東京表参道の一角にあるミュージアムショップ。
といっても美術館はありません。
現代アートの殿堂MoMAことニューヨーク近代美術館が運営するお店なんです。
デザイン性に富む品々は最先端の美を知り尽くした美術館が世界各地から厳選したものです。
この秋最も注目されているのがこちらのブランケット。
実は群馬の桐生市で作られた織物なんです。
現代アートの殿堂を魅了したその訳は?世界が認めるイッピンを羽織るモデルの…ブランケットいかがですか?とても軽くて織物って聞くとちょっとゴワっとしているイメージがあるんですけど柔らかくてそしてなによりあったかいです。
すごくモダンでかわいいと思います。
でも色合いがなじみやすいというのかな。
下の地が透けてたりとか色のなじんでる感じがすごくすてきだなって思いました。
美しい柄と鮮やかな色合い。
世界を虜にするブランケットを生み出した桐生織物の秘密に迫ります。
かつて養蚕と絹織物で栄えた群馬の地に桐生市はあります。
あの世界遺産富岡製糸場とは50キロの距離です。
今も日本屈指の織物の産地で400を超える会社や工房があります。
KIKIさんブランケットを作った会社を早速訪れました。
こんにちは。
(三田)はい!どうも。
こんにちは。
こんにちは。
KIKIと言います。
よろしくお願いします。
ブランケットをデザインした三田修武さん。
三田さんの会社は布を織る機屋です。
昭和のはじめから素材や織り方の研究を重ね何万種類もの服地を作ってきました。
三田さんが開発したウールのブランケットです。
デザインや織り方を変えながら14年間毎年ニューヨーク近代美術館に選ばれ続けてきました。
これが今回のMoMAさんに出しているブランケットです。
これ本当きれいですよね。
色の組み合わせが不思議です。
あと柄と。
はい。
こういったシックななんかニューヨークのコンテンポラリーな感じのイメージの所ばかりだったんですけど。
丸と三角と四角これの組み合わせなんですね。
このモチーフって。
そこに映りがいいようにするためにはいろんなカラーを入れ始めましてこういうカラフルな色どんどん入っていくようになりまして。
きれいですね。
世界が認める柄と色合いはどんな技によって生み出されたんでしょうか?あ!これです。
さっき見せていただいた織物。
そうです。
これで今織ってます。
今まさに動いているところですね。
はい。
織物を織る織機。
タテ糸とヨコ糸で布を織り上げます。
こういう織り方っていうのは何て言うんですか?これもジャカードなんですね。
へぇ〜。
これは織機と言いますね。
このジャカード機という装置が自在に柄を作り出す優れものなんです。
ジャカード機は紋紙と呼ばれるパンチカードを読み込み織機に織り方を指示するいわば司令塔です。
そうですそうです。
これが全てですね。
あ…いっぱい穴があいててちょうどそんな感じですよね。
紋紙による指令は穴が有るか無いかでなされます。
穴が無いことは小さな点で表されています。
例えばこの部分…。
穴と点はそれぞれタテ糸一本に対応しています。
穴が有るとタテ糸が上がりできた隙間をヨコ糸が通って柄を作っていきます。
今回のブランケットの紋紙を特別に広げてもらいました。
どんどん伸びていきます。
よく見ると紋紙に柄が写し取られている事が分かります。
実はこの紋紙は8メートルもあります。
これで織ることができるのは柄一列分だけ。
1枚のブランケットを織り上げるには全部で180メートルも紋紙が必要なんです。
三田さんがこのブランケットで最も心を砕いたのは柄の色合いでした。
今までの織物って例えばこれにしても混ざってますでしょ。
色が。
はい。
ダイレクトに出ている部分もあるけどちょっとしかないですよね。
ところがこれって糸本来の色がダイレクトに出てダイレクトに出て。
タテ糸とヨコ糸を交互に交差させるためタテとヨコ両方の糸の色が表に出ます。
しかしこのブランケットでは特別な織り方をしました。
タテ糸を浮かせたまま織ることでタテ糸の色だけを表に出そうとしたのです。
更にもうひとつ工夫があります。
浮いた糸の下で黒い糸が動いているのが分かりますか?実は三田さんは浮いて柄となる糸と地の部分となる黒い糸を交互に置いて柄と地を同時に織っているのです。
こうすることで黒の地に鮮やかな図柄を浮かび上がらせていました。
これなんか指が通るというか…不思議。
しかしこのままでは浮いた糸が引っかかりやすく製品にはなりません。
さらなる工夫が必要でした。
こんにちは。
お世話になります。
すみません。
お願いします。
三田さんは強力な助っとの力を借りることにしました。
それが澤利一さん。
ニードルパンチという針を使った特殊な加工技術の持ち主です。
ニードルパンチの針にはギザギザの凹凸が付いています。
この針をすばやく何度も打ち込むと繊維が絡み接着剤や縫製なしに生地が密着するのです。
