コラム:「四重苦」のユーロ安は必然か=植野大作氏
植野大作 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト
[東京 23日] - ユーロドル相場の下落に歯止めがかからない。欧州中央銀行(ECB)が量的緩和実施を決めた22日の海外市場では一時1ユーロ=1.1316ドルと、2003年9月19日以来、11年4カ月ぶりの水準まで売り込まれる場面があった。
昨年5月8日の高値1.3993ドルからわずか8カ月間で2600ポイント以上、騰落率換算では19.1%もの大幅安だ。
その後はさすがに買い戻され、23日9時現在の東京市場では1ユーロ=1.135ドル前後で取引されているが、昨年初夏から断続的に猛威を振るうユーロ安ショックの余韻を引きずり、上値の重たい雰囲気が蔓延している。
ユーロ相場が順調に上昇し続けていた昨年春頃までは、「経常収支が黒字でディスインフレ(物価上昇率の鈍化)が進むユーロはかつての日本円のような通貨高圧力に晒されやすい」との見方も強かった。実際、その後もユーロ圏は安定的な経常収支の黒字を計上し続けているほか、消費者物価上昇率はどんどん下がって12月には前年比マイナス0.2%とデフレに陥っている。かつての日本との類似性に注目すれば、現在のユーロは構造的に値上がりしやすい状態にあるはずだ。
にもかかわらず、ユーロが大幅に下落しているのはなぜだろうか。構造的なユーロ高圧力を凌駕するのに十分なユーロ安圧力が発生していないと説明がつかない。
一番大きな環境の違いは、相方である米国の金融政策だろう。日本で1ドル=75円台までの超円高が進行していた当時の米国は量的緩和拡充の真っただ中でドル安圧力を発生させていた。一方、現在は昨年10月いっぱいで米連邦準備制度が量的緩和を打ち切った上、金利政策の正常化期待が発生しているのでドル高圧力が発生している。
ただ、それだけでユーロドル相場の下落を片付けてしまうのは、ちょっと物足りない。ドル高現象の一環としてユーロ安圧力が働いているのは間違いないが、ユーロ側にもたぶん何か大きな変化があったはずだ。以下の4つが考えられる。 続く...