東電:汚染水処理5月に延期 「全量、年度内」を断念
毎日新聞 2015年01月23日 11時20分(最終更新 01月23日 16時04分)
東京電力は23日、福島第1原発に保管している高濃度汚染水について、目標としていた今年度内の全量処理を断念し、5月中に延期することを決めた。広瀬直己社長が資源エネルギー庁の上田隆之長官と面会し、正式に伝えた。多核種除去設備「ALPS(アルプス)」など汚染水から放射性物質を取り除く設備が計画通り稼働できないためで、今後の廃炉作業の工程に影響が出る可能性がある。
同原発では、地下水が建屋に流入して溶け落ちた核燃料に触れ、汚染水が1日約300〜400トンずつ増えている。敷地内のタンクに保管している汚染水は約30万トン。東電は昨年、高性能アルプスなどを追加導入し、処理能力を1日につき2000トン以上に増強したが、放射性物質を取り除くフィルターの目詰まりなどトラブルが相次いだ。今年度内の全量処理は事実上困難になっていた。
今年度内の全量処理の目標は、2013年9月の安倍晋三首相の「同原発の状況はコントロールされている」との発言を受けて東電が政府に示した。アルプスではトリチウム(三重水素)を取り除くことはできないため、残る62種類の放射性物質を除去することを目指している。
高濃度汚染水は強い放射線を出すため、敷地内に保管されたままでは作業員の被ばく量が増えて廃炉作業を妨げる。アルプスでの処理以外にも、東電は汚染水を減らす対策として、流入前の地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」を昨年5月に始めた。 東電は、さらなる汚染水対策として、「サブドレン」と呼ばれる建屋近くの井戸からくみ上げた水を浄化した後に海に放出する方針。また、建屋への地下水の流入を食い止める「凍土遮水壁」を3月に本格着工し、15年度の完成を目指す。しかし、サブドレンからの海洋放出は地元の反発で実施のめどが立っていない。世界初の工事となる遮水壁も予定通り建設できるかは未知数だ。【斎藤有香】