有馬温泉:「怖い」「不気味」…路地裏にリアルな顔の看板
毎日新聞 2015年01月24日 10時52分(最終更新 01月24日 11時15分)
有馬温泉(神戸市北区)の路地裏にリアルな顔を描いた人型看板が点在し、「怖い」「不気味」と話題を呼んでいる。温泉街で働く人たちの顔写真に陰影や濃淡をつけて加工して木板に転写した芸術作品で、「怖いもの見たさ」を逆手に取り、400年以上前のメインストリートに観光客らを誘導しようという狙いだ。設置した有馬温泉観光協会は「温泉街の歴史を楽しみながら知ってほしい」とPRしている。
京都市のアーティスト、小川しゅん一さん(39)の作品「飛び出し坊やたち」(高さ各約1メートル)。飛び出し注意を促す子供の看板がモチーフで、電柱脇や側溝などに9体が立っている。
設置場所は土産店や飲食店などが並ぶ「湯本坂」の裏にある細い路地で、御所泉源と妬(うわなり)泉源を結ぶ約150メートル。温泉街で最古の道の一つだ。慶長伏見地震(1596年)後の大規模な河川付け替え工事で湯本坂が完成すると廃れたが、足元では湯気が上がり風情を残す。
同協会が2013年、路地を会場に作品を路上展示するイベントを開催。これが評判になり、そのまま常設することにした。路地を散策しながら、同じポーズで一緒に記念撮影する観光客もいるという。モデルになった人と温泉街で出会う楽しみもある。
「一番怖い」と人気なのは、眼鏡姿でほほ笑むおかっぱの女の子。モデルになった有馬玩具博物館長、福本麻子さん(34)は「自分の顔と思えなかった。でも、大人も子供も一緒に『怖い』とはしゃぐ姿を見るとうれしい」と笑う。
小川さんは「嫌がる人もいるかと思ったが、苦情がないのが救い」。企画したメンバーの旅館「御所坊」社長、金井啓修さん(59)は「道案内人の『坊や』たちと一緒に、有馬温泉の歴史の裏側も知ってほしい」と話している。【宮嶋梓帆】