ハートネットTV「君と歩む道〜シングルファーザーと自閉症児の20年〜」 2015.01.20


(浩)よし…よし…こんな格好ですみません。
よし行くぞ。
今年7月ある親子が写真館を訪れました。
川崎市の新保浩さんと一人息子の綾麻さんです。
綾麻さんは知的障害のある自閉症です。
ちょっと綾麻立って。
二十歳になったの?二十歳ですね。
おめでとう!おめでとうさん!よかったね綾麻。
恥ずかしい。
いい感じだよいい感じだよ。
(シャッター音)シングルファーザーの浩さん。
綾麻さんを育て上げこの日二十歳の誕生日を迎えました。
(シャッター音)自閉症の息子と向き合いたい。
浩さんは「そよ風の手紙」と名付けたホームページで生活の記録をつづってきました。
苦しさを言葉にできず自傷行為を繰り返す綾麻さん。
悩みながら育児をする思いをそのまま文字にしました。
一方初めて「バイ、バイ」と言った日など成長する息子の様子に喜ぶ父親の気持ちも伝えました。
789…。
人生にとって大切なものは何か幸せとは何か浩さんは綾麻さんの笑顔からその全てを教わってきたといいます。
彼のうれしそうな顔とか純粋な心を見てるとですね本当に私の方が癒やされてですね何か本当彼には本当に生まれてきてくれてありがとうって…。
山あり谷あり共に歩んできた父と子。
20年の心の軌跡を見つめます。
綾麻…こっち!こっちだよ。
14歳の時の新保綾麻さんです。
父親の浩さんは会社勤めをしながら養護学校に通う息子を育ててきました。
すみません。
この日浩さんに連れられて理髪店にやって来た綾麻さん。
お〜い!お〜い!お〜い!顔を覆ったまま動かなくなってしまいました。
いつもと違う行動パターンが苦手なため気持ちの整理がつかなくなってしまったのです。
お〜い!食事の時間です。
どれが欲しいのか言ってみな。
気持ちを言葉にするのが苦手な綾麻さん。
何が食べたいのかなかなか伝えられません。
(たたく音)
(割れる音)大丈夫?割れた?
(綾麻)大丈夫…。
あら?あ〜。
親子でも気持ちを理解するのが難しい毎日です。
どうしたんだよ〜?どうした?どうした?うん?綾麻さんの母親です。
6歳の時に離婚しました。
不眠不休で続いた息子の世話。
周りの理解も得られず精神的に追い込まれたのが原因でした。
母親がつけていた綾麻さんの母子手帳です。
「母乳をあげていると幸せな気持になる」。
生後4週間母親になった幸せをかみしめていました。
ところがほかの子どもとの違いに気付き始めます。
3歳の時自閉症と診断されてからはほとんど何も書かれなくなりました。
突然大きな音を立てたり所構わず走り回ったりする綾麻さん。
母親は周囲から冷たい視線を向けられるようになりました。
夫の浩さんに24時間一緒にいるのがつらいと訴えたといいます。
浩さんは妻を負担から解放しようと離婚。
仕事のある平日は入所施設に預け週末は一緒に過ごす事にしました。
うまそうに飲むねお前。
自閉症の息子の気持ちを知りたい。
浩さんは綾麻さんとの生活の記録をホームページにつづる事にしました。
タイトルは「そよ風の手紙」。
前向きでありたいと困った出来事も努めて明るく伝えています。
散歩に出かけ動かなくなった時の日記です。
「りょうま、帰るぞ!半ば強引に連れて行こうとすると、超イワイワ星人が登場!!!大地に根を下ろしてしまいました」。
つらい出来事もありのままにつづっています。
苦しさを言葉にできず自傷行為を繰り返した日。
一方成長する息子の姿に喜びも。
「そうです」。
「彼の成長は遅いかもしれません」。
息子と向き合い続ける日々。
いつしか浩さんは綾麻さんのさまざまな行動は何かを一生懸命伝えようとしている結果なのではないかと考えるようになりました。
綾麻さんへの接し方も変わりました。
嫌だ?え〜!分かった分かった分かった。
ああ〜。
パニックの時服をかぶるのは自分で気持ちを落ち着かせるため。
そう考える浩さんはじっと寄り添いながら共感の思いを言葉で伝えます。
大丈夫だよねえ。
うんそっか。
うんいいよ。
うんうん。
そして30分後。
あ〜!うんねえ立ち直った?立ち直りましたか?スマイルスマイルスマイル!綾麻さんに笑顔が戻りました。
