久木良太 杉崎慎弥、星野典久
2015年1月26日04時25分
過激派組織「イスラム国」による邦人人質事件は、24日深夜に急展開を見せた。日本政府は、公開された画像について「信憑(しんぴょう)性が高い」(安倍晋三首相)と判断。カギを握るヨルダンに軸足を置いて水面下の折衝を続けているとみられるが、先行きは見通せていない。
24日深夜、首相官邸は慌ただしい空気に包まれた。午後11時15分ごろ、写真を手に持つフリージャーナリストの後藤健二さん(47)の画像がインターネット上に公開された。官邸を出たばかりだった菅義偉官房長官ら幹部が次々に官邸に駆けつけ、報道各社の記者やカメラマンたちも続々と集まってきた。
画像の中の後藤さんが持つ写真には、地面の上に横たわる人物が写っていた。画像とともに流れる音声では、後藤さんを名乗る声の主が「(湯川)遥菜(はるな)さんが『イスラム国』の大地で虐殺された写真だ」「ヨルダン政府に収監されている同胞サジダ・リシャウィを彼らに引き渡せば、私(後藤さん)は解放される」と告げた。
菅氏は官邸に戻ったわずか15分後の25日午前0時10分に臨時記者会見を開き、「湯川氏とみられる邦人1名が殺害された写真を持つ後藤健二氏の写真が配信された」と明言した。
公邸にいた安倍首相も官邸に入り、午前1時15分には関係閣僚会議を開催。厳しい表情で「言語道断の許し難い暴挙だ。残る1名を直ちに解放するよう強く要求する」と述べた。
◇
どこまで日本政府が2人の現況を把握していたのかについて、官邸幹部の口は重い。菅氏は25日午前の会見で、画像について「全く承知していなかった」と述べ、あくまでネットに公開された段階で初めて確認したと強調した。
ネット上に公開された画像には、「後藤健二の家族と日本政府が受け取ったメッセージ」と字幕が付いていたが、菅氏は「様々な情報があったが、確たることを申し上げる状況にはなかったということだ」と述べるにとどめた。
ただ、官邸の中では、今回の画像がネット上に公表される以前から、「湯川さんは早い段階で殺されたという話がある」といった情報がささやかれていた。日本政府が72時間の身代金期限とみた23日午後は表向き平穏に過ぎたが、24日午前には「後藤さんの妻に湯川さんの殺害画像が添付されたメールが送られてきた」という情報が政府関係者の間を飛び交った。
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朝日新聞国際報道部
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