2015年1月18日(日)

なぜ高倉健は「映画は時代を先取りすべき」と言ったか

高倉健が愛した映画・音楽・絵画(5)

PRESIDENT Online スペシャル /PRESIDENT BOOKS

著者
野地 秩嘉 のじ・つねよし
ノンフィクション作家

野地 秩嘉

1957年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。美術プロデューサーを経て作家へ。『キャンティ物語』(幻冬舎文庫)など著書多数。監修・構成した『成功はゴミ箱の中に』(プレジデント社)が10万部のベストセラーになる。

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ノンフィクション作家 野地秩嘉=文 山川雅生=撮影
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お気に入りは品川プリンスシネマ

高倉健はロケに出ていない時、東京にいる時は必ず品川駅前のホテルに通っていた。ホテル内の「バーバーショップ・サトー」には彼専用の個室があり、髪の毛を切ったり、ひげを剃ったり、あるいは部屋に置いてあるパソコンでメールを送ったりしていたのである。バーバーショップではあるけれど、彼の執務室のようなものだった。

仕事のうちあわせもその部屋で行っていたが、時間ができると、近所にある品川プリンスシネマへ行って、映画を見ていた。

以下の話は『高倉健インタヴューズ』(プレジデント社)からだ。

「いまは時間さえあれば映画を見ています。

素晴らしいな、と感心したのはスピルバーグが作ったドリームワークスという映画集団の作品。

特に、ミミ・レダーという女性監督の作品を見たことある?

『ピースメーカー』(1997年)そして『ディープ・インパクト』(1998年)。どちらも時代を先取りした映画なんだよ。近未来を予知したホン(脚本)なんだ。

『ディープ・インパクト』のなかのアメリカ大統領役は当たり前のように黒人俳優がやっているし、ヒーロー役も必ず男女が平等に演じている。

昔はアクション映画と言えば、男性がヒーローを演じるものと決まっていた。

ところがレダー監督の映画では女優さんが当たり前のようにドンパチやっている。環境問題も出てくるし、煙草を吸う主役なんてもう一人もいなくなっている。

でも、考えてみると、映画というのは時代を先取りしているべきものなんだ。今の流行りを追っかけるものじゃないんだよ」

このインタビューをしたのは1999年。『鉄道員 ぽっぽや』が公開された年である。

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