ぐるりみち。

日々日々、めぐって、遠まわり。

平成っ子が昭和レトロの世界に迷い込む(本格珈琲昭和@池袋)

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 雰囲気の素敵な喫茶店は、それだけで何度も足を運びたくなるもの。

 

 ふかふかのソファが置いてあるとか、カウンターに古書が並べられているとか、薄暗い中でジャズが流れているとか。そこでコーヒーの味を解することのできる舌を持っていればなお良いのだろうけれど、そこまで通ではございませぬ。それでも、美味しいと感じれたときに感想を口に出す素直さは持ち合わせていたい。うまいもんは、うまいねん。

 

 此度訪れたのは、池袋のレトロな喫茶店。先日読んだ『コーヒーもう一杯』の物語中に出てきそうな雰囲気で、ゆったりとした時間を過ごしました。時計の秒針の音って、良いよね。

 

 

西口公園の、裏っかわにて

 ふしぎなふしぎないけぶくろ、その西口公園と、道を挟んで向こう側。道を一本入ったところに、その空間への入り口は、ぽっかりと空いておりました。

  

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 いやぁ、もう、入り口からしてたまりませんね。ビンビン来てますね。木製の立て看板にメニュー表。“軽食も多数ご用意しております”の文字。単調な「おしながき」ではない、店主さんからの「声掛け」的な文言にはホイホイ着いて行きかねないたちなのです。ここは、ホイホイと釣られようじゃありませんか。

 

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 ――と、地下に下りる階段を覗きこんでみれば、これまたドキッとする風体でございます。階段の両脇に多数かけられているのは、いずれも時計。まるで、訪れた人をこれから昭和の世界へ誘わんとするような演出にも見えます。しかも、その時計もすべてまったく違うもの。あらやだ、すてき。もっと良く観察すれば良かった。

 

 下り立った先の扉を開けて、いざ、おじゃまいたします。

 

時計と、カメラと、東京タワーと

 中に入ってみると、思ったよりも明るく、暗さを感じさせない暖かな雰囲気の店内。「木」の茶色を基調とした内装になっており、カウンター席、テーブル席、さらにはソファー席まで備わっておりました。これはこれは、まったり長居できそうでござる。

 壁面を彩るのは、日本画や古めかしいパンフレット。視線をその反対、カウンター側に移すと、デデンと鎮座する大きな東京タワーの置物が目に入る。こいつ……光るぞ!その上部にも物を乗せられる空間があり、ダルマや謎の置物、年季物の中古カメラなど、全体的にレトロ感漂う内装でございます。ところどころに貼ってある手書きの紙(「ドリンクのおかわりは半額です」)や、シックな看板のメニュー表ほか(「コーヒー豆挽き売りいたします」)などもまた、お店の雰囲気づくりに一役買ってます。

 

 入店したのは、ちょうどお昼の12時をまわったかどうかというタイミング。近くのラーメン屋さんなどでは行列もできていたし、さぞかし混雑しているのだろう……と思いきや、他にお客さんは誰もいませんでした。まさかの展開。自分としては珍しい状況だ。

 若い女性の店員さん(かわいい!!)に「お好きな席へどうぞ」と勧められ、まったりできそうなソファー席……を一人で占拠するのも腰が引けたので、カウンター席の一番奥へ。店内を一望できるポイントでもあり、我ながらナイスな選択でござった。ふふふ。

 

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 席に着いたところで、お水と一緒にメニューを持ってきていただきました。コーヒーだけでも結構なページ数があり、ケーキや軽食の軽食・セットメニューも合わせて、思わず目移りしてしまう。冒頭にも書いたとおり、僕は味のわからぬ男なのです。平成生まれのゆとりっ子なのです……。

 普段なら迷わずブレンドを選ぶところが、まさかの「sold out」の文字。コーヒー豆には並々ならぬこだわりがあるらしく、ないときはない!とのこと。ならばよし、コロンビアや!と謎の一大決心をして、ついでにお昼も食べていこうと「ハンバーグサンド」をセットで注文。“ハンバーガー”ではない、“ハンバーグサンド”を食べるなんていつ以来だろうか……ってか、はじめて?