「苦しかったら言っていいんだよ」とかそういう言葉をかけてあげる事によって「あっお父さんは僕の気持ちが分かってくれてるんだな」と思ってくれたらそれはすごい…彼にとっては一番の救いなのかな…。
高校3年生になった綾麻さん。
ゆっくりですが着実な成長を続けています。
いい感じだね。
髪を切られるのが苦手でしたが我慢ができるようになりました。
はいOK。
いい感じいい感じ。
そして散髪が終わったあと…。
よし。
じゃあね綾麻ここで言おうか?ねえ。
あ〜よく言えた。
ありがとうございました。
少しだけ言葉で気持ちを伝える事もできるようになりました。
「ありがとうございました」言えた。
ねえねえ!よく言えたよ。
偉い偉い!ねえ!かっこいいかっこいいよ!うん最高!うん!
(拍手)いろんな体験をしてほしいと5キロのウオーキング大会にも挑戦しました。
初めての経験に戸惑う綾麻さん。
途中何度も動かなくなりました。
綾ちゃ〜ん!ハハハッ。
おばちゃんと一緒に歩こうかな?手つないで行こう!おばあさんだよ。
ハハハハッ。
頑張れ〜!ありがとうございます。
地域の人たちが声をかけて励まします。
2人で心を合わせながらゴールを目指しました。
その日の日記です。
それで本当にこう…ホームページには同じような境遇の全国の親たちから多くの反響が寄せられています。
「私はシングルマザーで長男が自閉症です。
不安でいっぱいですが、りょうまさんの日記を読むと本当に元気になります」。
「待つ事の大切さ、今を生きる楽しさを感じました。
息子に向き合える勇気が湧いてきました」。
綾麻さんをもっと地域の中で育てていきたい。
そう考えた浩さんは2年前大きな決断をしました。
仕事のある平日は離れて暮らしている綾麻さんを引き取るため17年間勤めた会社を退職する事にしたのです。
ありがとうございました。
いえいえ。
ありがとうございました。
またね。
はい。
綾麻起きるぞ。
綾麻おい!おい!おい起きて。
起きて。
はい行くぞ。
せ〜の立って。
再び一緒に暮らし始めた2人。
時間を見つけては地域の中で暮らすための準備を進めています。
この日は買い物の練習を行いました。
おばさんに「はい」って。
はいお釣りですよ〜。
品物を選んでお金を払う。
お礼を言う。
一つずつ根気強く教えていきます。
「ありがとうございました」って言わなきゃ。
ありがとう…。
「ありがとう」ってね。
はい。
どうぞ。
おいしい。
よかったね。
はいどうぞ。
あ〜こんにちは。
更に浩さんはホームページを通じて知り合った自閉症の子の親たちと共に地域で暮らしやすくする準備を進めました。
取り組むのは自閉症の子どもや親たちが安心して過ごせる居場所づくりです。
特別支援学校を卒業した綾麻さん。
社会との関わり方を学ぶため去年4月地域の通所施設に通い始めました。
綾麻行ってらっしゃい!この施設では仲間と一緒に過ごしたり軽作業を行ったりして社会参加ができるようになる事を目指しています。
新保綾麻さんです。
今日からよろしくお願いします。
(一同)よろしくお願いします。
(拍手)初めての人や場所が受け入れられない綾麻さん。
部屋の隅で動かなくなってしまいます。
せ〜のせっ!よいしょ!食事の時間食堂に誘いますが…。
食堂に向かう事はできませんでした。
家で帰りを出迎えた浩さん。
新しい環境に慣れない綾麻さんに心配が募ります。
う〜!しかし今は息子を信じて見守りたいと考えています。
今年の春浩さんたちは施設の運営をスタートさせました。
名前はホームページと同じ「そよ風の手紙」です。
放課後などに子どもたちが楽しく安心して過ごせる場所を提供。
少しずつ発達が促せるようきめ細かく支援を行います。
じゃあしてもいいよ。
ありがとう。
優しいねまなくん。
いいよはい。
(鳴る音)施設に通う小学3年生の竜征くんです。
発達に遅れがあります。
一緒に入りませんか?こだわりが強く好きなおもちゃを見つけると友達が遊んでいても奪おうとします。
教えないで!教えないんですか?こんにちは〜。
お帰りなさい。
こんにちは!「ありがとうございました」は?竜征くんの母親明代さんです。
どうでしたか?今日行って。
これまで友達とのトラブルが相次いでいた竜征くん。
浩さんの施設なら理解してもらえるのではと期待を寄せています。

