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2015-01-27 再考・ケインズ経済学と量的緩和拡大 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

現在のアベノミクスでは、日銀が量的質的緩和で大量のマネーを金融機関に供給する一方、政府部門では財政再建を目指して緊縮財政を続けています。
この選択は正しいのか、ケインズ経済学モデルを改良した簡単なモデルを使って考えてみました。


中央銀行にしても、市中金融機関にしても、単に額面が同額の資産に対してマネーを創造するのですから、物価によらず、マネー創造機能はいつも同様に保持しています。*1

そこで仮に、これら金融機関にあるマネタリーベース(MB)・マネーサプライ(MS)をマネーの池にたとえましょう。(図1)  この図では、水面からの高さはマネー価値(の変化率≡マイナス物価:−p)を表します。*2
マネー価値によらず、中央銀行・市中金融機関同士の資金のやりとりは殆どコストがかかりませんので、金融機関では、マネー価値(の変化率:-p)は常にゼロです。(図1左側)
これをマネー流出・流入の基準・0レベルとしましょう。 *3

企業・家計の場合、物価pが負であれば、マネー価値(-p)が正となり、マネー池の水は外にでることができません(図1右側;いわゆる流動性の罠)。 逆に、民間は次第に高まるマネー価値から、債務返済に動くので、放っておけば陸側から池に向かってマネーが流れ込みます。 *4

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図1 デフレ状態での「マネーの池」モデル
デフレ物価pが負ならば、マネー価値(-p)は正になっている。
これは陸地(民間)が池の水面より高い状態に相当する。
この状態では自然な水の流れは陸地(民間)→金融機関(池)となる。

黒田日銀では50兆円レベルで長期国債を買い入れるなどにより、毎年80兆円、マネタリーベースを拡大するいう、追加金融緩和策を打ち出しています。 この黒田日銀の追加金融緩和策をマネーの池モデルで表せば図2のようになります。

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図2 デフレ下の日銀量的質的緩和策
デフレ(p<0)が解消していないため、マネー池の面積を増やしても、
レベル0は上下に変えられない以上、池(金融機関)から陸(民間)へマネーを流すことは不可能

図2でひと目で分かるように、量的緩和を進めて、マネタリーベースをいくら拡大しても、マネー価値(−p)を下げないことには、銀行の日銀当座預金(準備預金)が増えても、民間を巡るマネーの量は増えません。

■どうすれば物価は上がるのか
日銀は銀行の銀行であると同時に、政府の銀行でもあります。
もし政府国債を財源に十分な規模で財政政策を行なえば、どうなるでしょう。

これを考えるために第二のモデル(改良消費関数)を考えます。
ケインズは需要(D)は消費(C1)と投資(C2)に振り分けられると考えました。
D=C1+C2

所得(Y)と消費(C)の関係について、ケインズは所得がなくても必要な消費Co(基礎消費)があり、残りが所得Yと消費性向cで決まると考えました。
ケインズの消費関数 C=Co+cY

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図3 ケインズの消費関数
C:消費、Co:基礎消費、Y:所得

しかしない袖は振れません。

現実にはまず所得(Y)ありきであり、そこから必要なだけ消費され、残りが貯蓄に回されるというのが実際的でしょう。
そこで、今現実と、無数のパラレルワールドがあると考え、条件として唯一所得(Y)だけが0から∞まで違っている、としましょう。そうすると 正しい消費関数はこんな形ではないでしょうか。
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図4 改良消費関数
無数のパラレルワールドに所得(Y)だけ、違う値を与えるとすると、このような消費関数が描ける。Yoは物価を上げない最適な名目所得。*5
場合分けをするなら、

  1. 所得Yがゼロなら、自給自足する以外にはなく、消費Co=0となる。貨幣経済は消失する。
  2. 所得Y<最適水準Yoなら、生産財に余剰が発生しデフレギャップが生まれる。 
  3. 所得Yがちょうどすべての生産財を使う水準(最適名目所得Yo)であれば、完全雇用も達成され、インフレも生じない。
  4. 所得Yが生産財で生産できる水準を超え、Y>Yoとなればもはや価格を上げるしかなくなり高インフレとなる。

 1998年以降の日本はGDPデフレーターが負になり、デフレギャップが発生していますから、上の場合分けでは2.に相当するでしょう。

政府は、銀行とは異なり、マネー価値の壁(図1)とは関係なく国債を発行しておカネを借り入れ、財政政策により民間にマネーを撒くことができます。
財政政策によりマネーを撒いた場合の、マネーの池モデルは図5のようになるでしょう。
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図5 十分な財政政策後のマネーの池モデル
十分な財政政策を行なえば、デフレでも名目所得(Y)に比例して消費が増え、増えた消費が物価pを引き上げる。
するとマネーの価値(−p)は負となり、池(金融機関)から陸(民間)へと自然にマネーが溢れ出す。

この再考・ケインズ経済学の考えが正しいとすれば、財政政策バランス上、現在のデフレ日本に必要なのは財政政策がメインであり、量的緩和の拡大は将来のデフレ脱却時に、不必要なバブル発生の温床になるだけの存在、ということになるのですが、皆様のご意見はいかがでしょう。

*1:担保が毀損した市中金融機関信用創造に支障がありますが、ここでは議論から外します。

*2物価(p)に対してマネー価値がマイナスpとなるのは、物価水準がA→A+ΔAとなる時、一定量の財に対するマネー価値の水準は1/A→1/(A+ΔA)と変化します。
 p≡ΔA/Aですから、 
 ΔA≡p・A=1/(1+p)・A つまりマネー価値変化率を物価変化率pで示せば 1/(1+p)となります。1に対してpが十分小さい時、
1/(1+p)≒1-p で、マネー価値変化率は-pで示せます。

