日本を14年に訪れた外国人が1340万人に達した。初めて1千万人を超えた前年より3割増だ。円安を追い風に観光客の伸びが著しく、政府が掲げる「20年に2千万人」という目標の達成が視野に入ってきた。

 経済効果は大きい。外国人が滞在中に落としたお金は昨年1年間で推計約2兆円。「日本人1人の平均的な年間消費を、外国人10人足らずの来日でまかなえる」という試算もあり、「外国人抜きには地域も企業も成り立たない」との声が漏れる。

 ビザの緩和や消費を促す税制の見直し、無料で使える無線通信網の充実と手軽に泊まれる宿泊施設の確保……。さまざまな取り組みが進む。安全・安心を守ることは大前提だが、官民でさらに知恵を絞ってほしい。

 訪問先を大都市圏や有名観光地からどう広げていくかが大きな課題だ。外国人の団体旅行の定番は、富士山をはさんで東京―大阪間を巡る「ゴールデンルート」だが、旅行業者と自治体が新たな広域周遊コースを売り込む例も見られ始めた。

 ただ、既存の観光地の連携強化にとどまってはもったいないし、連携も魅力ある地域があってこそだ。「うちには観光業界が注目してくれる名所旧跡もない」と諦めず、それぞれの地域が地元を見つめ直してはどうか。すぐに外国人を呼び込むことは難しくても、それが地域活性化への出発点になる。

 個人の観光客に狙いを定めれば、インターネットで直接情報を発信できる。外国人の買い物で消費税の免税対象が食料品や日用品にも広がったため、地方の特産品を売り込みやすくなった。クルーズ船や格安航空会社(LCC)には、地方を訪れる路線が少なくない。

 岐阜・高山や埼玉・川越などでの街ぶら、各地の温泉街、和食はもちろん雪景色や花見など、伝統的な日本の風情への関心だけではない。私たちが見慣れている日常の風景でも、外国人にも人気のアニメゆかりの地や、動画投稿サイトで話題になった場所などに、外国からわざわざ足を運んでいるという。ひとたび注目を集めると、ソーシャルネットワークサービスを通じた「口コミ」で一気に広がっていく。

 訪日観光を引っ張るアジアの人たちも、豊かになるにつれてお決まりの団体旅行では飽きたらなくなってきたようだ。地道に個人に働きかけることが、国同士の関係とは別に、日本のファンを増やすだろう。それが訪日観光の基盤を厚くし、外交の安定にもつながるはずだ。