【初場所】白鵬、大鵬超え史上最強V33!取り直しで稀勢押し倒す
◆大相撲初場所13日目 ○白鵬(押し倒し)稀勢の里●(23日・両国国技館)
東横綱・白鵬(29)=宮城野=が、“昭和の大横綱”大鵬を抜く史上単独最多33回目の優勝を果たした。取り直しの末に東大関・稀勢の里(28)=田子ノ浦=を押し倒して13連勝とし、2度目の5場所連続優勝も達成。5連覇以上を複数回達成したのは、6連覇を2度達成した大鵬以来2人目の快挙となった。生前に角界の父として慕った大鵬の納谷幸喜さん(享年72)の大記録をついに超えた。
ついに白鵬が伝説の領域に達した。最も燃える稀勢の里との一番を制して歴史的記録を達成すると、土俵上でかみしめるようにうなずいた。大入りの国技館が大歓声に包まれると、懸賞金の束を拝むように受け取った。「取り直しがあっての33回目の優勝だから、楽ではなかった」。この日は、次女・美羽紗(みうしゃ)ちゃんの4歳の誕生日。まな娘に最高のプレゼントも贈った。
不滅とされてきた大鵬のV32を、いとも簡単に塗り替えた。1971年初場所で昭和の大横綱が達成してから44年。白鵬が「超えることが恩返し」と公言してきた瞬間が訪れた。だが、まだ場所中とあって「まだ早い。あと2番ある。それについては控えたいと思う」と、感想は胸の中にしまった。
長い大相撲史の頂点に立った一番も、苦労してつかんだ。最初の一番は物言い。館内に「もう一丁!」コールがこだまする中、判定は同体取り直しになった。右太ももを俵で強打して痛めたが、取り直しの一番は相手の逆襲に一瞬横向きとなった体勢を立て直し、もろはずになった。全身の力を込めて天敵を土俵下まで押し倒した。
原動力は体の強さだった。白鵬は大関時代の07年初場所から休場なし。横綱連続出場は史上最多の673回(継続中)。同じ宮城野部屋所属だった元幕内・龍皇でモンゴル出身の先輩、エルヘムーオチル・サンチルボルドさん(31)は「新弟子時代から準備運動をしっかりしていた。一緒に海外に行っても(ホテルの)部屋などで四股を踏んでいます」と証言する。
若い頃から帰宅が遅くても十分に睡眠。きちんと手作りされているものを摂取するよう心がけた。06年九州場所前に準備運動不足のまま稽古して骨折。初の全休となった。この経験で一層、準備運動の大切さを痛感。今でも四股などの基礎運動に約1時間かける。努力を地道に続けることで、前人未到の記録につなげた。
まだ余力は十分にある。北の湖理事長は「これで終わる横綱じゃない。40回を目標に置けばいいし、このままいけば可能性もある」と賛辞を贈った。残り2日間も勝てば、自らの最多記録を更新する11回目の全勝Vだ。理事長は「全勝してほしい。そうでなければ(V33の価値が)軽くなってしまう」と檄を飛ばした。「今日のような気持ちで気を引き締めて、精いっぱいやりたい」。大横綱はレジェンドとなった。(三須 慶太)