ダットサン「ゴー・プラス」の検品(インドネシア・プルワカルタ) Reuters

 【ニューデリー】日産自動車は昨年3月にインドで「ダットサン・ゴー」を発売し、ダットサンを新興国向けブランドとして鳴り物入りで復活させた。しかし、インドでも他国でも、ダットサンの販売は予想を大きく下回っている。

 インドで低価格車の人気が最も高いのは農村部だが、日産はダットサン・ディーラー網の構築に腐心している。一方で都市部の消費者は、日産車から余分な装備を取り除いた車とみられているダットサンには大して関心を示していない。

 同社は昨年5月には、インドネシアでダットサン・ブランドのミニバン「ゴー・プラス」を、9月にはロシアでセダンを、さらに10月には南アフリカでハッチバックの販売を開始した。

 インドネシア日産の広報担当者によれば、昨年下半期のダットサンの月間販売台数は約2500台で、同社の目標だった4000台強を下回っている。

 業界アナリストによると、インドでもインドネシアでもダットサン・ブランドは知名度が低く、広範な販売・サービス網もない。インドでは専用ショールームの開設が遅れており、ダットサン専用のショールームは現在約15カ所。残りは日産のショールームに併設されている。

 ロシアでの販売は、原油価格下落とウクライナ内戦絡みの経済制裁を受けた景気悪化とぶつかり、低迷を余儀なくされている。日産幹部によれば、ロシアと南アでのダットサン販売台数は合計で約1万3000台にとどまっている。

 新興市場でなかなか受け入れられないでいるのは日産だけではない。フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)、フィアットなども、インド市場で苦戦を強いられている。

上:低価格3車種の2014年月間平均販売台数(左からマルチスズキ「アルト」、ヒュンダイ「イオン」、日産「ダットサン・ゴー」)、下:インド市場シェアのメーカー別内訳(2014年4月~12月)

 日産は、輸出車用モデルだったダットサン・ブランドを1980年代に廃止し、輸出車すべてを日産ブランドに切り替えた。しかし、ゴーン最高経営責任者(CEO)が2012年、北米など成熟市場への依存度を低減させる戦略の一環として、ダットサンを復活させると発表。13年にはインドでの日産のシェアについて、ダットサン・ブランドにより16年3月末には10%を占めるだろうと述べた。これに対し、現在のシェアは2%弱だ。

 日産は、ダットサン・ブランドの小型車の導入により、競合他社を追い抜けると期待していた。ダットサン・ゴーのインド市場価格は約5300ドル(約62万円)前後で、日産の最廉価車を25%下回っている。

 しかし、ダットサン・ゴーはインドでの発売10カ月間の月間販売台数が1500台弱と、一部アナリストが予想していた5000台を大きく下回っている。インドのベストセラーカーはマルチ・スズキのハッチバック「アルト」で、昨年の月間販売台数は約2万2000台だった。

 日産幹部やアナリストは、インドでダットサンの売れ行きがさえない原因として、ディーラー・サービス網が限定されていることを挙げる。ディーラーは約160カ所にとどまっており、マルチ・スズキの1500カ所超とは大きな開きがある。

 このためダットサンは、販売網を16年までに倍増するとともに、もっと多くの新車を導入し、広告に力を入れる方針だ。日産は、拡大のための予算を明らかにすることを控えた。

 日産インド部門を率いるアルン・マルホトラ氏は「事態は改善されると確信している。ブランドを立ち上げてからまだ10カ月足らずしかたっていない」と述べた。

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