2015年1月18日(日)

なぜ高倉健は「映画は時代を先取りすべき」と言ったか

高倉健が愛した映画・音楽・絵画(5)

PRESIDENT Online スペシャル /PRESIDENT BOOKS

著者
野地 秩嘉 のじ・つねよし
ノンフィクション作家

野地 秩嘉

1957年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。美術プロデューサーを経て作家へ。『キャンティ物語』(幻冬舎文庫)など著書多数。監修・構成した『成功はゴミ箱の中に』(プレジデント社)が10万部のベストセラーになる。

執筆記事一覧

ノンフィクション作家 野地秩嘉=文 山川雅生=撮影
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なぜモーガン・フリーマンに注目したか

彼の言うように、このふたつの映画は近未来を予知するものだった。

『ディープ・インパクト』では名優モーガン・フリーマンが大統領を演じている。

当時はまだ「黒人が大統領なんて」と思って見ていたけれど、その後、バラク・オバマが大統領に就任した。映画の後を現実がなぞったとも言える。

前期ふたつの映画に触れたとき、高倉健は「ドリームワークスって名前がいいね」と言っていた。スピルバーグの映画について語っていたが、話の様子では、『激突』『ジョーズ』といったアイデアが冴える映画よりも『プライベート・ライアン』のトム・ハンクスの演技、演技を引き出した監督としてのスピルバーグの力量に注目していたように思う。

『ピースメーカー』は核爆発を防ぐために奔走するジョージ・クルーニーとニコール・キッドマン主演のアクション映画である。ジョージ・クルーニーの代表作は『オーシャンズ』のように思われているけれど、この映画の彼の方がはるかに躍動している。

『ディープ・インパクト』で高倉健が注目していたのはモーガン・フリーマンだろう。『ドライビング・Missデイジー』『ショーシャンクの空に』『ミリオンダラーベイビー』と助演でありながら、主演を食うというよりも、主演を受け止める「横綱相撲のような演技」(高倉健の表現)をした。

『ディープ・インパクト』で彼がアメリカ大統領として演説するシーンは見せ場だろう。

また、ふたつを監督した女性監督ミミ・レダーはこのふたつこそ才気を見せたが、その後、作品に恵まれていない。この後、2000年に『ペイフォワード 可能の王国』を監督しているが、題名の意味がよくわからないこともあってヒットにはならなかった。彼女の才能については、この先の作品を待つとしか言いようがない。

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