
最近、ABSトラブルなんて言葉を良く聞く。
サーキット等を攻めている時に、ABSが変な介入をするらしい。
代表的な症状はこうだ。
・ブレーキを強く踏んだら突然いつもより効きが鈍く、車速が落ちなくてヒヤッとした。
・ブレーキを強く踏んだら突然4輪同時にロックして、ペダルから足を離してもブレーキが解除されない。
これは怖いなぁ。うん。
ABSコンピューターの誤作動なんて話もあるけど、
後付けの仕様によりABSコンピューターを誤作動させてる事もあるんじゃないかなぁと院長は考える。
(ABSの効能)
大雑把に説明すれば、ABSはブレーキを踏んでいる状態で4輪のタイヤのうち1輪でもタイヤロックが起こると、急激な挙動変化(スピン)や舵が効かなくなる(ハンドル操作でのコントロール不能)自体を抑える為に、ABSコンピューターがロックしているタイヤだけブレーキの効きを弱める仕組み。
最近のクルマでなければ1輪ごとの制御ではなく、左右2輪、もしくは4輪全輪のブレーキの効きを弱めてしまう。
つまりABSが作動すると、制動距離が伸びてしまう場合がある。ペダルの踏み応えもいきなりペダルが奥まで入ったり、コツコツと踏んでいる足にキックバックがあったりする。
それとは別に、最近のクルマに付いている賢いABSは4輪独立制御以外に、なんらかの条件が重なるとブレーキを4輪ロックさせっぱなしになるらしい。ペダルから足を離してもだ。
これはメーカーのプログラミングに問題があるのかもしれないので、どうなるか結果を注意深く見つめて行きたいなと思う。
(群サイ画像)
さて、足回り好きな院長が注目しているのは、そもそも何故ABSが作動してしまうのかだ。
ABSが作動する条件とは、一般的にこうだ。
①ブレーキを踏んだ時に路面とタイヤの摩擦μが足りなくて制動力が受け止めきれず4輪のどこかがロックしてしまう。
②路面は良くても荷重バランスが悪くブレーキングでリヤサスが伸び切ってしまい、リヤタイヤの接地圧より制動力が上回ってしまいリヤタイヤがロックしてしまう。
③ブレーキング時の激しい荷重移動によりフロントサスが縮み切ってしまい(フルバンプ)入力を受け止めきれなくなり、制動力がタイヤのキャパを上回ってフロントタイヤロックを引き起こしてしまう。
こんなカンジだ。
①についての対策は、
タイヤと路面の摩擦の範囲内で運転をする(スピードを落とす)とか、摩擦力のあるハイグリップタイヤやダート用タイヤなどの
路面と用途に適合したタイヤを選択する事で改善できる。
②の対策は、
サスペンションの伸びストロークと伸びの強さを確保すれば対策は可能。
③は
バンプストロークの確保の為に強いバネを使用したり、ストロークのあるダンパーに変更したりする。
要するに、
走らせるコース、路面にマッチしたサスペンションを使えばタイヤがロックする事態は減らせる訳で、そうすればABSがあまり介入してくる事も無くなるのではないかと思うのだ。
つまり、
良いサスペンションを使う事は安定したブレーキングに対しても有効なのだ。
(高性能ブレーキ)
ついついブレーキ強化と聞くと高性能ブレーキパッドとかビッグキャリパーだとかの方に目が行くのだが、
ダメな足回りに強力なブレーキを使うとむしろ逆効果になったりするんだよ。
先日の群サイでの事故も、非常に路面状況の悪い凸凹路面にサーキットメインの車高短サスペンションが追従出来ない状態が発生していたかもと、全く部外者の院長は考えている。
皆用途に合ったサスペンションを使って、安全で楽しい走りライフが送れたら良いなと願っている。
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さて、では用途に合ったサスペンションを手に入れるにはどうしたら良いのか。
巷には自分の車種用のサスペンションキットが溢れている。
どのメーカーの説明を見ても、良い事しか書いていない。
しかし、メーカー毎の設計の違いはかなりの幅があり、用途に対して足りないものも数多く存在する。
それは一概にメーカーが悪いのではなく、設計段階での想定した用途と違う使い方をしようとしているから足りなく感じるのだ。
だが、一般的吊るしのサスペンションの詳細なデータは表示されていないし、もしデータを入手してもその道の専門家にしか判らない事が多いのだ。