 

どこか懐かしいコーヒーと、ホカホカのハンバーグ

 注文して、先日以来のゴローちゃん気分を味わいつつ店内をきょろきょろしていると、カウンターの向こうから、ごりごりと心地の良い音が。懐かしい。この手の本格的な喫茶店に来て、しかもカウンター席に座って、さらに店内の音がすべて聞き取れるくらいに静かな状態になるなんてことはもうずっとなかったので、コーヒー豆を挽く音すらも久しぶりなのです。昔は母親が家でごりごりやってたので、僕もそれを好き好んでぐるぐる、ごりごりやってたな――と感慨に浸ってしまうレベルでした。あ、でもちょっと前にもこの音、聞いてたわ。某こころがぴょんぴょんするアニメで。

 

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 すぐに出てきたコーヒー。「お食事の方はもう少々お待ちください」と声をかけつつ、所作と物腰が非常に丁寧な店員さん。逆に申し訳なさを覚えるくらい。

 

 さて、味のわからぬ僕はコーヒーを飲んだ感想を書く語彙など持ちあわせていない、……はずだったのですが、ほんのちょいとだけミルクを入れて、ちょちょいと優しくかき混ぜてスプーンを置いて、一口ごくり、と飲んだ瞬間、自然と一瞬でひとつの感想が心を駆け抜けたのでありました。

 

 「(あ、これ、生まれてはじめてばーちゃんちで飲んだコーヒーだ)」

 

 もちろん、そんなはずはないのだけれど、カップからふんわり立ち昇る香りと、お店のどこか古めかしく懐かしい雰囲気と、初めてコーヒーを飲んだときの「飲みやすいように、ちょっとだけ牛乳を入れてあげようねぇ(byばーちゃん)」の割合がたまたまヒットしたのか、なんか自然にふっとわいて出た。これやで。今はもうない、足立の一軒家で7歳の頃に初めて口にした味っぽい。

 

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 そんなこんなで、ほえーっとコーヒーを飲んでいると、いつの間にやら料理が来てた。ハンバーグサンド。触れてみると、ほんのり温かいトーストに、ハンバーグとレタスを挟んだだけの、シンプルなサンドイッチ。すっかり忘れてたけど、お腹も空いてきたので、いただきまーす。

 

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 うまい! \テーレッテレー/

 

 まったくパサパサ&ボソボソしない、しっとりアツアツお肉に、ホカホカのトーストがジャストミート(ちょうど肉)。他にはマヨネーズを塗って、レタスを挟んだだけという本気のシンプルさ。いやいや、でもこれで充分っすよ。主役のハンバーグさんが圧倒的に美味なので。

 

 しばらく一人で夢中になってもぐもぐしていると、ちらほらと他のお客さんの姿が。ほとんどが背広姿のサラリーマン風で、注文もコーヒーのみ。おそらく、お昼休みにちょっと立ち寄った形でしょうか。カップルも一組いらっしゃりましたが、やはりドリンクのみで小休止のために入ってきたように見受けられた。……なんか一人でカウンター席でもぐもぐしていて、場違い感ががががが。助けて!ゴローちゃん!

 

 食事を終えた後も、店内が混雑するような気配はなかったので、しばらくまったりと過ごさせていただくことに。この後の打ち合わせ用にメモを取りつつ、スマホでIngressを覗いてみたり。あ、また色変わった。西口公園は激戦区っすね。

 

 そうして静かな環境で過ごす中で、たまにふっとひと心地ついたときには、自然と耳から入ってくる情報に意識が向くものでありまして。カウンターの奥で店員さんが洗い物をする音だとか、背広のおじさんが新聞をめくる音だとか。

 そんな中でもうひとつ気になったのが、時計の音。入り口の階段もそうだけど、店内にも複数の時計が壁にかけられているため、秒針を刻む音が嫌でも耳に入ってくるのです。僕はこの時計の音が嫌いじゃなく、むしろ好きなので、こういう静けさの中の環境音もいいよなあ……と和んでいたのですが。ふと気づいた。

 

 あら?やたらと店内に時計が多い割に、秒針の音がひとつ分しか聞こえないぞ?

 

 不思議に思って壁の時計を見回し、見比べてみたら、謎が解けた。この大量の時計、動いているのは、ひとつだけだ……!それどころか、針の指し示す時間もばらばらだし。明らかに意図的ですね。

 

 最後にそんな、ちょっとした驚きを味わいつつ、お会計をしてその日は退店しました。出るときに割引券をいただいたので、次はおやつ時にでもおじゃましようと思います。ごちそうさまでした!

 

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本格珈琲 昭和 - 池袋/コーヒー専門店 [食べログ]

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