山口敏夫元労相の名を久しぶりに聞いたのは、ゴールデンウィークの直前だった。
伊豆の観光スポットとして知られる伊豆シャボテン公園、伊豆ぐらんばる公園、伊豆海洋公園などを運営する株式会社サボテンパークアンドリゾートで、社長然として振る舞い、自宅も伊豆に求めたーーという情報である。
山口氏といえば、「政界の牛若丸」の異名を取り、政局の節目で活躍しながら、バブル紳士の故・高橋治則氏が主導した「二信組事件」で逮捕起訴。実刑判決を受けて服役し、昨年10月に仮出所したばかりである。
わずか半年で、それなりの居場所を確保したのが事実なら、いかにも達者な山口氏らしい。リゾート会社の経営と山口氏は、直には結び付きにくい。イメージ優先の客商売ゆえ、表にも出にくかろう。
まずは真偽を確認するために現地に向かった。今年のゴールデンウィークは、全国的に天候に恵まれ、行楽地は活況を呈していたが、伊豆の三公園も例外ではなく、公園内には家族連れが溢れ、駐車場待ちの長蛇の列ができていた。
社員総出で観光客の対応に追われていたが、その中には山口氏の姿はなかった。では冒頭の情報のように、その後ろで"社長然"としてふるまっているかというと、それは誤報に近かった。
通常は本社勤務だという管理職が、グッズ販売の手を休めずに首を傾げた。
「山口先生は、確かに本社(伊東市)に来られることはあります。でも1ヵ月に一度ぐらいのペースです。業績のざっとした報告はしますが、経営にタッチするなんてことはありません」
サボテンパークアンドリゾートの親会社はジャスダックに上場するオメガプロジェクト・ホールディングス。2005年7月に急死するまで、同社の経営に深く関与していたのが高橋治則氏だった。
その後は、高橋氏の右腕の横濱豊行氏が会長として実権を握っていた。昨年11月、横濱氏はグループ企業のユニオンホールディングスを舞台にした株価操縦事件を引き起こして逮捕起訴され、会長を退任。オメガ社の経営は、非常に不安定な状態が続いていた。
オメガ社の関係者が事情を説明する。
「ユニオンもオメガも、証券界では増資による資本調達で生き延びる『ゾンビ企業』として知られていた。その工作を担っていたのが高橋であり横濱だった。でも、高橋が亡くなり、横濱の逮捕で"柱"がなくなって内紛状態となった。
具体的には、高橋のスポンサーで投資家の瀬川重雄、会長は退いたものの引き続き影響力を行使したい横濱、横濱の傀儡ではあったが、事件化で主導権を発揮する立場となった近藤宣彰社長の三者が争いを始めた。
とはいえ元ロックバンドのベーシストで30代後半の近藤には海千山千の瀬川や横濱との戦いは荷が重い。その助っ人を買って出たのが山口敏夫だった」
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