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【大相撲】

白鵬V33 大鵬超え史上最多

2015年1月24日 紙面から

白鵬(右)が押し倒しで稀勢の里を下す。歴代最多のV33=両国国技館で(岩本旭人撮影)

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◇初場所<13日目>

(23日・両国国技館)

 大鵬を超えた! 横綱白鵬(29)=宮城野=が単独史上最多となる33度目の優勝を決めた。取り直しの末に稀勢の里を押し倒しで破り、初日から13連勝。一昨年1月に死去した「昭和の大横綱」大鵬が1971年初場所で達した32度に並んでいたが、5場所連続制覇で新記録をつくった。2007年名古屋場所で新横綱となってからは一日も休場せずに土俵を務め、野球賭博騒動や八百長問題で揺れた角界を第一人者としてけん引。大関だった06年夏場所の初優勝から52場所かけて大相撲の歴史に刻まれる前人未到の偉業を達成した。

 簡単に超えさせてはくれないのか。勝てば大鵬を超え単独1位となる33回目の優勝が決まる稀勢の里戦。立ち合いから一気に前へ。だが、稀勢の里の小手投げにもつれながら崩れ落ちた。軍配は白鵬に上がったが、取り直し。この究極の場面で白鵬は覚悟を決めた。

 前に出る立ち合いではなく、受けて立つ「後の先」。最初の取組で実は右太ももの外側を強打していた。「土俵の角で打った」と痛みを抱える中で、「後の先というのは負けを覚悟しないといけない。侍の精神でいけば負けるということは死ぬこと」と言ってきていた立ち合いを見せる。

 フワリと立って稀勢の里を受け、横につかれそうになりながら、最後は前を向き直して押し倒した。大一番でこの冷静な判断。次女・美羽紗ちゃん(4)の誕生日でもあったこの日。「13日目というのも久々だったと思うし、取り直しあっての33回。楽ではなかった気がする。これから? まだ早いって。すぐ何か聞こうとする。とにかくまだ終わってないんで」と大記録を打ち立てたとは思えない穏やかな表情で振り返った。

 元横綱大鵬の納谷幸喜さんが亡くなったのは2年前の1月19日。大嶽部屋で横たわる大鵬さんの膝に、白鵬は頭を近づけ記録を抜くことを約束した。「超えたときが本当の恩返し」という大鵬の記録を苦しみながら乗り越えた。

 物言いの協議が続いているとき、場内は「もう一回!」コールに包まれていた。そのときに思い返していたのは、かつて知人から言われた言葉だったかもしれない。

 双葉山が得意としたとされる「後の先」。「双葉山関に似てるねって言われて、誰それって思ってた。20歳くらいのときかな。どんな人かと映像を見たら、しびれましたね」。そこから心酔した双葉山。その双葉山の表情は、「死を覚悟した表情。死刑が決まった人の死ぬ直前の顔だと言われたことがある」と。落ち着きのなかった稀勢の里と比べ、取り直しに挑む白鵬は腹が決まった顔をしていた。

 さあ、前人未到の地に到達した白鵬。これから無人の荒野を行くひとり旅が始まる。どんな新境地を見いだすのか。かつて、白鵬は「横綱はいつ引退してもいい。勝ち負けの世界ではなく、相撲道で人間性を磨いていきたい」と話していた。大鵬と双葉山。偉大な2人の先人から学んだ白鵬もまた、伝説の横綱として歩み始める。 (岸本隆)

 

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