これは前回のエントリで告知したHTML5 Conference 2015の感想文です。
電子出版部として「EPUB=Webと出版の融合、そしてHTML5&CSS3が変える本の世界」というセッションをやりました。村上真雄さん、松島智さん、僕の3名がそれぞれ発表をすることにしたんだけど、それぞれ関心のあり方微妙に違う。そこで「ウェブと本の狭間で悩んでみた」という共通のテーマを設定することにした。
- ウェブと本どこが違うの?
- どんな課題があるの?
- 解決するとどんないいことがあるの?
というような内容をそれぞれの切り口で話すことに。
ウェブ技術で電子の本も紙の本も作れるように
村上さんは出版物の制作フローにウェブ技術を活用する話。vivliostyle.jsのデモが見たいよぉ。
つながる本 つながる人
僕の話は「つながること」をテーマにコンテンツのリンクや読書体験を通じたコミュニケーションの話。ややポエみがあります。
HTML5 Conference 2015 の壇上から
松島さんの発表はウェブ制作者がUIデザインを通じて読書体験を創り出すことの素晴らしさの話。こちらもポエミーですね。
そして最後にウェブとポータブル文書(EPUBなど)の境目をなくそうとする EPUB-WEB というビジョンがあることを紹介した。これは昨年のBinBでDPIGの関係者が行った講演が元になっている。僕の雑な日本語による概要はこちら。
- ツイートまとめ
- 動画(僕は自分の映った動画を視ると死にたくなるという持病があるので視てない)
ルームE - HTML5 Conference - - YouTube
アウェイ気味の舞台ということもあり、ガラガラだったらどうしようと密かに不安だったが、後ろの席までそこそこ埋まっていたのでホッとした。見に来て頂いた方にお礼を申し上げたい。
そして素晴らしかったのが運営体制。特にスタッフさんたちがボランティアにもかかわらず見事な連携をされていたし、講演者のサポートも非常に助かった。深く感謝です。
セッションを終えて
終わったあと、なんか……気分が非常に落ち込んだ。今はそうでもないけど。
いろんな部屋で素晴らしい使命感と実力を持ったスピーカーの方たちによるレベルの高いセッションが行われていて、多くの人が熱心に話に耳を傾けていた。ものスゴイ熱気だった。つい数年前までHTMLのタグを10個くらいしか知らなかった僕には、半分くらいがついて行けない話だった。「ウェブってすげえなあ」と小学生並みの感想を抱いた。僕たちのテーマである電子出版、そりゃあウェブの世界のメインストリームから離れた場所にある自覚は当然あるのだけれど、あらゆるものを扱おうとするウェブの世界の中で、随分ちっぽけで古臭いものに感じられて落ち込んだ。
自分のした話が、電子出版物のアイデンティティを問うような内容だったせいもある。自分が考えている諸問題は、とっくにウェブが別の形で実現しているものと考えられはしないか? とか、本が本であることをやめれば解決するのではないか? とか、僕らが行こうとしている未来はどこにも繋がっていないのではないのか? とか。まあこれは僕の癖みたいなものだ。定期的に自分にとってクリティカルな問いかけをせずにはいられない。そんなわけで落ち込んだ。ちょっと泣きたいような気分になった。
でも電子出版の技術も誰かが必要としていたから生まれた技術であるし、それを今でも必要としている人たちがいる。そして僕たちが作ったささやかなソフトウェアを本当に喜んで使ってくれる人たちがいる。これは否定することのできない事実だ。だからこれからもそんな人たちが喜んでくれることをしよう。そう思ったら幾分メンタルが回復した。で、現在に至るわけです。
家の用事とかであんまり余裕がなくて長く滞在できなかったし、会いたいと思っていた人たちにすら満足に挨拶できなかったけれど、貴重な経験でした。関係者および参加者の皆さん、ありがとうございました。