
お陰さまで沢山の方に相談をされて、色々説明や相談、場合によってはお手伝いをしてきた訳だ。
タイトルは、沢山の脚の話をしてる内に統計が取れた自分なりの経験則。
院長自体、それほど褒められるようなドライビングをする訳ではないのだが。
職業ドライバーをやったり、あるパーツのテストドライバーやったりした経験はあるので、まぁ20年走ってきてそれなりの腕前があるくらいの自信はある。
そのくらいの腕前だ。
話を戻そう。
足回りリセッティングする際に、必ずオーナーの仕様を確認している。
色々と手が加えられたマシンには、オーナーの好みが必ず反映されているものだ。
①やたら俊敏だけどコントロールの幅が無いスピンマシン。
②ノーマルみたいな挙動なんだけど、すぐに限界を超えて挙動が乱れるマシン。
③まるでノーマルの延長線上にあるようなコントローラブルなマシン。
話を聞くと、殆ど①②③の順でドライビングテクニックが違う。モチロン後の方が上手なドライビングをする。
院長自身がドライビングに対して素晴らしい結果を残してきた訳ではないので、この件については触れないでいた。しかし、
ドラテク習熟度と好む仕様には相関関係があり、そこの説明をしておかないと話がちっともまとまらないので、今回あえて説明をする事にした。
それぞれの仕様に至るロジックを、院長なりに説明しよう。
①やたら俊敏だけどコントロールの幅が無いスピンマシンを好む方。
この方はドラテクに関して初心者である。何年走っているかは関係ない。
自らが「荷重移動、ハンドリング、ブレーキング」をコントロール出来ないので、クルマにサポートして貰おうと、足りないドラテクに合わせてしまうのだ。
・減速が甘く前荷重姿勢に持ち込めないので、フロント車高を下げる→ちゃんとブレーキングするとリヤが不安定になる。
・タイミング良く充分にハンドルを回せないので、手アンダーが出るので前車高を下げる→立ち上がりで加速する時にリヤが出易く思い切り踏めない。歯を食いしばって踏めばオーバーステアになる。
・気合ばっかりでオーバースピードでコーナーに進入するので舵入れるタイミングもアクセル踏むタイミングも後手後手に回ってしまい、「曲がるマシンではなく回るマシン」に変えて帳尻を合わせようとする→見掛け派手だがタイムには繋がらない。
こーゆー方が③みたいなクルマに乗ると不満ばっかり。動きがモッサリしていると言う。ロールが怖い、フルバケシートが欲しいなんて言う。
自分の鍛錬が足りずにクルマのせいにしている。だからノーマル車が苦手なのだ。
このような好みの方は改めて運転を見直した方が良い。
とりあえずやって欲しいのは「フルブレーキ」の練習だ。タイヤを4輪とも一気にロック(ABS作動)出来るようになるのだ。
スポーツドライビングとは、クルマの操り方を訓練して「より安全に。緊急回避テクニックを身につける」事がまず習得すべき事。自分のクルマが最短どれだけの距離でどんな姿勢で止まるのか。それを知らないまま飛ばすなんて無謀なんだよ。
ノーマル車はフルブレーキングでもそんなに恐怖を感じる姿勢やブレーキの効き方はしない。
それと比較して恐怖を感じる挙動が出るようなクルマはダメなのだ。そんなクルマはノーマル以下。改善しないといけない。
フルブレーキング練習をすると判る。いつでもどんな時でも
4輪ロックさせれるようなブレーキングは、思った数倍くらいの踏み込み量と強さを必要とする。
それが付いているブレーキの限界なので、速く走りたいのならブレーキ性能を限界まで引き出せるようなドライバーにならなくてはいけない。
まずはそれが出来るようにならなければ、足回りのセッティングなんて出来るようにはならない。
コーナリングの荷重移動の初めの一歩を学ぶには、サイドターンして遊ぶのが良いかな。
直進状態から、ハンドル切ってサイドブレーキを引いてリヤを振り出すのだ。
ハンドルとサイドだけでは上手くターンが出来ない場合、ブレーキを踏んで前荷重にしたり、ハンドルをより沢山回したり、操作のタイミングを工夫するとクルッとターンが出来るようになる。
慣れてきたら狙った場所でキッチリ180度ターンが出来るように練習するとなお良し。
これにより
