「コーヒーを作る」ことを「コーヒーをいれる」とも言いますね。 この「いれる」に該当する漢字は、どれが適当だと思いますか? 入れる? 淹れる? それとも、煎れる? もともと日本茶の文化を持つ我が国では、お茶の作り方によって「いれ る」という言葉に漢字を当てはめてきました。 今日は、コーヒーに使う場合どれが一番適当かを考えてみたいと思いま す。 (1)「煎れる」の意味 「煎」という語は、「薬草を煎(せん)じる」という用法に見られるように、 お茶の葉を、火にかけ沸騰させたお湯の中に入れ、煮出してお茶を 作ることを言います。 もしこれをコーヒーに当てはめるなら、パーコレータやターキッシュコ ーヒーの抽出過程が似ていますね。 (2)「淹れる」の意味 「淹」という語は、現在普通に行われているように、火から降ろしたお 湯で、急須に入れた茶葉を浸してお茶を作ることを指します。 これをコーヒーに当てはめるとプレス式が近いですが、広義ではドリッ プ式でも大丈夫そうですね。 (3)「入れる」の意味 上記の「淹れる」と「煎れる」の両方の意味を兼ね備えているのが、 「入れる」になります。 「入れる」はコーヒーを「作る」の意味だけでなく、カップに「注ぐ」 という意味でも使われますので、一番無難な表現だと言えるでしょう。 ちなみに「淹れる」と「煎れる」は、常用漢字(※)ではありません。 つまり「入れる」だけが、義務教育課程で学習する漢字ということにな ります。 常用漢字とは、個々人の漢字の使用を制限するものではありません。 しかし、不特定多数の人を対象にした情報の場合は、常用漢字の範 囲内で記述される方が好ましいようです。 (参考)「点てる(たてる)」の意味 湯を加えた抹茶を、茶筅(ちゃせん)で手早くかき回すことを「茶を点 てる」と言います。 この意味からすると「コーヒーを点てる」という表現は、ちょっと苦しい 感じもします。 でも、お茶を点てるようにコーヒーを入れるという気持ちが伝わってき て、これもまた趣のある表現かも知れません。 ※常用漢字:昭和56年10月1日に内閣告示第1号をもって示された「常用 漢字表」に掲載されている漢字のことです。 義務教育課程で学習する漢字は、ほぼ常用漢字に限られています。 |