるそうです。
紬独特の風合いはさまざまな職人たちの丁寧な手仕事が生み出していたんですね。
こうして作られた結城紬は昔から「結城三代」と言われ母から娘へそして孫へ三代にわたって受け継がれてきました。
神原芳子さんもそんな結城紬を大切にしている女性の一人です。
神原さんの紬は娘孫そして孫の嫁三世代の女性たちによって引き継がれています。
そうです。
やはり母からのもので。
(正子)なじんでくるんだよね。
着続けるうちに体になじみ柔らかさと風合いを増す紬。
紬独特の味わいをつくり上げるのは職人だけでなく着る人自身でもあるんですね。
そんな紬を現代の暮らしにも生かしましょう。
川上さんが訪ねたのは京都市内にある着物店です。
こんにちは。
よろしくお願いします。
お店の主人もりたもとこさんと着物のリメイクを手がける昆布尚子さんに着物と洋服両方の楽しみ方を教えて頂きます。
まずもりたさんに紬を現代風にコーディネートするコツを伺いました。
やっぱり絣になりますとどうしてもさみしい感じに…。
落ち着きすぎてしまう感じが。
(もりた)はい。
それにちょっと地味な帯を合わせたらほんとにさみしくなっちゃうのでこんな大胆な帯なんですけども。
珍しいですね。
(もりた)はい。
こういう柄の帯を合わせて頂いたらお互いが映える…。
着て頂く方もお顔映えがするコーディネートになると思います。
他にも紬をモダンにおしゃれに着こなすコツを見てみましょう。
エレガントできちんとした印象の無地は袋帯など格の高い帯を合わせるとワンランク上の着こなしが楽しめます。
洋服のような感覚で楽しめる格子柄はキュートさを生かしたコーディネートを。
遊び心たっぷりな柄物の帯を合わせると若々しい印象になります。
今度は昆布さんに洋服として楽しむ方法を教えて頂きます。
こちらにある洋服も紬ですか。
(昆布)元は着物だったんです。
着物で着るにはちょっと似合わないなっていうのは思い切ってコートにしたんですけれども。
やっぱ素材もコートにすごく向いてますか?
(昆布)軽くて結構温かいんです。
寒さも大丈夫です。
でも全然雰囲気が変わりますね。
紬で作るとコートが軽く着心地良くなります。
作り方を昆布さんに教えて頂きましょう。
材料はこちらです。
寸法はこの図を参考にして下さい。
身頃そで見返しポケットは縫い代をつけて裁ちます。
(昆布)次に後ろ身頃です。
縫い代はアイロンで割っておきます。
後ろ身頃と前身頃を…前見返し2枚と後ろ見返し1枚の裏側に接着しんを貼っておきます。
身頃と見返しの肩の縫い線がずれないようきちんと合わせます。
後ろ中心から見返しの端までをまず縫います。
端から端まで一気に縫うと左右の長さが微妙に違ってくる事も。
真ん中から端に向かって縫っていくようにしましょう。
前端の角の部分をカットします。
アイロンをかけて身頃の裏側に倒しておきます。
見返しを身頃の裏側に返してアイロンで整えておきます。
表に返して裾から裾までグルリと0.1cmステッチをかけておきます。
見返しは後ろ中央と肩の部分でまつっておきます。
次にポケット。
表布裏布接着しんを用意します。
表布の上部見返しの部分に接着しんを貼り裏布と中表に縫います。
端から1cm内側を縫っておきましょう。
縫い代を裏布側に倒し返し口を残してわきから底まで縫います。
返し口から手を入れて表に返します。
形を整えてから…身頃のわきの部分を縫ってからポケットをつけます。
ポケットをつけ位置に置き待ち針で仮留めをし端から0.1cmステッチをかけます。
角の部分は補強のため三角にミシンをかけておきましょう。
裾の始末をします。
裾は縫い代を裏側に折りミシンをかけてから更に折り上げてまつります。
前見返しの端は裾から20cmくらい上まで千鳥がけで留めておきます。
次にそでです。
まず前と後ろの布を縫い合わせます。
そでの付け根はまるみをつけるため…縫い代は割っておきましょう。
そで口を始末したあとそでと身頃を中表に合わせ肩線の先とそで山を合わせて縫います。
ボタンホールを開けてボタンをつけておきます。
これでコートの完成です。
着込んだ紬の布は軽くてしなやか。
さらりと羽織って気軽なお出かけに楽しめます。
着物でも洋服でもすてきな紬。
大切に着続けて下さいね。
今回こういう紬の里を巡っていきましたけど感想はいかがです?いやもう驚く事がいっぱいで。
一つ一つの工程にそれぞれたくさんの人が関わって…一つ一つがすごく繊細な作業じゃないですか。
この一反が出来上がるまでにものすごい手間がかかってるんだというのを改めて知ってもうビックリしましたね。
伝統というのか正しい作られ方を残しよるという点は我々も…感動するというのかね。
そういうのを皆さんに認識して頂けるようになる事を僕たち願いたいですね。
(テーマ音楽)2015/01/20(火) 21:30〜21:55
NHKEテレ1大阪
趣味Do楽 にっぽんの布を楽しむ〜訪ねて・ふれて・まとう〜(8)紬(つむぎ)[解][字]
女性の心をとらえる「にっぽんの布」。魅力の秘密を日本各地の産地に探る。今回は女優・川上麻衣子さんが茨城と福島で独特の風合いの紬(つむぎ)が誕生する過程を体感。
詳細情報
番組内容
見ているだけで心引かれる「にっぽんの布」。魅力の秘密を探りに、染織史家・吉岡幸雄さんの案内で日本各地の産地を訪ねる。今回は女優・川上麻衣子さんが、軽くて丈夫で独特の風合いがある紬(つむぎ)の産地・茨城と、紬にする特別な糸を作っている福島へ。紬は蚕の繭から作られるが、表面に凹凸のある力強い素朴さはどこから生まれるのか?京都では、紬の着物のコーディネート術と、洋風のコートにリメイクする方法を習う。
出演者
【講師】染織史家…吉岡幸雄,着物店主人…もりたもとこ,布作家…昆布尚子,【生徒】川上麻衣子,【出演】小倉敏行,関根實,佐藤米子,田中紀久美,小柳阿佐子,神原芳子,小倉正子,小倉未央,小倉あき子ほか
ジャンル :
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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