(竜征)ドン!ドン!
(たたく音)うるさい!竜くん。
嫌!この日もかんしゃくを起こした竜征くん。
好きなおもちゃで遊ぶ事ができず感情を抑える事ができませんでした。
しかし浩さんは決して叱りません。
嫌!うん…。
嫌だ!自分で気持ちを切り替えられるまで寄り添い続けました。
やっぱり苦しいの彼らなんだなって思いますね。
施設に通うようになってから3か月。
竜征くんの行動に少しずつ変化が現れました。
1個でいい?どうぞ。
優しい!あげちゃうの?やった〜!やった〜!スタッフが見守る中遊んでいたおもちゃを友達に譲る事ができたのです。
うわ〜できたぞ〜。
(拍手)竜ちゃんすてき!怖い怖い…怖いよ。
重いな〜。
ねえ竜征くん重いんだよ。
自分の居場所を見つけた竜征くん。
その笑顔に明代さんの不安は少しずつ和らいできたといいます。
もしも〜し?もうね駄目なんです。
本当に行っちゃうんです好きで。
好きで本当に行っちゃうんです。
施設に通い始めて半年余り。
綾麻さんにも変化が現れています。
新保さんごはん。
お豆腐ですお豆腐。
お豆腐とちくわ。
食事の時間職員が声かけを繰り返し綾麻さんの気持ちが変わるのを待ちます。
新保さん!30分ほどすると綾麻さん自ら捜しに来ました。
2人で食堂に向かいます。
頂きま〜す。
うんおいしい。
ようやく食堂で食事をする事ができました。
じゃあケチャップかけます。
大好きなトマトケチャップも自分でリクエスト。
(笑い声)ケチャップケチャップ。
はいケチャップケチャップ。
ケチャップ〜!一緒に降りられるといいですけどね。
更に施設の製品を納品する仕事にも挑戦しました。
納品先に到着。
初めての場所は苦手ですが外に出る事ができました。
顔を隠す事で心を落ち着かせながらご挨拶も。
今日新保さん一緒ですので。
・どうしたの?恥ずかしいの?恥ずかしいんです。
さようなら!綾麻「さようなら」は?「さようなら」ってね。
仕事のお手伝いができるようになった綾麻さん。
この日浩さんにうれしい事がありました。
施設から手当をもらってきたのです。
300円。
お〜!7月分。
人と一緒に仕事ができた確かな証し。
綾麻くん300円。
これ分かる?浩さんは綾麻さんが社会に踏み出せた大切な一歩だと感じています。
すごいね。
これねちゃんとおとうさん取って置くからね。
そして7月。
綾麻。
(3人)乾杯!乾杯…。
そうそう乾杯乾杯!綾麻さんは二十歳の誕生日を迎えました。
おめでとう!あっ竜くん竜くん。
(竜征)お邪魔しま〜す!竜くんどうした?おめでとう!綾麻さんおめでとう!誕生日の事を聞きつけた竜征くんとお母さん。
感謝の気持ちを伝えたいとお祝いに来たのです。
(竜征)新保先生ちょっともらいます。
はい!あっ本当に!あ〜ありがとう。
ありがとうね竜征くん。
ありがとう。
・「ハッピーバースデートゥユー」・「ハッピーバースデーディア綾麻さん」・「ハッピーバースデートゥユー」
(一同)おめでとう!
(拍手)うれしい。
最高の誕生日だね。
ねえ!綾麻最高だね。
(竜征)最高だね。
最高だね!共に歩んできた父と子。
人生に何が大切なのか何が幸せなのか学び続ける20年でした。
この夜息子の綾麻さんに手紙を書きました。
「綾麻へ」。
2015/01/20(火) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「君と歩む道〜シングルファーザーと自閉症児の20年〜」[字]

川崎市の新保浩さんは、自閉症の息子をもつシングルファーザー。悩みや喜びをホームページでつづりながら、困難を乗り越え、20歳の誕生日を迎えた。心の軌跡を見つめる。

詳細情報
番組内容
川崎市の新保浩さんは、自閉症の息子をもつシングルファーザー。綾麻さんとの日々をホームページでつづりながら、男手一つで育てあげ、20歳の誕生日を迎えた。苦しさを言葉にできず、自傷行為を繰り返す綾麻さん。悩みながら育児をする思いを、ありのまま伝える。一方、初めて「バイバイ」を言った日など、成長する姿に喜びも。浩さんは、人生にとって何が大切なのかを息子から教わってきたという。20年の心の軌跡を見つめる。
出演者
【語り】兼清麻美

ジャンル :
福祉 – 障害者
福祉 – 社会福祉
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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