イスラム国拘束:「私の監禁は…」…元人質の仏記者が語る
毎日新聞 2015年01月24日 11時55分(最終更新 01月24日 17時49分)
同じ場所に拘束されたシリア人囚人の扱いは過酷で、「廊下で看守が叫びながらシリア人を殴る音が聞こえた」。エナン氏は自身への拷問については「語りたくない」と言う。通信は許されず、「外界についてわずかでも情報が入るのは、新しい人質が加わった時だけだった」と回想する。
希望が膨らんだのは、解放される数週間前に3人のスペイン人記者が解放された時だ。「過激派は支離滅裂な形で身代金や囚人解放の要求を語った」という。エナン氏らフランス人4人はトルコ国境沿いで解放され、トルコの警察に保護された。解放から10カ月後の今も「ストレスが残り、生活を再建するのが難しい」と話す。
エナン氏は拘束中、「日本などアジア系の人質や戦闘員は見たことも、話に聞いたこともない」という。イスラム国にとっての日本は「金をゆすり取る対象」とみる。日本がイスラム国対策として打ち出した避難民支援の2億ドルについては「人道的なものであっても、イスラム国の論理では敵対行為とみなされる」と分析。日本人2人の人質事件について「非常に心配だ」と語った。
日本人の拘束場所については、ネットで配信された映像の背景が「ラッカ周辺の景色と似ている」と指摘した。
◇ニコラ・エナン氏
フランスのフリージャーナリスト。アラビア語を駆使し、中東、アラブ世界の動向取材を専門としている。2003年のイラク戦争では3月の開戦前から現地入り。11年に起きた中東の民主化要求運動「アラブの春」はエジプト、リビア、シリアから報道した。13年6月、過激派組織「イスラム国」の本拠地シリア北部ラッカで拉致され、10カ月間拘束された。