「ハンドル回すとクルマが曲がってくれる」から、「自分でクルマを曲げる」テクニックの入り口が見えると思う。
勿論公道やショッピングセンターの駐車場なんかでやっちゃダメだぜ! 他人の迷惑にならない場所でやるんだ。
「サイドターン」が出来るようになったら、ターン終了辺りから「パワースライド」に持ち込むなんて遊びをしてみるのも良いだろう。
カウンターがキまるとチョー愉しいゾ。
ただし、それが元で横転したりクルマが損傷したとしても院長は一切責任持たないが。
そんな遊びが出来るようになってから、改めて①の仕様のマシンで飛ばすとなんだか恐怖を味わうかもしれない。そうなったらとりあえず上達だ。
頑張ってセッティングして、②の仕様を目指そう。
「怖いと思ったら安定する方向にクルマを変えてゆく」これが大事な事なんだ。 特に車高調が付いていれば、その変更は車高バランスだけで改善出来る。
この次元では太い食いつくタイヤも、やたら効くブレーキパッドもネガキャンも要らない。
さて
②ノーマルみたいな挙動なんだけど、すぐに限界を超えて挙動が乱れるマシン。の方。
そこそこ走りこんで考えて脚を煮詰めてきた方が多い。意外にドライビングテクニックは充分以上に上手な方が多い。
会話をしていると、「いやまだ自分が下手なので。」とか「自分が使いこなせていないだけだと思うので」と話す方が多い。とっても謙虚。色々な経験をしてきた年輪を感じる。
こーゆー方は、自分自身を過少評価している事が多いのだ。中級者なのにまだまだ初心者だと思っている。
何故なのか。
・サーキットで大したタイムが出せないから。
・他の似たような車種に乗る仮想ライバルに歯が立たないから。
・信じて買ったチューニング用パーツを組んだのに、思うような結果が出せないから。
アレコレと悩んでパーツを投入したのに見返りが受け取れないのを、自分の適性が無い、努力が足りないと判断してしまっているんだな。

こーゆー方にはズバリ、
「足回りのリセッティング」こそが悩みを脱する決定打になる。
今までの足回りから「オーダー車高調」へステップアップするタイミングと考えても良いかも。
運転が上達して、「現状のサスペンションの限界を超えるドライビングが出来るようになった」ので、クルマがついてこないのだ。
・緩い高速コーナーで、挙動が乱れるのが怖くて思い切って踏めず、ライバルに置いていかれてしまう。
・思った以上にブレーキロックが速く発生するので、思いっきりブレーキが踏めなくなっている。
・「効かないパッド」「機械式LSD」「もっと食いつくタイヤ」が欲しくてたまらなくなっている。
そーゆー方のドライビングを外から見ると、実に繊細にクルマを動かしていて、実際のタイムもそこそこ。
隣に乗ると凄く丁寧に運転されている方が多い。
既に足りなくなってしまった愛車の性能ギリギリを繊細に繋いでいるので、とても綺麗に、しかし小さくまとまってカンジで走っている方が多いのだ。
このような方は、
足回り自体に手を入れて、足回りのキャパシティアップをすればもっと良くなるのだ。
もっと懐の深いサスペンションにすれば、やりたい事への自由度やマージンが増えて、一気にタイムアップする方が多い。
院長が応援するのはこのような方だ。
「腕が足りないんじゃない。クルマが足りないんだよ。」と教えて、もっと自由に走れるようにお手伝い。
結果、キャパを上げた足回りは
③のようなクルマに変貌するのだ。
ドラテクはもうそれなりにあるから、足回りセッティングを理解して「上級者」に移行しよう。
さーて、
③まるでノーマルの延長線上にあるようなコントローラブルなマシン。に乗る方々。
こーゆーマシンに乗る方々に若いやつは居ない(笑)
経験も技術も文句なしの「上級者」ばっかりだ。
本気で走れば素晴らしいタイムを出すし、横に乗ったり走りを外から見るだけでも感動する程速くてスマートにクルマを操っている。
まるで、水泳のアスリートやフィギュアスケートの選手みたいな走りをする。
運転操作も
「大胆」と「繊細」が同居していて、それが継ぎ目無くスムーズに繋がってゆく。
もうね、こーゆー人たちだと、クルマに関する色々な話が全て噛み合うカンジがして、走りをもし見なくても上級者だと解るのだ。
