戦後70年談話:首相「侵略」文言なぞらず
毎日新聞 2015年01月25日 22時56分(最終更新 01月26日 03時49分)
安倍晋三首相は25日のNHK番組で、8月にも発表する「戦後70年談話」について「今まで重ねてきた文言を使うかどうかではなく、安倍内閣としてどう考えているかという観点から談話を出したい」と述べた。過去の植民地支配と侵略を謝罪した戦後50年の村山富市首相談話などの文言は、そのままでは使わない考えを示した形で、公明党や野党からは懸念や批判の声が上がった。
◇「未来志向で」
首相は「村山談話、戦後60年の小泉純一郎首相の談話を全体として受け継いでいく」と改めて表明した。そのうえで「今までのスタイルをそのまま下敷きとして書くことになれば、今まで使った言葉を使わなかった、あるいは新しい言葉が入ったという細々(こまごま)とした議論にならないよう、70年談話は70年談話として新たに出したい」と説明。「植民地支配と侵略」「痛切な反省」「心からのお詫(わ)び」などのキーワードを同じように使うか問われると、「そういうことではない」と明言した。
首相は同時に、「先の大戦に対する痛切な反省と同時に、戦後70年、自由と民主主義を守り、アジア、世界の発展に大きな貢献をしてきた。日本の未来に対する意志をしっかりと書き込みたい」とも強調した。
村山、小泉の両談話とも、日本の「植民地支配と侵略」で、「アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛」を与えた「歴史の事実を謙虚に受け止め」、「痛切な反省」と「心からのお詫びの気持ち」を示した。
首相発言に対し、公明党の山口那津男代表は同じ番組で、「キーワードは極めて大きな意味を持っている。それを尊重して意味が伝わるものにしなければならない」と語り、表現の変更に慎重な姿勢を示した。
民主党の岡田克也代表は「植民地支配や侵略を『細々としたこと』と言った首相の発言は許せない。過去を認め、戦後70年日本がやったことを伝え、未来志向と、この三つがそろわなければならない。過去の反省が飛んでは、戦後70年の歩みを否定することになりかねない」と批判した。
維新の党の江田憲司代表も「キーワードを継承せずに変えると誤ったメッセージを与えることになる」と指摘。共産党の志位和夫委員長は「文言にこだわらないというのは、核心的な部分をあいまいにし、後退させるつもりの発言だ。非常に重大だ」と反発した。【高本耕太、村尾哲】