イスラーム関連の今回の拉致事件で、知っておきたい知識が得られるお手ごろ2冊
早く後藤健二さんが開放されるといいですね。
日本人としては何もできることはなく、ただ推移を見守ることしかできないわけですが、個人的には問題が落ち着くタイミングで巻き込んでしまったヨルダン人やヨルダン政府には日本人として深い謝意を伝えたい気持ちでいっぱいです。
そして、思った以上に日本国内のイスラームの人たちや、世界のイスラーム社会の暖かさや懐の深さを垣間見た気がします。これを機に少しでもイスラームに対する理解を日本人なりに深めていきたいなあと思う次第であります。
で、個人的に情勢を見ていて、番組でコメンテーターとして「いわゆるイスラム国」の問題をお伝えする上で、個人的に有意義で参考になるだろうと思う本を2冊ご紹介したいと思います。
■『メディアとテロリズム』(福田充・著)
一連のいわゆるイスラム国との交渉を見ていて不思議に思うことは多々あったのですが、そのメディア活用と交渉条件の整合性について考察のきっかけになったのが『メディアとテロリズム』です。この本の問題提起である「日本型の解決」というものを考えるときに、現状で日本政府が可能なこととは何かをゆるゆると思い起こしながら、日本人としてどういう振る舞いをするのが妥当だろうかと思案するにはとても趣深い本です。
テロに関する情報を消費する対象とするのではなく、なるだけ健全な当事者意識を保ちながら先方の狙いや行うべきダメージコントロールについて目配せしていく姿勢を養うのが日本人的な知識の活用法なのではないのかなあと感じる次第であります。
■『イスラーム国の衝撃』(池内恵・著)
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一部で話題の本書、内容からにじみ出る池内さんのキャラクターや危機感も含め、賛否両論が出ている本ではありますが、個人的にはタイムリーさだけではない深みを与えてくれる好著だと思います。読みやすいかと言われると微妙ですが、それ以上に弾力性のある歴史認識をなるだけ日本人に分かるように順番に説明していこうと言う誠実さを感じます。
いわゆるイスラーム国の歴史的な起こりからその考え方、求めるもの、イスラーム社会に与えている緊張感や衝撃といったところがしっかりとまとめられ、その一方で日本人が安易にイスラームを左翼思想の代替とすることの危険性にも警鐘を鳴らすというこのバランス感覚が素晴らしいと思うわけです。
上記2冊の本を総括して言うならば、この問題を理解する上での「基礎体力」であって、それを踏まえたうえで日本人がどう行動するべきかの考察をするにはとても良い内容だと思います。