OpenJDK9のコミッターに末永恭正氏が就任。「自分の技術的な興味のストライクゾーンでした」

2015年1月26日

Java仕様のオープンソース実装であるOpenJDK。次バージョンであるJava 9仕様の実装に向けて、OpenJDK9のプロジェクトが進行しています。

Result: New JDK 9 Committer: Yasumasa Suenaga

OpenJDKはOarcleはもちろん、Red Hat、IBM、SAPなど主要なベンダが参加し、各ベンダがリリースするJDKの基になる重要なプロジェクトです。

そのOpenJDK9のコミッターに日本人では初めて、末永恭正氏が就任しました。末永氏は大手SIerに所属しつつ個人としてOpenJDKへの貢献を行ってきており、それが評価されて第三者からコミッターへの推薦があり、投票の結果すべて賛成票でコミッターに就任しました。

その末永氏に、OpenJDK9のコミッター就任についてメールでインタビューを行いました。以下はそれを元にまとめたものです。

元々は仕事がきっかけでパッチを出した

──── まず、OpenJDK9のコミッターについて教えてください。そもそも何人くらいいるのか、どのような人がいるのでしょうか。そして末永さんはそこでどのような役割を果たそうと考えていらっしゃいますか?

末永氏 CensusというページでOpenJDK9プロジェクトのコミッターにリストアップされている人が1月13日時点で110人ほどいるようです。ほとんどの方がOracle社員で、その他の方もRed HatやIBMなどOpenJDKにコミットされている企業の社員だと思います。実際、メーリングリストに流れているメールの差出人のほとんどがoracle.comドメインです。

私は今、特に「役割を果たそう」とは考えていません。これまでどおり、たまたま見つかったバグや、自分がほしいと思った機能をスピーディにコミュニティに提供していければと考えています。

また、コミッターになると「Sponsor」という、一般の人からのパッチのマージをお手伝いすることができるので、もしメーリングリストで無視されかけている日本人からのパッチがあったらできる範囲でマージに協力できればと思っています(私は英語が苦手なので、基本的にはパッチを出された方にがんばっていただきたいですが……)。

──── OpenJDKへの関わりは、ご自身の業務とは関係なく個人としての活動だと伺っているのですが、今後もそれは変わらないのでしょうか? また、これまで日々どれくらいの時間をOpenJDKの活動に使っていたのでしょうか。

末永氏 時間的には「好きな時に、好きなだけ」やるようにしているので、明確にお答えすることが難しいのですが、強いて言えば、寝る前の2~3時間ぐらい、OpenJDKとHeapStats(私がコミッターをやっているJavaの障害解析ツールです)を同時にこなしています。

OpenJDKのソースを読み始めたのは、元々は仕事がきっかけでした。私の所属しているグループ会社全体のOSSサポート業務を担っている部署に異動した際に「OpenJDK の担当をしろ」と言われ、そこで様々なバグやクラッシュ事例に遭遇し、コミュニティ活動をされている諸先輩方から「パッチ出してみれば?」と言われたことがはじまりです。

今は職場は変わりましたが、開発プロジェクトに対してJava関連の技術サポートを行っていますので、そこで「こんな機能があればいいな」と言われれば、それを「サンデープログラマーとして」実装し、フィードバックすることはありえるかと思います。

技術的なコラボもできれば

──── OpenJDKの開発に関わることの魅力について。何が末長さんをOpenJDKの開発に引き込ませているのでしょう。

末永氏 私にとっては、自分の興味のある分野で、ゲームをやっているような感覚になれるのが一番の魅力です。元々プライベートでDelphi、C、Javaなどを使いWindowsプログラミングをしていました。そのときのノウハウを活かしやすく、OSやアセンブラレベルの知識が求められるのがJVMだと思っていますが、そこが自分の技術的な興味のストライクゾーンでした。

その分野について自分が考えたことをパッチという形で、世界中のハイレベルなエンジニアに提示し、それが合っているのか答え合わせをする。そのような「ゲーム」だと思っています。

常に新しいステージが用意されるゲームをプレイし、自分自身のレベルも引き上げることができる。さらに英語が苦手でもソースコードでコミュニケーションがとりやすい。そこに魅力を感じています。

──── 今後の抱負などがあれば教えてください。

末永氏 これまでサンデープログラマーとして、自分の好きなものを好きなだけやることを心がけてやってきましたし、これからも同じスタンスで細く長くやっていこうと思っています。OpenJDKとHeapStatsという、ともにJVMと深く関係する2つの OSS のコミッターになりましたが、のんびりと、自分自身の勉強しながらやっていきたいと思っています。

OpenJDKが出てきた影響か、最近日本でもJVMに関するスライドやブログを多く見かけるようになりました。そのような方と技術的なコラボをいつかできればいいなと思っていますので、ぜひよろしくお願いいたします。

──── ありがとうございました。

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タグ : Java , 人物

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