イスラム国拘束:日本人殺害脅迫 声明は支離滅裂
毎日新聞 2015年01月21日 09時54分(最終更新 01月21日 18時58分)
国際社会のイスラム国包囲網を萎縮させる狙いも透けて見える。イスラム国が同様の手法で殺害を予告し、処刑した人質は、有志国連合を主導する米国や英国の出身者だった。非軍事分野で支援する日本を狙うことで、昨年夏から始まった対イスラム国空爆作戦に参加していない国も標的になることを誇示した格好だ。
イスラム国は昨年6月にイラクに大規模侵攻し、実効支配地域を拡大したが、有志国連合が空爆を開始した8月以降は目立った戦果は上げていない。昨秋から注目されているシリア北部アインアルアラブ(クルド名・コバニ)の攻防戦では、クルド人部隊と有志国連合に対して劣勢だ。支配権を巡る内紛や外国人戦闘員の逃亡といった事件も相次いで表面化。海外メディアを中心にイスラム国の動揺が指摘される中、法外な身代金を要求し、存在を誇示しようとした可能性もある。
また今月7日に起きた仏週刊紙シャルリーエブド襲撃事件で系列団体が犯行声明を出し、存在感を増した国際テロ組織アルカイダに対抗する意図もありそうだ。両組織は資金源や支持層が競合しやすく、過激派内部の指導的立場を巡ってライバル関係にある。
エジプトのシンクタンク・アハラム政治戦略研究所のムハンマド・ファイエズ氏は「イスラム国は、広報宣伝活動を軍事作戦と並ぶ重要な柱と位置付けている。安倍首相の中東訪問に便乗し、地理的に遠い日本まで動揺させられると誇示する狙いがある」と指摘している。【カイロ秋山信一、アンマン大治朋子】