院長のように数年掛かりで車高調数セットを駄目にしながらコツコツ学んで自力で脚が作れるようになるのは、根気勇気継続する根性が要るのであまりお勧めしない。
一番簡単に自分の用途に合ったサスペンションを入手する方法は、巷の評判でも価格でもなく、その道の専門家に用途を伝えて作製してもらう
フルオーダーサスペンションを買う事だ。
例
フルオーダーサスペンション作製には、いくつかのステップがある。
①問診
②寸法/仕様決定
③取り付け調整
このような流れになる。
それを全てもし、だいたい定価でやったとするならいくらの金額になるかをシミュレートしてみよう。
①問診
例えば有名なE社の場合、オーダーシートに発注内容を記入して送る。スプリングのレート/自由長、減衰特性、ダンパーの寸法なども指定できる。
知識が無い方はメールや電話などで相談も出来る。問診により電話の向こうの専門家が大体の仕様をまとめてくれる。(ただし注文側に知識が少ないと思った物と違うものになる場合もあるので注意)
知識に自信が無くて直接発注が怖い人は、スペシャルショップなどで相談をして、ショップからオーダーを代行してもらう事も出来る。
おおまかな本人のイメージから仕様決定/発注に至るまで、経験上最低
2時間くらい話さないと双方納得して仕様決定までには至らない。
②寸法/仕様決定
本人のイメージが固まったら、そのイメージになるような仕様の選定に移る。
・オーダーダンパーの寸法、減衰などの決定
(15万円~30万円くらい)
(ダンパー)
・スプリングを選定して発注
(4万~12万くらい)
(スプリング)
・アッパーマウント選定発注
(5万くらい)
(アッパーマウント)
・ショートパーツ発注
(1万円くらい)
(ショートパーツ)
部品代はこのくらいが目安だが、仕様決定までのプロが裂く時間は
2~4時間掛かる。
(車高調)
③取り付け/調整
オーダーサスペンションが届いたら、いよいよ取り付け調整に掛かる。
・サスペンション取り付け工賃
(1万5千円~2万5千円くらい)
・車高調整
(1箇所1回3千円~5千円くらい)
・減衰調整
(実走2時間くらい)
・アライメント調整
(2万円~3万円くらい)
(アライメント風景)
これでようやく走り出せるようになる。それでもココがスタートラインで、ココから先の煮詰め作業は自力でやるか改めてプロに頼むかをしなくてはならない。
判り易いところで、初期設定から車高を変えたりホイールを換えたりすれば、厳密にはその都度アライメント調整をしないといけない。
さて、とりあえず金額がだいたい判っている値段を合算してみよう。
一式頼むと、
40万円。
それから、時間工賃。
1時間あたり
5千円~1万円程度。
(工賃を考える)
リンク
http://www2s.biglobe.ne.jp/~casa/g-tokusyuu-0002.htm
(量販店工賃表)
リンク
http://www.woow-wondercity.com/paytable/
今回はただの整備修理では無い、特別な知識を必要とするオーダーサスペンションなので、時間当たり1万円としよう。
7万円。
合計
ざっくり47万円となる。
途方もない金額だ。
これがもし、レアな超高級ブランドダンパーを使用した場合はさらに10万円くらい上乗せになる。
実際は殆どこんな金額を請求される事は無いと思う。それはプロも商売なので、買っていただける金額に工賃分を抑えたりするからだ。
セット料金にして、格安で提供しているモノも多い。
大体フルオーダーでも30万〜40万円くらいで一通りやってくれる。
しかし、ユーザーの皆も本当はこれだけの手間と金額が掛かっているんだと認識するのも悪くないと思う。
プロは報われない仕事をしている事が多いんだ。
さて、このように1発でだいたいOKの車高調を作るのがいくら掛かるのかは理解して貰えただろう。
現在、自分の使っている車高調が、いくらで入手できたものなのかを振り返ってみるのも良いだろう。
純正ノーマル新品を部販で買うといくらになるのかを調べてみても良いだろう。
大きくかけ離れて安価で入手したものならば、まだまだ手を入れる余地があると考えてみても良いのではないかと思うよ。
(安価な車高調)
安全で、快適で、思い通りに走れる嬉しさを皆にも知って貰いたいと切に願う院長だ。
おしまい。