イスラム国拘束:最後のメール「中東に」後藤さんから母へ
毎日新聞 2015年01月23日 23時21分(最終更新 01月23日 23時40分)
日本人2人を拘束したイスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループが指定した「72時間」の身代金支払期限。期限を過ぎても、湯川遥菜さん(42)と後藤健二さん(47)の安否は明らかになっていない。「健二は敵ではありません。命を救って」「とにかく無事で」−−。親族や2人を知る関係者は解放を願い続けている。
後藤さんの母、石堂順子さん(78)は23日午後、東京都内の自宅でテレビのニュースなどを見ながら、事態の推移を見守った。
同日午前、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で記者会見し、「健二はイスラム国の敵ではありません。解放してください」と呼びかけた石堂さん。さらに、イスラム国に「(湯川さんの)釈放を願って単身で渡った子です。恨みつらみはやめてほしい」と訴えた。殺害予告の動画がインターネット上で公開された20日以降は「この3日間、ただただ、悲しくて泣いていました」。
イスラム国とみられるグループが突きつけた、身代金支払期限は72時間。日本政府は23日午後2時50分とみていた。その時刻を過ぎても、動向は伝わってこない。「今はとにかく政府を信じるしかない」。事件を伝えるテレビ番組を、祈るような表情で見つめた。
後藤さんは仙台市で生まれ、東京で育った。兄と姉との3人きょうだいの末っ子。「友達思いの優しい子でした」と振り返る。学生時代にはアメリカンフットボールに熱中する活発な青年に成長した。
2012年冬。後藤さんが、石堂さんの誕生祝いに近くの飲食店で食事をごちそうしてくれた。石堂さんが「世の中に役立つ人間になって。健康に気をつけて」と語りかけると、照れくさそうにうなずいたという。
最近は顔を合わせる機会が少なかったが、後藤さんは海外から時折、メールや電話で連絡してきた。昨年5月に、後藤さんから「仕事で中東に行ってくる」というメールを受けた。「気をつけて」と返信したが、その後は連絡を取れていない。
紛争地域の取材で子供の被害に心を痛め、その惨状を世に訴え続けた後藤さん。自身にも、昨年10月1日に生まれたばかりの子がいる。石堂さんは「早く、赤ちゃんに父親の顔を見せてほしい」と、言葉を詰まらせた。【大平明日香】
◇「いても立ってもいられない」仲間たち
後藤さんを知るジャーナリスト仲間も、焦燥感を募らせる。