厚生労働省が23日、介護現場で働く外国人を増やす対策案をまとめたのは、人材難が今後一段と深刻化するためだ。同省の推計では「団塊の世代」が75歳以上となる2025年度には介護職員は30万人も不足する見込み。人口減少も重なり、日本人だけで労働力を賄うのが難しいとの判断がある。
ただ今回の対策案でも政府は「外国人を単純労働力としては受け入れない」という原則は崩していない。技能実習制度の拡大は「介護の技術移転を求めるニーズが途上国側にあるため」(厚労省)というのが建前。不足する労働者の受け入れでなく、あくまで途上国支援との立場だ。
こうした対応には国内外で批判が出ている。建設や農業など先行して受け入れている技能実習生は賃金未払いや低賃金の長時間労働が絶えず、諸外国から「都合良く外国人を使っている」などと問題視されている。
厚労省と法務省は対策として監督機関を新設する。340人体制で全国約2千の受け入れ団体や約3万の事業所を巡回監視できるようにする。ただ23日の厚労省の検討会では連合の代表から「制度改正を重ねても運用が改善されていない」との指摘が上がった。
経済連携協定(EPA)を結んだフィリピンなどから受け入れる仕組みにも課題がある。今年1月までに受け入れた累計1538人のうち481人がすでに帰国した。日本語の専門用語が多い介護福祉士試験に期限内に合格できなかったり、難しさに嫌気がさして他国に渡ったりしたためだ。
小手先の対応を続けると、日本は外国人から働く場として見放されかねない。外国人を労働力としてどう位置づけるのか。きちんとした判断が必要な時期に来ている。
▼外国人技能実習制度 発展途上国への技術移転を目的に、外国人を「技能実習生」として日本に受け入れ、働きながら学んでもらう制度。1993年に始まり、2013年末時点で受け入れている実習生は約15万5千人。中国からが約7割と最多でベトナム、フィリピンと続く。在留期間は今は最長3年。
農業や建設、食品製造、漁業など68職種が対象。繊維・衣服と機械・金属の受け入れがそれぞれ約1万人と最も多い。企業が単独で受け入れる方式と商工会や協同組合などを通じて会員企業にあっせんする方式がある。