イスラム国拘束:後藤さん入国許可に悔い…検問所担当官
毎日新聞 2015年01月25日 22時31分(最終更新 01月26日 00時03分)
【キリス(トルコ南部)大治朋子、カイロ秋山信一】シリアと国境を接するトルコ南部キリスの国境検問所。戦闘が続くシリアとの間を多い日は数百人以上が行き来する。イスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループに拘束されたジャーナリスト、後藤健二さん(47)は3カ月前の昨年10月24日、ここを通過し、その消息を絶った。越境審査を行ったシリア反体制派の検問所担当官は「通過を許可すべきではなかった」と後悔の思いを口にした。
◇生き抜いてほしい
後藤さんの新たな映像が公開された24日夕、検問所付近にはシリアから流れ込む人波があった。既にトルコに避難しているアフマドさん(22)は、シリア北部アレッポから来た親戚のムハンマドさん(24)一家を出迎えていた。「毎日爆弾が撃ち込まれている。トルコに移住したいが仕事がない。親戚の家に泊まり、しばらくしたら戻るつもりだ」。ムハンマドさんの表情は険しい。アフマドさんは「日本人が殺されたかもしれないとニュースで聞いた」と話した。
検問所で後藤さんの越境審査を担当したユーセフ・ハラプさん(21)は24日夜、キリス中心部で毎日新聞のインタビューに応じ、新たに公開された映像を見て言った。「ケンジはすごく痩せているけれど、目の力はある。心はまだしっかりしているように見える。生き抜いてほしい」。また、「私が知っているなかで、最も勇敢な記者。彼はイスラム国の実態を報じたがっていた」と振り返る。
外国人記者の審査を担当していたハラプさんの前に、後藤さんは昨年10月24日昼ごろ、「2人のシリア人と現れた」。アラビア語の通訳や運転を担当する取材助手で、ハラプさんとも顔見知りだった。後藤さんは「マレアに行き、数日滞在して空爆の様子や市民の生活を取材する」と話した。ハラプさんが「(反体制派の)警護が必要か」と聞くと、後藤さんは「いらない」と答えたという。
同行者の一人、アラ・エルディン・アルズイムさんはマレアに後藤さんらを送った。アルズイムさんは毎日新聞の電話取材に「25日にも後藤さんと会った。携帯電話や日本の連絡先を渡され、1週間待って(連絡が無ければ)日本の友人に連絡してほしいと言われた」と話した。後藤さんは同日、イスラム国の支配地域に入ったと見られる。