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 過激派組織「イスラム国」が公開したとみられる動画は、NHKの国際ニュース映像で始まる。

 キャスターが英語で「中東地域への数百万ドルの援助と円借款を発表し、その地域での過激主義の広がりに懸念を示した」と述べ、安倍首相が中東地域への支援を表明したとの内容だ。

 映像は、首相とエジプトのシーシ大統領との会談映像を挟んだ後、首相の演説の場面になる。「テロと大量破壊兵器がその地域に広がれば、国際社会は多大な打撃を受けるだろう」との発言が英語で流れる。

 その後、銃声2発が響き、「日本の首相と国民へ」という英語とアラビア語の文字が出てくる。画面は砂漠に切り替わり、目以外の部分を黒い衣装で覆って立っている男と、その前でオレンジの服を着て中腰で後ろ手で座らされている男性2人が出てくる。2人の男性には「KENJI GOTO JOGO」と「HARUNA YUKAWA」の字幕がつき、左が後藤健二さん、右が湯川遥菜さんだと示している。

 黒装束の男は「日本の首相はイスラム国から8500キロ以上離れた場所にいるかもしれないが、あなたは自ら進んで(対「イスラム国」の)十字軍への参加を志願した。我々の女性と子供たちを殺し、イスラム教徒の家々を破壊するために、1億ドルを得意げに提供した」と批判。「したがって、この日本人市民の命の値段は1億ドルとなる」と言い、左手に持ったナイフを後藤さんとみられる男性に近づけた。

 次に、湯川さんとみられる男性の方もナイフで指し、「イスラム国の伸長を食い止めようと、イスラム国と戦う兵士の訓練のために、あなたはさらに別の1億ドルを提供した。したがって、このもう1人の日本人男性の命も1億ドルだ」と続けた。

 最後に「日本国民へ」と話し始め、「イスラム国と戦うために2億ドルを払うというあなたたちの政府のバカげた決定のために、72時間以内に日本政府に対して、2億ドルをイスラム国に支払うという賢明な判断を迫らなければならない。あなたたちの市民の命を救うために。さもなければ、このナイフはあなた方にとっての悪夢となるだろう」と脅迫した。

 後藤さんとみられる男性は終始、口を真一文字にして目を開き、まっすぐ前を見つめていた。湯川さんとみられる男性も、前を見て姿勢をほとんど変えなかった。