温暖化影響予測“熱中症で死亡リスク増加”1月20日 11時52分
国内で予測される地球温暖化の影響を評価した報告書の案を環境省の審議会がまとめました。影響が特に大きく対策の緊急性が高い事例として米の品質低下や熱中症など暑さの影響による死亡リスクの増加といった予測を挙げていて、政府はことし夏をめどに被害を軽減する適応策を取りまとめることにしています。
環境省の審議会が20日公表した報告書の案は、国内で予測される地球温暖化の影響について初めて重大性や対策の緊急性などをもとに評価しています。
このうち、温暖化の影響が特に大きい事例や対策の緊急性が高い事例として、食料の分野では、品質の高い一等米の比率が減り、特に九州では今世紀末に40%減少するという予測があると指摘しています。
また、自然災害の分野では、今世紀末には洪水を引き起こすおそれのある大雨の頻度が増えると予測しているほか、強い台風の増加で太平洋沿岸での高波のリスクが高まる可能性があると予測しています。
健康や感染症の分野では、熱中症など暑さの影響で死亡するリスクが2090年代には最大で3.7倍に達するほか、デング熱のウイルスを媒介する蚊の生息する地域が今世紀末には北海道の一部にまで広がると予測しています。
このほか、今世紀中頃や今世紀末には花見ができる日数が減って桜を観光の柱とする地域に影響が出ると予測するなど、経済への影響も評価しています。
政府は、報告書の案などを踏まえ、地球温暖化による被害を軽減するための適応策を盛り込んだ計画をことし夏をめどに初めて策定する方針です。
「適応策を準備する必要がある」
環境省の審議会で委員長をつとめる国立環境研究所の住明正理事長は、「温室効果ガスの削減で温暖化が止まれば問題ないが、そうでない場合に備えて適応策を準備する必要がある。温暖化の影響が出始めているということは、多くの方が生活のなかで感じていると思うので、一歩一歩、できることを今から始めることが大事だ」と話しています。