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1977年のタブレット・コンピューター

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が1970年代後半につくった「マルチメディア・コンピューター」は、いわば部屋全体が筐体だったが、機能的には現在のタブレットと同等だ。画像と動画で紹介。

 
 
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TEXT BY GREG MILLER
IMAGES BY WILLIAM DONELSON/MIT
TRANSLATION BY KENJI MIZUGAKI/GALILEO

WIRED NEWS(US)

  • 01_150128sdms

    1/121970年代にMITでつくられた「Spatial Data Management System」。

  • 02_150128sdms

    2/12システムを操作しているのは、生みの親であるウィリアム・ドネルソン。

  • 03_150128sdms

    3/12システムの「ホーム画面」。各アプリに対応したボックスを表示する。

  • 04_150128sdms

    4/12電話アプリ。

  • 05_150128sdms

    5/12システム全体のレイアウト図。音響システムは8チャンネルだ。

  • 06_150128sdms

    6/12ブックリーダー。

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    7/12肘掛けのタッチパッドを指先でスワイプすると、本のページをめくることができる。

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    8/12肘掛け部分のタッチパッド。

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    9/12計算機アプリ。

  • 10_150128sdms

    10/12動画コントロール画面。下部の矢印で、再生方向と速度を制御する。

  • 11_150128sdms

    11/12感圧式タッチスクリーンのデモンストレーション。

  • 12_150128sdms

    12/12その後の進化型のシステム構成。4つのミニコンピューター(3台の「Interdata 7/32」と1台の「Interdata 85」)で構成されるのは初期型と同じ。

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1970年代にMITでつくられた「Spatial Data Management System」。

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システムを操作しているのは、生みの親であるウィリアム・ドネルソン。

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システムの「ホーム画面」。各アプリに対応したボックスを表示する。

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電話アプリ。

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システム全体のレイアウト図。音響システムは8チャンネルだ。

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ブックリーダー。

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肘掛けのタッチパッドを指先でスワイプすると、本のページをめくることができる。

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肘掛け部分のタッチパッド。

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計算機アプリ。

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動画コントロール画面。下部の矢印で、再生方向と速度を制御する。

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感圧式タッチスクリーンのデモンストレーション。

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その後の進化型のシステム構成。4つのミニコンピューター(3台の「Interdata 7/32」と1台の「Interdata 85」)で構成されるのは初期型と同じ。

1970年代後半にマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者がつくった「タブレット」は、いわばひとつの部屋全体を筐体としていた。実際にどんなものだったかは、上の画像と下の動画をご覧いただきたい。

「Spatial Data Management System(空間的データ管理システム)」と名付けられたこのシステムは、巨大ではあったが、ある意味では現代のタブレットやスマートフォンにとてもよく似ている。タッチスクリーンと音声認識機能を備え、複数のアプリを搭載していたし、電話をかけることさえできたのだ。

人間は生まれつき空間的にものを考える。それがシステムの基本的アイデアだった。現在のMITメディアラボの前身、「アーキテクチャ・マシン・グループ」で、修士論文の一部として1977年にこのシステムをつくったウィリアム・ドネルソンによれば、「人は生まれながらにして空間を探索し、空間を操作する生き物」なのだ。

ドネルソン氏のチームは、物理的な机の上でファイルを扱うようなイメージのユーザーインターフェースをつくろうとしていたが、当時そうしたアイデアに取り組んでいたのは、彼らだけではなかった。たとえば、ゼロックス社のパロアルト研究所(Xerox PARC)のエンジニアたちは、1970年代半ばに、デスクトップ型のインターフェースを持つ実験的なコンピューター「Alto」を開発し、1981年にはその市販タイプ「Xerox Star」を発表している。

ただ、ゼロックスの製品が無愛想な箱にしか見えないのに対し、ドネルソン氏のシステムはもっと大掛かりで豪華なものだ。

ユーザーは、「(スタートレックの)カーク船長の椅子」と呼ばれる大型の肘掛け椅子に座る。左右の肘掛けには、それぞれタッチパッドとジョイスティックがあり、椅子の両サイドのちょうど手が届く位置には2つの「タッチスクリーン」が置かれている(キャスター付きの台に載せた、箱型のテクトロニクス社製カラーモニターだ)。

スクリーンのひとつは、今日われわれが「ホーム画面」と呼んでいるものと同じだ。つまり、画面上に配置された明るい色調のボックスをユーザーが指でつつくと、それに対応したプログラムが立ち上がる。搭載されたアプリには、計算機、地図、ブックリーダー、写真/動画のヴューワーなどがあった。

このシステム全体の「頭脳」は、4つのミニコンピューターのネットワークだった。プロセッサーのRAMは全体で640KB、最初のヴァージョンのディスク容量は合計640MBだった(技術的な詳細はこちら)。

ディスプレイは、ユーザーの正面にある縦1.8m、横2.4mのプロジェクタータイプのTV画面で、サラウンド効果が得られるように8個のスピーカーが配置されていた。

ドネルソン氏は、このシステムはおそらく世界初のマルチメディア・コンピューターだったと考えている。しかし、当時の半導体技術の限界のため、かなり扱いづらい代物でもあったようだ。「温度が上がりすぎると作動しなくなり、温度が下がりすぎてもダメだった。うまく働き続けてくれるように、冷却ファンの調整に何時間も費やした」と同氏は言う。

次の動画では、このシステムが実際に作動する様子を見ることができる。動画全体で10分以上あり、現代の基準から言えばかなりのんびりとした進行なので、チェックすべきハイライトシーンをいくつかご紹介しておこう。

1′08″ 複数の写真をスクロール。ズームインやズームアウトもできる。
3′02″ トラックパッドを使って、「本」のページをめくる。
4′30″ 音声コマンドで写真と地図を画面に呼び出す。
5′05″ 音声コマンドで連絡先を探し、電話をかける。
7′55″ 計算機を使う。
8′48″ 地図を見る。
9′47″ 動画(当時のTVドラマ「刑事コロンボ」の一場面)を再生し、タッチスクリーンを使って音声言語(英語から日本語へ)と再生速度をコントロール。

 
 
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