お待たせしました。
前回のブログで、自分の車高調の現状がどこまでで限界を迎えるか。
という計測方法は判ったと思う。
ザンネンながら最大許容荷重が、1.5G以下だった脚は要改善である。
きっと「攻めなければ平気。だとか、有名ブランドのヤツだからコレが普通」とか思っている人は多いんじゃないかと思うのだが、
クルマは物理で走っているのでそんな状態のクルマは論外なのだ。
まともな脚なら、不満を屁理屈で誤魔化す必要はない。快適で、思い通り動く。
ブランドや構造なんか全く気にならなくなる。
具体的に例をまた挙げよう。馴れ親しんだロードスターの車検証を引っ張り出してみる。
クルマはNA8ロードスター。レバー比はフロント1.4 リヤ1.33だ。
車両重量は990kg 前々軸重が520kg リヤが470kg
バランスが良いと言われるロードスターだが、空車状態では前が重いと言うことも判る。
2名乗車でようやく前後重量配分50:50
メーカーが書いていた事は本当だ。
つまり、1名乗車時では若干前が重くケツが軽いのだ。
だからロードスターは1名乗車で攻めると限界域でケツが流れやすいのだ。
走り易くする為にはケツの荷重抜けを減らせるように対策しなくてはならない。
話題が逸れた。
では計算してみる。
「フロント」
前々軸重520kg 1輪辺り260kg
レバー比計算260kg×1.4=364kgf
「リヤ」
後々軸重470kg 1輪辺り235kg
レバー比計算235kg×1.33=313kgf
コレを、
とあるショップオリジナル車高調に当てはめてみよう。
全長調整式、ピストン径46ミリ単筒式、減衰15段調整、突き上げ感を緩和する純正アッパーマウント仕様、
街乗りでの快適性を考慮した8kg/mm 6kg/mmスプリング。
もうこれしかないんじゃないかって位のハイスペック車高調。そして求めやすい価格設定。
スゲーね、カンペキじゃん。
この脚は過去に採寸して、フロントのロッド長が92ミリ。リヤが55ミリだと確認した。
バンプラバーを組み込んで、残りのストロークはフロント52ミリ。リヤが40ミリだった。
車重から1Gでのダンパーの縮み量を計算してみる。
フロント 364kgf÷スプリングレート8kg/mm=45.5mm
リヤ 313kgf÷スプリングレート6kg/mm=52.2mm
ロッドストロークから限界許容荷重を求めてみる。
「フロント」
52mm-45.5mm=6.5mm
6.5mm×8kg/mm=52kgf
364+52=416kgf
416kgf÷364kgf=1.14G
「リヤ」
40mm-52.2mm= -12.2mm
あらま。
1Gで既にバンプラバーにめり込んでるじゃんんんん!
メーカーのマニュアルには「リヤには12ミリプリロードを掛けよ」との指示が。
プリロードを掛ければおおまかに言うとバンプタッチまでの距離が稼げる。
12.2mm-12mm= -0.2ミリ
ザンネンながら、プリを掛けてもバンプタッチである。人が乗ったらめり込んでいる。
要するにこの車高調は
乗り心地や安全性快適性なんかは無視した車高を下げるだけの脚だ。
コレを使っている方は多いだろうが、これが事実。気になるなら実測してみるといい。
気は進まないが、この脚をどうにか最低限度の限界点1.5Gにする方法を考えてみる。
つまりは、車重とロッドストロークから必要最低限のスプリングレートを導き出すのだ。
「フロント」
364kgf×1.5=546kgf
546kgf÷52mm=10.5kg/mm
「リヤ」
313kgf×1.5=469.5kgf
469.5kgf÷40mm=11.7kg/mm
フロント11kg/mm リヤ12kg/mmが最低必要なスプリングレートだと判った。
ただし、ロードスターの場合はフロントのピッチングが無駄に大きい車両設計なので、このままでは乗りにくい。
前後レートバランスは2kg/mm差で前を強くするのが定番なので、推奨レートは
フロント 14kg/mm リヤ12kg/mm
だと判った。
比較的軽量なクルマで、ココまでのレートだと乗り心地は結構ハードなモノとなるが、元々ストロークが無いのでこうなってしまう。
いっそ、吊るしのままバンプラバーに任せてそぉっと走る方が諦め付いて良いかもしれないなと思う。
近年、この脚レートアップ版が出たのだが、その設定でも街乗りで不満が出てくるのは、この設定を見れば明らか。
やはりコイツには手を出さない方が良いと思う。
ではコレを他のメーカーの脚に当てはめてみる。
ロッド長 フロント94ミリ リヤ88ミリの脚だ。それをバンプラバー厚さ20ミリにカットしてある。
ストロークはフロント74ミリ リヤ68ミリ。
スプリングレートはフロント10kg/mm リヤ8kg/mmだ。
また計算してみる。
「フロント」
74mm×10kg/mm=740kgf
740kgf÷364kgf=2.03G
「リヤ」
68mm×8kg/mm=544kgf
544kgf÷313kgf=1.73G
この脚は、先ほどのダンパーよりも装着レートが低いのに、遥かにそれを凌駕した最大許容荷重を持つ。
この位の最大許容荷重になれば、ハイグリップタイヤ履いてサーキットなどで踏んでもそうそう音を上げない。
乗り心地快適かつ、限界の高い脚を目指すなら、ロッドストロークを注視するのは当然の話なのだ。
車高調の良さは、「汎用のバネを使って簡単に目的の性能に近づける事が可能」だと言うこと。
ロッドストロークとスプリングレートには密接な関係がある
これを知れば、車高調のカスタマイズがより楽しいものになるのだ。
次回は、正しいスプリング自由長の選定について書こうと思う。
まだまだ知らなきゃいけない事が沢山あるのだ。
つづく
Posted at 2013/07/30 17:27:36 | |
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