澤さんはこの技を駆使してウールとレースを合わせて新しい生地を作ったりゼリー状の素材を挟んでみたりと旺盛な実験精神を発揮してきました。
三田さんは澤さんなら浮いた糸を定着できるのではと期待したのです。
このニードルパンチの澤さんの加工ありきで作ったものなんでこんな未完成な極みの織物ないですよ。
ところが澤さんにとっても三田さんの注文に応えることは至難の技でした。
面積のある生地に比べ細い糸を一本残らず定着させるためにはより多くの回数針を打ち込まなければなりません。
しかし針を打ち込み過ぎてしまうと適正な回数のものと比べてみました。
見た目はそんなに変わりませんが…。
僅かに力を加えただけでこのとおり。
針を打ち過ぎたことで傷んで弱くなっていました。
糸がズレやすいこと。
生地にシワが寄りやすいことも課題でした。
どうしてもねそこがちょっと弱いんですよねここが。
澤さんは針を打ち込む回数や生地を送り込むスピードを微妙に調整しました。
また針を打ち込む深さも0.1ミリ単位で設定を変えます。
(始動する音)こうして生地の強度を弱めずに糸を定着させる最適なポイントを探り当てたのです。
ニードルパンチによって浮いていた糸はこのとおり!見事に定着しました。
ついに澤さんは三田さんの願いをかなえたのです。
後工程で「ニードルパンチ」というものを踏まえての生地作りをしてくれる機屋さんってたぶん日本中の機屋さんの中でも三田さんくらいかなっていう感じはします。
ねえ。
これで完成!と思ったら三田さんには大事な仕上げ作業が残っていました。
ニードルパンチを終えたブランケットをなんと洗濯機に!ウールが縮むことを計算に入れ水温を確かめながらおよそ10分間洗います。
その後風通しの良い場所で自然乾燥。
これがさっき洗ってた…。
これやっぱり違いますね。
はい。
こっちにも毛羽出たでしょ。
うん。
柔らかい感じになった。
なんか柔らかさも変わりましたね。
はい。
洗うことで表面を毛羽立たせ全体に柔らかな風合いを加えたのです。
最後に裁断してブランケットは完成します。
様々な技術が込められたブランケット。
織物の町桐生だからこそ生まれたイッピンです。
天下分け目の「関ヶ原の戦い」。
桐生の名が天下にとどろいたのもこの時でした。
桐生の職人は徳川家康のために5千反近い旗用の絹地を1日で織り上げたのです。
その後幕府の手厚い保護を受け「西の西陣東の桐生」とうたわれるほど繁栄しました。
明治に入るとさらなる飛躍をとげます。
桐生の町に響く織機の音。
(織機の音)フランスで開発されたジャカード織機。
明治のはじめにいち早く導入したのです。
それまで6人で行っていた作業が1人で出来るようになり生産性が向上しました。
以来複雑な柄を織るさまざまな技術が桐生で発展することになったのです。
今桐生ではどんなものが作られているのか。
桐生の織物が一堂に会する記念館を訪ねました。
美しい柄を生かした小物の中でKIKIさんの目に留まったものは…。
あっ…。
これはブックカバーかな。
日本画が細かい織物になってる。
葛飾北斎の描いた有名な富士山。
プリントではなく織物です。
歴史上の名画を織物で再現する「絵画織」という独特の技法によるもの。
その秘密を探ります。
こんにちは!・はい。
絵画織を開発した会社を訪ねました。
よろしくお願いします。
今ちょうど富岡製糸場…。
父親の代から絵画を織る技を追求してきました。
富岡製糸場の錦絵が図案がございましてこれを今織ろうとこの120センチ幅で織っていこうとして。
ここに出てきてる!そうですええ。
今織っているのは明治時代に描かれた富岡製糸場の錦絵です。
世界遺産登録の記念品として製糸場から依頼されました。
錦絵ならではの鮮やかな色合いが見事に再現されています。
特注のジャカード織機は12,000本もあるタテ糸を別々に動かすことができます。
そこに12色のヨコ糸を組み合わせて絵を織り上げるのです。
その技を駆使して作った自慢のイッピン。
わ〜すごい!これも先ほどの織機で織った…。
これ織物ですか?ええ。
ジャカード織物になりますね。
へぇ〜。
絵みたいです。
原画は江戸時代の天才絵師俵屋宗達の傑作です。
史上最も闊達と評される筆遣いを織物で表現する事に挑みました。
風神様雷神様の肉感ですよね腕なんかの盛り上がり方。
その辺を濃淡をつけることによってより宗達の筆のタッチに近づいておりますね。
へぇ〜。
タテとヨコだけで表現しているとは思えない細かさ。
この織物で重要な役割を果たした前田寿美恵さん。
タテ糸とヨコ糸をいかに組み合わせて再現していくのか。
その設計図づくりを担当しました。
見せてくれたのは設計の基本となる色見本。
一色のヨコ糸がありますよね。
はい。
タテ糸のおさえ方の密度をどんどん足していくことでどんどん白っぽく織ることができます。
