トマ・ピケティさんの「21世紀の資本」と関連書籍が店頭に並ぶ書店=東京・日本橋の丸善【拡大】
資本主義社会における格差の拡大を論じたフランスの経済学者、トマ・ピケティさん(43)の著書「21世紀の資本」の邦訳が快進撃を続けている。本文だけで600ページ超、税込み5940円という硬派で高価な専門書だが、昨年末の発売から1カ月余りで7度増刷、発行部数約13万部と、この手の本としては異例のヒット。本の内容をかみ砕いた解説書も次々増刷され、書店はピケティブームに沸いている。
1月中旬、東京都中央区の丸善日本橋店。入り口近くの目立つ棚に「21世紀の資本」や関連書籍が山積みになっている。仕事の合間に立ち寄ったという会社役員の小出浩平さん(50)は「世の中の格差は広がる一方。テロも頻繁に起こる不透明な時代をどう捉えたらいいのかヒントを得たい」と購入した。週に100冊超売れることもあるという同店。「ここまでとは思っていなかった」と書店員が声を弾ませた。
邦訳を刊行したみすず書房の営業担当者は「最初はオフィス街の書店が目立っていたが、専門書をあまり置かないような地方の書店からも問い合わせが増えている」と想定を超える反応に驚きを隠さない。
出版取次大手・日販の販売データからもブームの一端が分かる。「発売初日の売り上げがすごかった。『人より早く手にしたい』と思った人が多く、人気漫画の最新刊や作家、村上春樹さんの新作のような動き」(マーケティング本部)という。
日販によると、「21世紀の資本」を買った人は経済学者、水野和夫さんの「資本主義の終焉と歴史の危機」や藻谷浩介さんらによる共著「里山資本主義」など時事問題を扱う話題書も手にしている。50、60代の男性が中心だが、20、30代も多く、大著に挑もうとする読者の裾野は広がっている。