沖縄県名護市辺野古の海がまた、大荒れの様相だ。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に伴う埋め立て工事に先立ち、沖縄防衛局がブイやオイルフェンスなどを張る海上作業を再開した。

 埋め立て予定地に接する米軍キャンプ・シュワブのゲート前は連日、抗議の県民らと警官隊がもみ合い、騒然としている。けが人が続出。救急車で運ばれた人もいる。海上で抗議するカヌー隊の中には、海上保安官に胸を押されて骨折した男性や、救命胴衣を破られた女性もいる。異常な警備である。

 昨年8月に始まった海上作業は、一時台風などで中断。その後も知事選や衆院選への影響を考え再開を先送りしてきた。

 その知事選も衆院選も、辺野古移設反対の民意が圧倒した。政権は沖縄との話し合いを拒み、翁長雄志(おながたけし)知事の就任あいさつさえ受けつけない。

 基地建設に突き進む政権の姿勢に、県民の不信と怒りは膨らむばかりだ。きのうまでの3日間、県民に交じって国会議員、県議、市町村議もゲート前の座り込みに参加した。

 ここに来て注目されるのが、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による埋め立て承認の判断を、翁長知事が覆すかどうかだ。

 承認手続きを検証する専門家チームが、まもなく作業を始める。仮に法的に欠陥があるとされれば、翁長知事は承認を取り消す方針。欠陥がなくても、知事選で辺野古移設阻止の民意を得たことを根拠に、承認撤回に持ち込む判断もあるという。

 承認の根拠の一つとなった国の環境影響評価(環境アセス)には、多くの専門家が疑問を呈してきた。この際、問題点を再確認することは意味がある。

 例えば国の天然記念物ジュゴンへの影響予測は「科学的ではない」との批判がある。

 オスプレイの運用も、一般の人々が意見を言えるアセス準備書段階まで伏せられ、低周波音対策などは示されていない。

 埋め立ての土砂の調達先も、アセスは触れておらず、鹿児島県奄美大島や香川県小豆島など県外から運び込まれることが後で明らかになった。土砂とともにカビやアリなどの外来生物が沖縄固有の生態系に侵入し、悪影響を及ぼす恐れもある。

 公有水面埋立法には「環境保全に十分配慮する」とある。政府は作業を強行せず、検証を受け入れる度量を示すべきだ。

 政府だけではない。沖縄で、辺野古で、何が起きているのか。今こそ本土の人々は直視しなければならない。