もう院長の出番はこーゆー方には殆ど無い。院長もただのクルマ好きとして自然体で話をしたりするだけ。
もし何か相談事があっても、院長のヨシムラ号を乗せてあげれば勝手に理解して、何らかの参考にしているらしい。
それぞれのマシンを見ても乗っても至って普通。セオリー通りの弄り方をしてあるマシンばかりだ。
このようなマシンに乗っている方はクルマ趣味人としても一級。一緒に居てもとても愉しいのだ。
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「速い人ほど至って普通な、しかもキャパのあるクルマを好む。」「半端に弄ったクルマより、ドノーマルの方が好き」
その差はやはり、ドライビングテクニックの習熟度にある。
あらゆる状況に対応するテクニックがドライバーにあれば、道具はクセの無い普通な道具の方が使い易い。
クルマの限界が自分のテクニックより下では、いつ限界を超えるかビクビクしながら走る羽目に陥るので心から楽しめない。
運転を考え、マシンの改善に明け暮れ、紆余曲折し、七転八倒し、結局はその愛車の生まれ持った個性を1回り伸ばしたようなクルマに落ち着く。これぞ{改良}。「調律」つまり「チューニング」なのだ。
最近劇場版がまた公開されたドリフトをテーマにする
娯楽フィクション漫画がある。
どうやらこの
娯楽フィクション漫画が、ドラテクに関して大きな誤解を招いているらしい。
コレだ。
「上手な荷重移動が出来れば、コップの水がこぼれない」
中級、上級者の方はコレが全くの
「ネタ」だという事を知っている。
なぜなら試した事があるからだ(笑)
初心者であればある程、この描写が本当だと信じ込んでいるらしい。全くあの漫画は罪深い(笑)
コップの水をこぼさない運転は、荷物を配達する時とか、助手席で眠っている人を起こさないような運転をする時に役立つが、スポーツドライビングには全く当てはまらない。
コップの水なんかあっという間にこぼせば良い。(笑)助手席の荷物は吹っ飛ばせ!
そして「ブレーキング」「ハンドリング」「アクセルワーク」の継ぎ目が判らないような丁寧かつ繊細な操作をするのだ。
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速いマシンは脚が硬くて車高が低い。
勘違いしちゃいけない。
「脚を硬めて車高を下げれば速く走れる」んじゃなくて、「速く走ろうと弄っていったらそうなっちゃった。」
んだ。
そこにはドライバーの速さが挟まっている。形だけマネしても速くなれる訳じゃないんだ。
形だけマネすりゃ速く走れるなら、V35GTRにかぁちゃん乗せたらかぁちゃんが激速になっちゃうだろ?(笑)
速い人は荷重移動が凄い。つまりロールやピッチングが凄い。
上手い人は凄くロールやピッチングをさせるので、キャパが足りない脚ではストロークを使い切ってしまう。
フルバンプしてしまうとそれ以上の荷重が掛けれないので、バネを硬いモノに交換してフルバンプしないようにサスを強化するのだ。乗り心地は悪化するが諦めている。
サスを強化するとバネが縮みにくくなるので、車体重心が上がってしまう。だから車高を下げるのだ。
また、サスを強化し車高を下げると横Gに対してクルマが強くなる。その分タイヤはヨレてしまってタイヤトレッドの外側に負担が集中するようになる。だからネガキャンをつけるのだ。
全て対症療法なんだ。運転手の速さが無ければ形だけマネしても速くなんかならない。
つまり、自分に対して丁度良いマシンは、自分がどれだけヤるかによって変わってくる。
院長的には、限界が低すぎて危ない仕様にするのはダメだが、使える技量が無いのに過剰な改造をするのも無意味だと思う。
極端に改造を煽る雑誌やヒョーロン家の話なんか二の次にして、自分が今どのレベルに立っていて何が必要なのかをじっくり考える事が重要だと思うのだ。
運転が上達したいなら、パーツ代なんかよりガソリン代とタイヤ代などの走行費用に充てた方がよっぽど効果的なのは昔から変わらないんだからね。
さぁ、我々ヘタクソさんは前進あるのみ。走って考え走って考えるの繰り返しだ。その中でどうしても必要な部品や調整だけしよう。
おしまい。