これを拡大鏡で見て頂くともっとよく分かると思うんですけど。
あすごい細かいのがちゃんと見える。
え〜。
一見絵の具で描いたかのような濃淡の変化ですが拡大してみると確かにタテ糸とヨコ糸で織られていることが分かります。
最も濃い所は青いヨコ糸に白いタテ糸の点が1つ。
そして白い点が2つ3つと増えていくごとに青は淡くなり白に近づいていきます。
タテ糸とヨコ糸の組み合わせによって120通りもの濃淡さまざまな色を織物で作りだすことができます。
前田さんはこの120色を使って設計図を作りました。
微妙に濃淡が異なる色のどれを選択しどう配置すれば天才の筆遣いに近づけるか細部と全体のバランスを見ながら何度も修正を重ねました。
こうして3か月の後幅2メートルの作品が完成したのです。
織物というとどうしても限られた糸表現になってしまいますので織り上がったものを見た時に「あれ?」って思われないような箇所を作らないように。
緻密な色の計算から生まれた究極の織物です。
明るく軽やか。
柔らかな質感のネックレスが胸元をふんわりと飾ります。
実はこれ刺繍の技術から生まれたんです。
桐生では刺繍も盛んに行われてきました。
大正時代に導入された刺繍専門のミシン。
縫い幅を自在に変えられるようになり複雑な表現が可能になりました。
桐生で作られた婚礼衣装です。
刺繍ならではの立体感が華やかさを演出しています。
この刺繍からどうやってネックレスが生まれたんでしょうか?訪れたのは50年以上続く刺繍の会社です。
早速見つけました。
完成品がこちらになります。
すごい。
見せていただいてもいいですか?はい。
すごい!ビーズとかよりも軽いですね。
そうですね。
かわいらしい。
刺繍のネックレス。
しなやかな糸の特性を生かしたデザイン。
糸の重なりが作る優しいふくらみが人気です。
ネックレスを開発した片倉洋一さん。
ロンドンでデザイナーとして活躍していましたが10年前桐生の技術に魅せられ入社しました。
世界に向けて何か発信できるものづくりって考えた時にお客さんが選んだ生地に刺繍するっていう以外のことをしないと世界に向けてっていうのが難しいなぁと思ってまして。
新しいアイデアを持ち込めばかなりの可能性があるのかなというのは感じました。
ネックレス作りの様子を見てみましょう。
ミシンの下に潜り込んだ職人がセットしているのが下糸。
上にはもちろん上糸。
下地となる布に縫い付けて玉を作っていきます。
布の上下で同時に同じ形を作っていたんです。
下地の布はなんと後で溶かして外してしまうんだそうです。
テンションが変わってしまうと形がきれいに丸くならなかったり。
昔ミシン使ってどっちかが強いと切れてしまったりとかこのミシンでもそうなんですか。
はいそうですね。
なのでそこで…。
調整しながら…。
そうなんだ。
玉の中には芯があるわけではありません。
糸を何度も何度も縫い重ねる事で球体にしていきます。
その厚さは5ミリに達します。
この球体を作る針の動きがネックレス作りのポイント。
針の動きはコンピュータで制御されています。
白い点は針の落ちる場所。
赤い線は針の動きを示しています。
直径10ミリほどの円の中に1,000回も針を落とさなければなりません。
きれいな球体を作るために針の位置を0.1ミリ単位で細やかにずらしていました。
精密な針の動きが刺繍を立体そのものへと変えていたんです。
お客さんが手に取った時に何だろうこれ面白いねっていうかそういう驚きというか遊び心があって何だろうってつい触りたくなるような商品をやっぱり心がけて作っていきたいなぁと思ってます。
まだ誰も見たこともないものを桐生で。
その思いが生み出した全く新しいネックレスです。
糸だけでどこまでも表したい。
色と柄を自在に操ろうとする桐生の人々の試みに終わりはありません。
2015/01/18(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「華麗に織りなす色と柄〜群馬 桐生織物〜」[字]
絶妙な配色とハイセンスな柄で、世界が絶賛するブランケット、天才絵師の筆遣いまで再現する驚異の織物、話題の“刺しゅうネックレス”など華麗なる桐生織物の世界を探る。
詳細情報
番組内容
絶妙な配色とハイセンスな柄で世界が憧れるブランケットは、日本有数の織物産地・群馬県桐生市で作られた桐生織物。世界中からグッズを選び抜くという美の殿堂・ニューヨーク近代美術館のショップに、14年にもわたって並ぶイッピンは、どのように作られたのか?また北斎や宗達の絵画を織物で再現する究極の織りの技とは?さらに最近話題のおしゃれな刺しゅうのネックレスなど、華麗な桐生織物の世界をモデルのKIKIさんが探る
出演者
【リポーター】KIKI,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:17629(0x44DD)