イスラム国拘束:持参の薬喜ばれシリア再渡航…湯川さん
毎日新聞 2015年01月25日 22時07分(最終更新 01月26日 02時43分)
イスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループに拘束された湯川遥菜さん(42)を殺害したとするインターネット上の映像の信ぴょう性が高まった25日、父正一さん(74)は「残念な気持ちでいっぱい」と声を落とした。拘束が続くジャーナリストの後藤健二さん(47)の安否を巡っても、緊迫感が高まる。なぜ犠牲にならねばならないのか。国内の関係者に、衝撃と憤りが広がった。
正一さんによると、湯川さんは千葉県内の高校を卒業後、アルバイトやミリタリーショップ経営など複数の職業を経験した。27歳で結婚したのを機に実家を離れたが、数年前に妻を亡くし、実家近くのアパートで1人暮らしをしていた。
昨年1月16日には、民間軍事会社「ピーエムシー」(東京都江東区)を設立。同社のホームページでは、主な業務として、治安不安定危険地域での情報収集活動▽日本人海外渡航者の警備と武装警備▽誘拐や人質にとられた際の救出とコンサルティング−−などを挙げていた。
後藤さんは拘束される前の同8月、毎日新聞の取材に対し、湯川さんは同4月に単身で初めてシリア入りした際、イスラム国と対立する反体制派武装組織「自由シリア軍」に拘束されたと証言していた。当時、取材でシリアにいた後藤さんは、交流のあった自由シリア軍メンバーに通訳を頼まれた。通訳で武装組織側の誤解が解け、湯川さんは解放されたという。
正一さんは、帰国後の湯川さんについて「シリアに持参した医薬品などが喜ばれたと話し、『自分にできることが何かあるのではないか』と生き生きと語っていた」と振り返る。
後藤さんによると、シリアへの再渡航を計画した湯川さんと東京都内で会ったのは同6月ごろ。後藤さんは「経験を積むだけなら、何も危険な場所に行く必要はない」と忠告したという。だが、湯川さんは同7月28日にシリア入りしたとみられ、8月になって動画投稿サイトに「ユカワ・ハルナ」と名乗る男性が頭から血を流しながら尋問を受ける映像が公開された。
ジャーナリストの常岡浩介さん(45)によると、その後、イスラム国の司令官を名乗る人物から、スパイ容疑のかかっている湯川さんの裁判を行うため「日本語とアラビア語の通訳をできる人物を探している」と連絡があった。9月に現地に入ったが、湯川さんとは会えなかったという。