フランスの原子力大手アレバが20年以上の歳月を費やして開発を進めてきた「夢の原子炉」が苦境に立たされている。名称は「EPR(European Pressurized Water Reactor=欧州加圧水型原子炉)」。航空機が衝突しても耐えられるという強靱(きょうじん)性や安全性をアピールして世界に売り込む計画だったが、2011年の東京電力福島第1原子力発電所事故による原発ビジネスのダメージに加え、10年前に着工したフィンランドの第1号プロジェクトが難航。工事の遅延が会社の屋台骨を揺るがす事態に発展している。
■航空機の衝突にも耐える
EPRは「3.5世代」(または「第3世代プラス」)と呼ばれる原子炉。1990年代以降に設計され、事故で電源が失われても自動的に原子炉が停止する「受動的安全設備」を備えているのが特徴だ。アレバの前身である旧仏フラマトムと旧独シーメンス原子力部門が「第3世代」の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)や改良型加圧水型軽水炉(APWR)などに続く次世代型として世界の原子力メーカーのトップを切り、80年代末に共同で開発に着手した。
基本構想では出力の大型化(出力160万キロワット級)をはじめ、高燃焼度による燃料利用率の向上(ウラン消費量は前世代プラントに比べ17%減)、原子炉寿命の長期化(第2世代炉の設計寿命40年に対しEPRは約60年)、長い運転サイクル(最大24カ月)、短い燃料交換期間(16日程度)などによって経済性を大幅に改善。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の使用も可能だ。
一方で安全性も飛躍的な向上を目指した。事故で炉心溶融(メルトダウン)が起きても溶け落ちた核燃料は「コアキャッチャー」と呼ばれる巨大な受け皿に流れ込む仕組み。その上部にある貯水タンクは高温になると蓋(ふた)が自動的に溶けて弁が開き、その結果コアキャッチャーを水が満たして溶け落ちた燃料(デブリ)を冷やす機能がある。また、EPRが備える4基の主ディーゼル発電機と2基の副発電機はいずれも原子炉の向かい側に設けられた高気密防水機能が施された別の建屋に収納され、電源並びに原子炉冷却機能の喪失を回避する狙い。これらの装備は79年に米ペンシルベニア州のスリーマイル島原発で起きた原子炉冷却材喪失事故を教訓に考案されたものだ。
さらに、01年9月の米同時多発テロをきっかけに航空機の衝突にも耐えられる強固な構造が求められるようになった。EPRの建屋の壁は強化コンクリート製で厚みは2メートル以上、その内側の格納容器の壁も同じ厚さとされ、全長73メートル・525人乗りの超大型旅客機「エアバスA380」が激突しても壊れない構造だという。
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