*3:正しい物価指標ならば物価pがゼロで池と陸地のレベルは等しくなるはずですが、消費者物価指数CPIデフレで特に上方バイアスがあるため、CPI=2%位がp=−p=0に相当するでしょう。

*4日銀資金循環統計では、98年にデフレ化して以降、企業は債務を継続して返済して資金需要が負になっていることが確認できます。

*5:ここで言う物価とは理想の歪のない物価。上方バイアスがあるCPIで敢えて測ればCPI=2%程度。

ななみのゆうななみのゆう 2015/01/27 18:23 デフレだから、お金が流れない。
つまり、消費性向が上昇しないというお考えに沿ったモデルかと思いますがいかがでしょう。

そうではなく、
日本経済がデフレを継続している理由は、日本国全体として、お金が大量に消失したためと捉えられませんか?

まずバブル崩壊でお金が大量に消失し、経済の要である日本の企業群がBSを大きく毀損してしまった。
それを一般国民は、いい気味だと思ったかもしれない。
そして自分達、資産を持たない一般国民の生活には無関係だと思っていた。
しかし、企業が倒産し出せば職を奪われるのは当然の帰結。
しかも税収が減る状態になったのだから政府は税収確保のため消費増税をし、財源を確保する。
それは企業増税で更に倒産を招き、税収減を招きたくないからでしょう。
また分配制度をいじって企業保護も始めた。
それが派遣法。
結局、一般庶民にバブル崩壊の影響は回ってきたのです。

ヒトを呪わば穴二つ。
これは、日本国民自身の業が招いた長期不況だと、いうのはいいすぎでしょうか?

shavetail1shavetail1 2015/01/27 19:22 ここで考えていますのは、名目GDP(Y)は政府が自由に決められるというものです。
政府の予算はよく税収+債務といわれますが、実際は税収+債務+通貨発行益ですね。
従って日本のように他国と実質GDP伸び率に大差がないのに、名目GDPの伸び率が著しく低いということは、政府支出が他国より著しく低い(最近のギリシャは除く)ということでしょう。

日本が記事に書いたように2.にあるのなら、政府は丹羽春喜先生の指摘するように政府紙幣発行権を活用するなりなんなりして、通貨発行益を財源に政府支出を大幅に増やし、国民に配布すべきでしょう。 ご指摘のようにお金が大量に消失した、という言い方でいえば、政府が自らの意思でそうしている、と言えるでしょう。

ななみのゆうななみのゆう 2015/01/27 21:06 政府紙幣も債務だと思うのです。(政府紙幣=決済能のある無利子国債)
だとしたら、「政府収入=税収+負債」でもいい。

そして、信用創造機能より、
政府債務増加額(徴税率−国債表面利子率)=政府財政余裕増加額、なのですから
政府債務の増加額をいまの財務省やマスメデアのように、無闇に怖がらなくていい。

要は、政府負債を危険視しすぎて、
自ら日本経済の首を絞めている。

だから結果論からいえば、
日本国民は感情的に政府負債の大きさの恐怖感のために自分の首を絞めているという愚民民族といえます、w。
レミング伝説のような集団自殺に、巻き込まないでほしい。
http://www.skept.org/yota/lemming.html

もちろん、shavetail1さまのことではありません。

菅原菅原 2015/01/28 05:58 少なくとも IS-LM(MPでも可)と、流動性の罠に基づかないと、話にならない。

政府予算も毎年拡張しっぱなし。

ケインズとあとから普及したケインズ経済学は、別物。

潜在GDPの範囲内の話、政府支出がGDP増が可能だとしても。

どうしたら経済成長できるかなど、答えはだれにもわからない。

shavetail1shavetail1 2015/01/28 08:21 IS-LMモデルの関心事は縦軸が実質金利であるように、金利は考えても、貨幣そのものには無関心です。というか貨幣あるいは金融を取り込んだマクロ経済モデルはまだ発展していないのでは?

実質金利だけでは企業行動に変化を起こせないことは、黒田日銀のQQEによっても、資金循環統計で、2013年度も企業の資金余剰がそれ以前と同等であったことからも確認できます。
資本収益率(r)の長期平均は5%と言われる中、実質金利(i)を1%程度下げても本質的に何も変えられませんでした。

ということは、企業行動がそれほど実質金利だけを重視していないならば、IS-LMはマクロ経済分析ツールとして不完全と言わざるをえないのでは?

さてそこで、
ここでは現代中国などを念頭に、政府は名目GDPは自由に決めうると考えています。 (中国は2000年以降もリーマンショック最中も含め安定的に名目GDP10%以上を達成しています;因みに2009年の米国名目GDPはマイナス成長でした)
その理由は、政府部門の主な予算は通常 税収+負債(国債)などとされていますが、実際には税収+負債+通貨発行益ですね。
日本の場合税収を増やすことだけを目的に経済政策が組まれることで逆に 政府債務対名目GDP比の急増を招いています。

この比を下げるのに最も有効なのは政府部門の債務ではない貨幣、政府紙幣ですが、そこまでやらずとも現在なら日銀が大量に国債を買い、国債が市場で枯渇しかかっていますから通常の赤字国債を供給すれば、長期金利の安定化を図りつつ、名目GDPを増大できます。名目GDPが2.の領域では、名目GDPを増やした分だけ実質GDPが増えるでしょう。 ドイツのように日本と近い国々との比較で、この20年間に名目GDPが正常の60%しか伸びていないとすれば、物価が上がり過ぎない範囲で中期的に名目GDP800兆円程度を目指すようにすれば、短期で名目GDP800兆円実質でも700兆円といった健全な姿にできると思います。